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転落小説のススメ

『滅茶苦茶』
読み終えたあと、しばらくページを閉じられませんでした。
タイトル通り、登場人物たちの人生はどんどん「滅茶苦茶」になっていきます。その転落の過程があまりにもリアルで、読み進めるほど背筋が寒くなるような感覚を覚えました。


滅茶苦茶
染井為人 (著)

いい気味だ……

予測不能の展開、予想外の読後感。絶叫系転落ミステリー!
映画化決定の話題作『悪い夏』『正体』を超える切迫感!
終わりの見えない転落人生。こんな目にはあいたくない……。

不穏な恋愛にのめり込む、30代キャリアウーマン。不良に堕ちた元クラスメイトに再会した、エリート進学校の高校生。ラブホテルの経営不振に喘ぐ、3人の子持ちの中年男性。

刹那な現代をサバイブしながらも、孤独を胸底に抱える者たちの欲望に駆られた出会いは、彼らをまっさかさまに谷底に突き落とす。

「いい気味」か「かわいそう」か?  彼ら自身が招いた命からがらの転落劇。滅茶苦茶なんだけど最悪じゃない!
―吉田大助(書評家)

滅茶苦茶
染井為人 (著)
Amazonより

◆感想◆

本作に登場するのは、30代のキャリアウーマン、不良化した同級生と再会する高校生、任命や仕事の重圧に苦しむ中年男性といった面々。
背景も年齢もバラバラですが、彼らに共通するのは「ちょっとしたきっかけ」で人生が崩れていくことです。
普段の生活では直接関わらなそうな人々なのに、不思議と身近に感じられる。
だからこそ、彼らの転落が他人事に思えなくなります。

小説の中でよく見かける「突発的な事故」や「非日常の悲劇」とは違って、この物語はもっと地続きです。
ほんの小さな判断のズレや、弱さを隠したい気持ち、欲望に流される瞬間。
それらが積み重なると、人はあっけなく破滅へと落ちていく。
その必然性が丁寧に描かれているので、読みながら胸がざわつき、まるで自分もその坂道に足を踏み入れてしまったような不安に駆られました。

読んでいて「ざまあみろ」と思える瞬間も確かにあります。
けれど同時に「もし自分が同じ立場だったら?」と重ねてしまい、同情や恐怖が入り混じる。
突き放すこともできなければ、完全に寄り添うこともできない。
この揺さぶられる感情こそが『滅茶苦茶』の最大の魅力ではないでしょうか。

社会派なテーマを含みつつ、物語は予測不能な展開で一気に読ませてくれます。
気づけばラストまで息を詰めるようにしてページをめくっていました。
もし映画化されたら、間違いなく観客を緊張させっぱなしにするだろう――そんな切迫感を持った一冊でした。

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