【短編ラノベストーリー】千切れ雲の約束
プロローグ
――この空のどこかで、君も同じ雲を見ているだろうか。
あの日、手を振った背中が、風に溶けて見えなくなっても。
それでも私は、歩き続けると決めた。
第1章:柳の下のさよなら
初夏の川辺、柳の木が揺れるたび、澄んだ風が吹き抜ける。
緑の髪をなびかせて、少女・ユナは静かに誰かを見送っていた。
言葉は交わせなかった。ただ、背中を見送るだけだった。
その人が去ったあとの風が、耳に優しく触れた。
その余韻だけが、彼が確かにそこにいた証だった。
第2章:雲を越えて
時は流れ、ユナは旅人になった。
胸の奥に封じた声と、心に浮かぶ約束を持って。
「叶わないってわかってる。でも、それでも――」
彼と交わした夢を背負い、彼女は空を見上げる。
その空はいつも、千切れた雲の向こうへと誘っていた。
第3章:帰り道に残るもの
赤く染まる帰り道。誰もいない道に、自分の足音だけが残る。
昔、誰かと並んで歩いた影はもうない。
けれど風が頬を撫でるたび、かすかに彼の名を思い出す。
――もう一度、声が聞きたい。
その願いが胸の奥から、抑えきれずに溢れ出した。
第4章:雲の先に見たもの
ある日、ユナは空を見上げて、千切れ雲の先に――
微笑む彼の姿を見た気がした。
心に灯ったその光に導かれるように、
彼女は再び歩き出す。まだ咲かぬまま散った約束を、
もう一度信じるために。
第5章:再会の予感
夜の丘に立ち、ユナは想う。
過ぎ去った日々を悔やまずとも、
彼がこの空のどこかにいる限り、想いは消えない。
星明かりの下、彼女は小さく呟いた。
「私、まだ歩いてるよ……君と交わしたあの願いのために」
エピローグ:空に浮かぶ願い
朝焼けの中、ユナは静かに空を見上げる。
その瞳は、かつてとは違う強さを帯びていた。
消えゆく雲の向こうに、彼の背中が見えた気がして、
胸が締めつけられるような切なさに包まれたとしても。
それは、たしかに「出会えた証」。
空に浮かべた願いは、やがて未来で交わるだろう。
そう信じて、ユナはまた歩き出す。
