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懐かしさは、時に今よりも鮮やかだ

『とんかつ屋のたまちゃん』安藤玉恵
――「懐かしさは、時に今よりも鮮やかだ。」


とんかつ屋のたまちゃん
安藤玉恵(著)

話題の映像作品や舞台で鮮烈な印象を残す俳優の安藤玉恵さんの実家は、元花街、東京・尾久のとんかつ屋「どん平」。阿部定事件が起きた尾久三業通りの待合茶屋は、「どん平」から20メートルくらいのところ。一家の大黒柱だった祖母、放蕩する祖父、数々の地元の伝説を持つ父、太宰治好きで、ファンキーで臥せがちな母、そんな母を一緒に看病した兄。まわりにはいつも商店街の人たちがいた――。若手芸人が小学校の通学路で稽古し、着物を着たお姉さんが歩いていた時代、昭和の最後のほうの話。
なつかしくて、おかしくて、バカバカしいのに、涙が出ちゃう。そんなノスタルジックな感情を呼び起こす名エッセイ。

とんかつ屋のたまちゃん
安藤玉恵(著)
Amazonより

書評を読むポイント

  • 舞台はレトロな東京・尾久の下町と商店街
    昭和の終わり、元花街にあるとんかつ屋というユニークな舞台設定が魅力。「場」の記憶と空気を味わう楽しさがあります。

  • 家族それぞれの個性の強さと温かさ
    一家の大黒柱だった祖母、豪快な祖父、伝説的なお父さん、太宰治好きの母、兄……と、どこか映画の登場人物のようで、でも本当にいそうな家族の姿が面白くも愛おしい。家族エピソードが多彩です。

  • 地元・尾久の人間模様と時代の匂い
    昭和の下町らしさや、芸人や着物姿の人たちが行き交う街の賑わい、温度感。ささやかな日常の中にあるドラマがたくさん描かれています。

  • 笑いと涙、そして懐かしさがたっぷり
    パンチの効いたユーモアと同時に、しんみりと心に残る瞬間も。面白く、ちょっぴり切なくなる。その絶妙なバランスはエッセイならでは。

名言一言

「昔の記憶って、いったん思い出すと、どうして止まらなくなるのだろう。」

感想

私は『とんかつ屋のたまちゃん』(安藤玉恵著)を読んで、心がじんわり温かくなりました。安藤玉恵さん自身の語り口でつづられる昭和の東京・尾久という下町の情景は、とてもリアルで懐かしい雰囲気に包まれています。商店街の人たち、花街の記憶、そして何よりクセの強い家族のエピソードが、まるで短編映画を見ているようでした。

それぞれのキャラクターが生き生きとしているだけでなく、「こんな人、近所にもいたかも…」と思える親しみやすさがあります。おかしくて笑えるのに、ふと涙がこぼれそうになる瞬間も多く、「記憶」のあたたかさと切なさにグッときました。

昭和ノスタルジーや下町の人情物語が好きな方には絶対おすすめできる一冊です。「どん平」に集う家族や人々のエネルギー、あの時代の風景を、私も追体験できました!

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