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虚無・諦念ストーリー

この本を読んだとき、まるで
東京の街の隅々に漂う虚無感
が、ページから染み出してき
     たような気がした。
麻布競馬場さんの『この部屋
から東京タワーは永遠に見え
    ない』を読みました。


この部屋から東京タワーは永遠に見えない
麻布競馬場(著)

「みんな、高校卒業おめでと
            う。
最後に先生から話をします。
この街を捨てて東京に出て、
早稲田大学の教育学部からメ
ーカーに入って、僻地の工場
勤務でうつになって、かつて
唾を吐きかけたこの街に逃げ
るように戻ってきた先生の、
あまりに惨めな人生の話を―
―」(「3年4組のみんなへ」
)など、Twitterで大反響を呼
んだ虚無と諦念のショートス
       トーリー集。
話題の覆面作家、衝撃のデビ
         ュー作!

この部屋から東京タワーは永遠に見えない
麻布競馬場(著)
Amazonより


この小説は、ただの短編集で
          はない。
それは、東京という巨大な都
市が持つ冷たさや孤独感を鋭
 く切り取った文学的体験だ。

物語の一つ「3年4組のみん
なへ」では、先生が自らの惨
      めな人生を語る。
地方から東京に出て、夢を追
いかけた末に鬱病となり、故
郷に戻ってきた彼の話は、読
 者の胸に深い悲しみを刻む。
 東京という舞台が持つ残酷さ、
そしてそれに抗う人間の儚さ
 が痛々しいほどリアルだ。

また、「30まで独身だった
ら結婚しよ」では、過去の何
気ない約束が心に絡みつき続
   ける女性の視点を描く。
彼女が向かう流山おおたかの
森には、幸せそうな家庭を築
  いたかつての友人がいる。
しかし、その幸福は彼女自身
にとっては遠い幻影でしかな
い。この作品は、過去と現在
の交錯が生む切なさを巧みに
       表現している。

さらに、「カッパを見たこと
があるんです」では、カッパ
という非現実的な存在を通じ
て、自分自身への問いかけと
罪悪感を描く。東京で生きる
ためについた嘘や欺瞞が、川
面から覗くカッパの目によっ
        て暴かれる。
その静かな責めるような視線
は、読者にも問いかけるよう
            だ。

この短編集全体には、「Twitt
er文学」として140文字と
いう制約の中で磨き上げられ
た鋭い表現が散りばめられて
           いる。
固有名詞や具体的な地名を大
胆に使うことで生まれるリア
リティは、一種の詩的断片と
   して読む者を引き込む。
麻布競馬場さんは、この形式
を通じて現代日本社会に潜む
孤独や諦念を鮮烈に描き出し
          ている。

『この部屋から東京タワーは
永遠に見えない』は、不安定
で儚い現代人の心情を映し出
          す鏡だ。
この本を閉じたあとも、その
虚無感と切なさが心に居座り
続ける。読むこと自体がひと
つの体験であり、その体験か
  ら逃れることはできない。



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