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15歳、ただ会いたかっただけ。第二十一話 離れたくない

気づけば、帰る前日になっていた。



「はや……」



思わず口から漏れる。



あれから毎日のように会っていたはずなのに、時間は一瞬で過ぎていった。



明日になれば、としとかずきは地元へ帰る。



別れるわけじゃない。



そう言われた。



それでも、“離れる”という事実だけは変わらなかった。



放課後、いつもの待ち合わせ場所へ向かう。



今日は最初から、少し空気が違った。



「おつかれ」



「おつかれー」



としが私を見るなり、自然に肩を抱き寄せる。



「近いって」



そう言いながらも、振り払う気にはなれなかった。



みさきとかずきも、今日はいつもより距離が近い。



4人とも、きっと分かっていた。



明日から、今までみたいには会えなくなる。



だからなのか、その日は誰も“帰る時間”を気にしなかった。



ご飯を食べて、ゲームセンターへ行って、くだらない事で笑って。



いつもと同じ事をしているだけなのに、全部が特別みたいに感じる。



「なんか、今日静かじゃね?」



かずきが笑いながら言う。



「そっちが静かなんじゃん?」



「いや、ゆうが」



そう言われて、自分でも少し笑ってしまった。



多分、上手く笑えてなかった。



離れる実感が、少しずつ近づいてきていた。



でも。



今日は泣きたくなかった。



せめて今日くらいは、ちゃんと笑っていたかった。



気づけば、外もかなり暗くなっていた。



「そろそろ帰る?」



かずきの言葉に、少しだけ空気が静かになる。



「だね」



みさきも小さく頷いた。



帰り道。



いつもと変わらないはずなのに、今日は少しだけ会話が少なかった。



「また連絡しろよー」



「そっちもね」



みさきとかずきと別れる。



そのあと、としと2人で並んで歩いた。



「来る?」



小さく聞かれて、私は黙ったまま頷く。



としの部屋。



ドアが閉まった瞬間、強く抱きしめられた。



「……苦し」



そう言いながら少し笑う。



でも、としの腕は離れなかった。



いつもと同じ部屋。



いつもと同じ距離。



なのに、今日は全部違って感じる。



離れるのは明日だ。



そう思った瞬間、急に胸が苦しくなる。



「どした?」



「……なんでもない」



本当は、なんでもなくなかった。



離れたくない。



まだ帰ってほしくない。



そんな言葉ばかり浮かんでくる。



軽くキスをされ、そのままソファへ引き寄せられる。



抱きしめられたまま、しばらく何も話さなかった。



静かな部屋に、テレビの音だけが流れている。



「……帰りたくないな」



不意に、としが小さく呟く。



一瞬、何を言われたのか分からなかった。



今まで、不安そうな顔なんて見せなかったのに。



「え?」



聞き返すと、としは少し笑って、



「いや、なんでもない」



そう誤魔化すみたいに、もう一度軽くキスをした。



その優しさが、余計に苦しかった。



離れたくない。



きっと、としも同じだった。


としの腕の中は、苦しいくらいあたたかかった。



離れたくない。



その気持ちが、触れている場所、全部から伝わってくる。



「……ねぇ」



小さく呼ぶ。



「ん?」



顔を上げると、としがすぐ近くにいた。



その目を見た瞬間、胸の奥がまた締めつけられる。



明日になれば、離れる。



会えなくなるわけじゃない。



ちゃんと分かってる。



それでも、今みたいに隣にいられない。



触れたくなった時に、触れられない。



それがこんなに苦しいなんて、思わなかった。



「今日さ……」



声が少し震える。



「うん」



「……帰りたくない」



言った瞬間、自分でも泣きそうになった。



としは少しだけ目を細めて、何も言わずに私の頬に触れる。



その手が優しすぎて、余計に涙が出そうになる。



「帰さない」



低く呟いて、そのまま深くキスをされた。



優しいのに、どこか必死で。



離れたくないって気持ちが、そのまま重なるみたいだった。



ソファに押し倒され、何度もキスが落ちてくる。



首筋に触れる唇に、小さく息が漏れた。



「……ゆう」



名前を呼ばれるだけで、胸が熱くなる。



服の上から抱きしめられたまま、何度も触れられる。



いつもより静かで、いつもより丁寧だった。



まるで、離れる前に全部確かめるみたいに。



「好きだよ」



耳元で掠れた声が落ちる。



その一言だけで、堪えていたものが崩れそうになる。



「……私も」



気づけば、自分から抱きついていた。



離れたくない。



少しでも長く、こうしていたい。



その夜、としは何度も優しくキスをして、何度も抱きしめてくれた。



触れ合うたびに、不安も寂しさも溶けていく気がした。



好き。



離れるのが苦しいくらいに。



全部終わったあとも、としはずっと私を腕の中に閉じ込めたままだった。



「……ほんと帰りたくねぇな」



眠そうな声で呟かれて、胸がまた苦しくなる。



私は小さく笑って、としの胸に顔を埋めた。



その鼓動を聞きながら、明日が来なければいいのにと思った。









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