歌舞伎小説
吉田修一『国宝 上 青春篇』
を映画を観るまえの予習と
して、オーディブルで聴き
終えた。
長崎の老舗料亭「花丸」に
生まれた任侠一家の息子・
立花喜久雄が、歌舞伎の世
界へと飛び込んでいく物語
だ。
冒頭から任侠の血と伝統芸
能の世界が交錯し、ただの
歌舞伎小説ではない骨太な
人間ドラマに圧倒された。
国宝上青春篇
吉田 修一 (著)
1964年元旦、長崎は老舗
料亭「花丸」――侠客たちの
怒号と悲鳴が飛び交うなかで、
この国の宝となる役者は生ま
れた。男の名は、立花喜久雄。
任侠の一門に生まれながらも、
この世ならざる美貌は人々を
巻き込み、喜久雄の人生を思
わぬ域にまで連れ出していく。
舞台は長崎から大阪、そして
オリンピック後の東京へ。
日本の成長と歩を合わせるよ
うに、技をみがき、道を究め
ようともがく男たち。
血族との深い絆と軋み、スキ
ャンダルと栄光、幾重もの信
頼と裏切り。舞台、映画、テ
レビと芸能界の転換期を駆け
抜け、数多の歓喜と絶望を享
受しながら、その頂点に登り
つめた先に、何が見えるのか?
朝日新聞連載時から大きな反
響を呼んだ、著者渾身の大作。
吉田 修一 (著)
Amazonより
『国宝 上 青春篇』登場人物
立花喜久雄
物語の主人公。任侠の家
系に生まれながらも、その
圧倒的な美貌と才能で周囲
を惹きつける。
家族や血族との強い絆と軋
み、そして芸能界での人間
関係の中で成長していく。老舗料亭「花丸」
長崎にある老舗料亭で、
物語の出発点となる重要な
舞台。
喜久雄の家族や任侠の人々
が集う場所。侠客たち
喜久雄の周囲にいる任侠
の世界の人々。
彼の人生や運命に大きな影
響を与える存在。血族
喜久雄の家族や親戚。
深い絆と同時に、軋みや葛
藤も抱える。芸能界の人物たち
舞台、映画、テレビといっ
た芸能界の転換期に関わる
人々。喜久雄の才能や美貌
に惹かれ、彼の人生を左右
していく。
『国宝 上 青春篇』
喜久雄は、幼い頃から壮絶な
環境で育ち、やがて大阪の名
門・花井家で修行を始める。
ライバルとなる俊介との切磋
琢磨、女形としての才能と美
貌、そして家族や仲間との絆
と軋み――。
どのエピソードも濃密で、ま
るで舞台の上にいるような臨
場感があった。特に、師匠の
半二郎や徳治、幼なじみの春
江など、喜久雄を取り巻く人
物たちの描写が秀逸で、彼ら
の存在が物語に厚みを与えて
いる。
物語は1964年の長崎から
大阪、そして東京へと移り、
日本の高度成長とともに芸能
界も大きく変化していく。
伝統と革新、血縁と才能、成
功と挫折――そのすべてが喜
久雄の人生に重くのしかかる。
私は、彼がどんなに苦しくて
も芸の道を諦めず、何度も立
ち上がる姿に心を打たれた。
血筋や環境に縛られながらも、
自分の道を切り開こうとする
姿は、現代を生きる私たちに
も強い共感を呼ぶ。
文体は独特の語り口で最初は
戸惑ったが、読み進めるうち
にそのリズムが心地よくなり、
歌舞伎の口上を聞いているよ
うな感覚になった。
歌舞伎や伝統芸能に詳しくな
くても、地の文で丁寧に解説
されているので、物語にすん
なり入っていけるのも魅力だ。
800ページ超の大作だが、人
生の濃密なドラマと舞台裏の
リアルが詰まっていて、私は
一気に聴き終えてしまった。
非凡な才能ゆえの孤独と葛藤、
そして人間国宝へと至るまで
の道のり――。
この物語は、平凡であること
の幸せと、非凡であることの
宿命を静かに問いかけてくる。
映画を観る前に、ぜひ原作で
この熱量を体感してほしい。
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