「氷室」八月号(2026年)より
尾池和夫主催「瓢鮎抄」より六句
暗帯に星のまたたく二重虹
曲がるたび線路を隠す明治草
稲妻のしだいに遠く草千里
空静かなりと市長や大文字
炎の立てば横棒長き大文字
三島溶岩台地飛ぶ秋茜
霞袂集より
風薫る甲ふつくらと観世音 尾池葉子
山椒魚の動くを待てば泡ふたつ 大島幸男
陪冢に隣る溜池蟇鳴けり 長野眞久
ドロップの薄荷青梅雨きざしけり 三和幸一
どう生きてみても百年豆の飯 原 稔
柿若葉めがねの似合ふ庵主かな 余米重則
鳧鳴くや休耕田の風の中 古川邑秋
進むとも見えぬタンカー夏の雲 四宮陽一
落雷や机の角に走り書 大口彰子
※陪冢…ばいちょう
※鳧…けり
僕の掲載された句です
氷壺集
参道のここに始まる海芋かな
豆ご飯供へる豆をもう一つ
樟若葉武将の筆のみな達者
橋あれば渡る楽しさ夏柳
氷室集
父の忌の近づく茅花流しかな
母の日と言へずに母の日の電話
肌脱のまま父と子の昼餉かな
靴跡の潦なりみずすまし
「樟若葉武将の筆のみな達者」には尾池主宰の講評をいただいています。
言い得てたしかな気づきです。初夏は樟若葉の鮮やかな緑を輝かせます。武将たちの書状は、どれも驚くほど達筆です。戦場を駆け抜けた者ならではの豪快な筆跡と樟の生命力が時を経て強烈なエネルギーとして共鳴しています。
