【本選編・第3話】指先が日本刀!? 12歳女子、ベートーヴェンという名の「修羅の道」へ
神セブン先生からの動画添削レッスン以来、我が家のリビングは「ピアノの練習室」から「道場」へと変貌を遂げました。
ターゲットは、ベートーヴェン『11のバガテル 第5番』。
わずか1ページの楽譜に隠された「殺気」と「情熱」に、母娘で白目を剥きながら立ち向かう実況中継をお届けします!
■ そもそも「バガテル」って……「つまらないもの」じゃないの?
練習の合間、曲名を調べてみました。バガテル(Bagatelle)とは、直訳すると「つまらないもの」「ちょっとしたもの」「些細な小品」。
私: 「なーんだ、おまけみたいな曲じゃない」
娘: 「えっ、じゃあ楽勝じゃん!」
……なんて思った自分たちを、全力で殴りたい。
先生が仰るには、この曲は「ベートーヴェンの「やり場のない個人的な怒り」が濃縮還元されたドロドロのハ短調なんです。
「些細なもの」の中に、巨大な魂を無理やり詰め込んだ、いわば「手乗りサイズのダイナマイト」。生半可に扱えば、こっちが爆発します。💦
🔥左手は「伴奏」じゃない、打ち付ける「鉄球」だ!🔥
まず着手したのは、先生から「これが命」と断言された左手。
楽譜の冒頭から並ぶ和音の連打です。
私: 「ほら! 弱々しい! それじゃあベートーヴェンの怒りが伝わらないわ! もっと塊(かたまり)を打ち付けるように!」
娘: 「塊って言われても! 私の手、まだ子供サイズなんだけど!」
先生のお手本では、左手が沈み込むたびに地面が揺れるような地響きがしていました。「左手が魅力的に弾けないなら意味がない」という言葉を胸に、12 歳が渾身の力で鍵盤にエネルギーを叩きつける。もはやピアノというより、大工仕事の域です。
🔥指先を研げ! 16分音符は「刃を薙ぐ」スピードで
続いての難所は、左手の16分音符。
ここで先生から飛び出したパワーワードが、「刃(やいば)を薙ぐ激しさと繊細な感情のチラ見せバランス」。
娘: 「ねえお母さん、指を『刃』にするってどういうこと? シュパッってこと?」
私: 「そう! 日本刀で一気に斬りつける感じよ! ゴツゴツさせないで、音の伸びを一気に薙ぎ払うの!」
16分音符がゴツゴツすると、せっかくの「激しさ」がただの「不器用」に見えてしまう。「手首を止めないで!」という私の絶叫の中、娘の指が鍵盤の上をシュパシュパと走り抜けます。見た目は可愛い12 歳ですが、出ている音はもはや剣客。

🔥沈黙が怖い! 休符は「音のない音符」である
そして、母娘を一番苦しめているのが「休符」です。
ベートーヴェンの休符には、爆発寸前の緊張感や、ふとした瞬間の迷いが詰まっているといいます。
私: 「ストップ! 今の休符、ただ休んでるだけでしょ! 緊張感がゼロよ!」
娘: 「えぇ〜、だってお休みって書いてあるじゃん……」
私: 「甘い! 休符こそが音符! その一瞬の静寂に、次に爆発させる情熱を溜め込むのよ!」
「音が鳴っていない時間にこそ、ベートーヴェンの息遣いを」という先生の言葉が呪文のようにリピートされます。静まり返るリビング。時計の針の音。……あ、今、ちょっとだけ「重い沈黙」が聞こえた気がする!
🔥🔥sf(スフォルツァンド)3連発! 「頑固おじさんの逆襲」
曲の終盤(コーダ)、ついに現れるのが「sf」の3連続。
これは単なる「強く」ではなく、ベートーヴェンの「譲れない意志」の表れです。
娘: 「ここ! 一回目! 二回目! 三回目! どうだぁー!」
私: 「よし! その『言い切る感じ』がいいわ! 最後にガツンと駆け抜けて!」
休符を挟んで三度繰り返される叫び。「これが俺の答えだ!」と机を叩く頑固おじさんの姿をイメージしながら、娘は全身で鍵盤を押し込みます。

☕練習後のティータイム(※ただしスイーツ抜き)
猛特訓を終え、汗だくの娘。「お母さん、ベートーヴェンって……めちゃくちゃ疲れるね。1ページなのに、マラソンしたみたい」
本当に、この1ページにどれだけのドラマが詰まっているのか。
短時間の中で、一気に弾き切る勢いと、その合間に見せる繊細な表情。その絶妙なバランスを求めて、私たちの修行は本選当日まで続きます。
私: 「よく頑張ったわね。さあ、ご褒美に……あ、ごめん、私まだスイーツ断ち中だった」
娘: 「……お母さん、ドンマイ」
本選まであと少し。
母の糖分不足と引き換えに、娘の指先はどんどん「刃」へと研ぎ澄まされていくのでした。

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