おうちカフェ
『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』
越智月子による心温まるヒューマンドラマ小説です。
舞台は、鎌倉駅から徒歩8分の場所にある木々と小鳥に囲まれたシェアハウス。その中心人物は、父の死をきっかけに鎌倉のカフェを引き継いだ主人公・香良。物語は、彼女の親友が離婚後に転がり込み、成り行きで始まったシェアハウスに、少しずつ個性的で事情を抱えた住人たちが集まっていく、という流れで進みます。
鎌倉駅徒歩8分、空室あり
越智月子 (著)
誰かと生活することは、めんどくさいけどあたたかい。
鎌倉駅から徒歩8分。木々と小鳥に囲まれたシェアハウスには、今日もカレーとコーヒーの香りがいっぱい。
まだ空室アリ。
男手一つで育ててくれた父が死んで、鎌倉のカフェを引き継いだ香良。ある日離婚した親友が押しかけてきて、いつの間にかシェアハウスをはじめることに! 次々やって来る入居者たちは、みんなちょっとワケあり。慣れない他人との共同生活に、イラっとしたり文句を言ったりもするけれど……。家族だから言えない、家族だから甘えられない。そんなひとりぼっちになった住人たちが見つけた新しい形のきずなに、あたたかい気持ちになる1冊。
越智月子 (著)
Amazonより
✻登場人物✻
• 香良(かおる)
男手一つで育ててくれた父の死後、鎌倉のカフェを引き継いだ女性で、シェアハウスのオーナー。人付き合いに苦手意識があるが、住人たちとともに生活を築く。
• 三樹子(みきこ)
香良の大学時代からの親友。離婚してこのシェアハウスに転がり込み、「シェアハウスをやろう」と香良を押し切って始める。デイサービスのバイトもしている。
• 藤村里子(ふじむらさとこ)
少し神経質で愛犬ツンと一緒に暮らす女性。
• 道永あゆみ(みちながあゆみ)
最年少の住人で、隠し事を抱えている。
• 鎌倉夫人・千恵子(かまくらふじん・ちえこ)
息子夫婦から追い出されてシェアハウスにやって来た。
• 倉林美佐緒(くらばやしみさお)
隣人グラディスさんの娘。フランスから帰国したばかりで、パティシエ修業のために留学していたが中退し、心にわだかまりを抱えている。
✻あらすじ✻
一見ほのぼのとしたお話のようですが、「ひとりぼっち」の人々が互いにぶつかり、すれ違いながらも、次第に距離を縮め、疑似家族のような共同体を築いていく姿が描かれます。カレーやコーヒーの香りといった日常の温もりのディテールが、登場人物たちの心の移ろいと繋がっていて、読者にもじんわりと沁みてくる内容です。
◆本書の魅力◆
• 人とのつながりの再発見
血縁ではないけれど、心で結びつく「新しい家族」の在り方を描いています。
• 鎌倉という土地の魅力
緑に囲まれた古民家風の建物や、小路に漂う食べ物の匂いが、情景を豊かに彩ります。
• 不器用ながらも愛すべき登場人物たち
離婚、家族の不在、自分自身をうまく愛せないなど、様々な傷や背景を抱えた人々
リアルに描かれます。
◉心に残った一言◉
「誰かと暮らすのが面倒くさい時もある。でも、それ以上にあたたかい」
こんなメッセージが胸に残る、癒やし系の物語です。シェアハウスや地域コミュニティに興味がある人にもおすすめです。
もしあなたが少し離れた場所に暮らしていても、この夏、鎌倉に旅する気分で読める一冊です。
◆感想◆
鎌倉駅から小道を歩いて、春なら桜、夏なら緑のトンネルに包まれながら、潮の匂いがほのかに混じる風を感じること約8分――そこにたどり着いたのが、越智月子さんの小説『鎌倉駅徒歩8分、空室あり』の舞台となる、あのシェアハウスでした。
読んでいる間、私はまるで自分がその木造の家の縁側に腰かけ、朝のコーヒーの香りや、夕暮れどきのカレーの湯気に包まれているような気持ちになりました。
鎌倉という街の、ちょっと古びていて、でも確かに温かい空気が、ページをめくるたびにふわりと立ちのぼってくるのです。
物語の主人公、香良は、父の死をきっかけに鎌倉でカフェを継ぎます。
その選択だけでも胸がきゅっとなるのに、そこに親友の離婚話が飛び込んできて、気づけばシェアハウスを始めている――そんな偶然が積み重なって、いつしか彼女の暮らしが他者との関わりで彩られていきます。
最初は、他人と暮らすことの不自由さやイライラに、こちらも「わかる、わかる」と思いながら読んでいたのに、不思議とそのページを閉じる頃には、誰にも言えなかった心の奥の痛みが、そっと誰かに触れてもらったような気持ちになります。
鎌倉には、どこか「ひとりぼっち」を受け入れてくれる懐の深さがある。
だからこそ越智さんの描く世界では、家族でも恋人でもない、でも確かな「きずな」が自然と生まれてくるのかもしれません。
この本は、鎌倉の風を知る人にも、知らない人にもおすすめです。
そしてできることなら、読み終わった後、あのシェアハウスを探しに行きたくなるはず。
ほら、今も海と坂道の街のどこかで、「空室あり」の札がそっと揺れているような気がしてなりません。
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自己紹介
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