苦しみや欲望の根っこ
『よどみ 銭天堂番外編』
よどみ――銭天堂の紅子とは正反対の闇を背負った商売敵。その知られざる過去が、怪童の案内で綴られていくこの一冊は、まさにダークファンタジーの真骨頂でした。
よどみ 銭天堂番外編
廣嶋玲子 (著)
銭天堂の店主、紅子の商売敵「よどみ」のスピンオフ作品。
案内役は怪童、よどみの知られざる来歴があきらかになる。
内容は3部構成で、よどみが「たたりめ堂」を開店する以前のエピソード、紅子との「駄菓子対決」時のエピソード、そして、天獄園にスカウトされてからのエピソード、全6話を収録。
廣嶋玲子 (著)
Amazonより
✻あらすじ✻
『よどみ 銭天堂番外編』は、銭天堂の店主・紅子の商売敵である「よどみ」を主人公にしたスピンオフ作品です。
物語は3部構成で、よどみの知られざる過去や成り立ち、そして銭天堂との駄菓子対決、さらに恐ろしい遊園地「天獄園」へスカウトされてからの動向が描かれています。
全6話収録。
からからカステラ
終戦直後の混沌とした時代、よどみは成りあがった男の屋敷に入り込み、その目的を秘めて動き始めます。棚ぼたもち
高度経済成長期を舞台に、お針子の女性に近づき、巧みに人の心の闇をついていきます。あやつり人形焼き
息子の人生をコントロールしようとする母親に目をつけ、策略を巡らせるエピソード。よどみの試行錯誤
よどみが客に振り回されて苦労しながらも、「引きさきイカ」という新しい駄菓子を誕生させる逸話。新しい店
天獄園に招かれ、新たに「たたりめ堂」を開店しようとするよどみの奮闘が描かれます。天獄園グランプリ
天獄園主催のコンテストに参加し、衣装係の少女と出会うことで物語はさらに深まります。
解説
このスピンオフは、銭天堂の正義的な紅子とは対照的によどみの“闇”に深く切り込んだ物語です。よどみは人の欲望や悪意に付け込み、悪意をエネルギーにして駄菓子を作る冷酷なキャラクターでありながら、その成り立ちや心の動きが丁寧に描写されています。戦後の混乱から現代にかけて、様々な時代背景を通じて人間の欲望、脆さ、闇の部分を浮かび上がらせることで、単なる悪役としての側面だけではない複雑なキャラクター像が立体的に描かれています。
この作品はダークファンタジーとしての色彩が強く、銭天堂シリーズの物語の深みを増す役割を持ちながら、読む人に人間の善と悪の境界や、心の深淵を考えさせる内容となっています。
◆感想◆
最初の部では、よどみが「たたりめ堂」を開店する以前の物語。
幼い頃から周囲に馴染めず、孤独や嫉妬、怒りに侵されていくよどみの心情が生々しく描かれていました。
ページをめくるたびに、彼女の心に深く沈んだ影に、自分自身の暗い部分がじっと見つめ返されているような居心地の悪さを覚えました。
続く紅子との駄菓子対決。
ここでよどみの“悪意”が研ぎ澄まされていく様子には、不気味な美しさすら感じました。
誰の中にもほんの少し潜んでいる“ねじれた願望”や、善意への反発心。
私はこの勝負の行方を、胸がざわつきながら息を呑んで見守りました。
そして最後は天獄園にスカウトされてから。
よどみが完全に闇へと足を踏み入れる展開。
その行動や選択に、私は「善」と「悪」の境界が曖昧になっていく感覚を味わい、ぞっとしながらもページをめくる手が止まりませんでした。
この本は、「人の闇がどこから生まれるのか」「光と影はどう分かれるのか」と問いかけてくる物語です。
よどみの苦しみや欲望の根っこが、この世界の不思議と恐怖に繋がっているのだと気付かされました。
読了後、私の心にも、ひと筋の暗い余韻が静かに残りました。
Kindle版

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自己紹介
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