【短編脚本】君にふさわしい場所
オンライン朝活に参加しています。4月から週1回「脚本トレーニング」を行うことになりました。朝活の活動時間内(約40分)で、3ページほどの短い脚本を書く、というシンプルなトレーニングです。脚本内で使用するワードを3つ、くじで決めます。やってみる前は難しそうだなと思いましたが、優しめのルール(時間内に終わらなくてもOK)を設定していただいたので(笑)楽しくチャレンジしています。書けた!という達成感を味わうには最高の方法だなと思う今日この頃です。
この時間を活用して、短めの脚本を書きましたので、よろしければお読みください。
【Special thanks】
ササキタツオさん(note, X)
【登場人物】
藤堂 渡(46)…会社員。藤堂家の夫
藤堂 ゆかり(43)…渡の妻
藤堂 進(15)…藤堂家の一人息子。受験期に病気で亡くなった
重盛 孝人(72)…海の近くに住む老人
【本編】
目安時間:2〜3分
◯人気のいない海岸(夕)
黒い服を着た藤堂渡(46)と妻の藤堂ゆかり(43)が、砂浜に座り夕陽を見ている。二人の前には問題集やノートが積まれている。ゆかり、涙ぐみながら
ゆかり「今日こそ海に流す予定だったのに」
渡「さっき怖い顔したおっちゃんがジロジロ見てただろ」
ゆかり「そうやってもう何度も持ち帰ってるじゃない」
渡、ため息をつき一番上の問題集を手に取る。
表紙をめくると「3-A 藤堂進」と書かれている。
渡「いっそのこと燃やして灰にしちまえばいいじゃないか。大した量にはならないだろうし、ほら、混ぜれば分からなくなるだろ」
渡、砂を触る。
ゆかり、あきれた表情で渡を見る。
ゆかり「あの子の夢は深海で仕事をすることだったのよ。砂浜と深海じゃ、月と火星ぐらい違うのよ!」
ゆかり、砂を掴んで渡の顔にかける。
渡「ぐぁっ!」
渡、顔の砂をはらってから、意を決し問題集を持って立ち上がる。
渡「やってみよう」
波際まで進み、問題集を手放す。
問題集は波に揺れながら流れていく。
様子を見ていたゆかり、立ち上がり息を飲む。
海辺でゴミ拾いをしていた重盛孝人(72)が駆け寄ってくる。
孝人「ちょっとちょっとあんた、今なんか海に捨てただろ」
渡「いや、捨ててません、間違えて流しちゃっただけです」
渡、波に流される問題集を慌てて拾おうとする。
孝人「いや、捨てたぞ!ポイ捨てはな、今は罰金取るんだぞ!」
渡「捨ててませんってば!ほら、今ちゃんと拾いました!」
渡、海水で濡れた問題集を孝人に見せる。
遠くで見ていたゆかり、ため息をつく。
××××
砂浜に座るゆかり。
その隣には靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾を巻き上げた渡。
渡「今の日本で弔いってのはなかなか難しいもんだな」
ゆかり「あなたが鈍臭いからよ」
渡「いつか見つかるさ。あいつにふさわしい場所が」
ゆかり、ひざに顔をうずめてすすり泣く。
(終わり)
