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店を閉めた後の現在地




閉店後の今と、閉店前に決まった旅のはじまり。

お店を閉めてから、早いもので3ヶ月が経った。

人と会うと、よく聞かれる。

「毎日なにをやっているの?」

正直、これといって分かりやすく説明できることはない。
強いて言えば、数年前から始めていたワインの勉強を、今も少しずつ続けている。
店をやっている間に買い溜めていたワインを開けて、色々なジャンルの料理と合わせながら、家でペアリングの実験をしている。

あとは、買ったまま積んでいた本を、ようやく少しずつ読んだりしている。

店をやっていた頃のように、毎日決まった時間に仕込みをして、営業して、片付けて、翌日のことを考える。
そういう生活から一度離れると、自分が何者なのか、少し分からなくなる。

店の前には、外に出していたテーブルがあった。
その下には、店で育てていたミントとパクチーファランが、まだ顔を出していた。

以前、プランターで育てていたものが、根を張ったのか、種がこぼれたのか。
いつの間にか、店の外にも広がっていた。

店を閉めることよりも、そのミントたちをこのまま残していくことの方が、なぜか寂しかった。

たぶん、これは自分にしか分からない感覚だと思う。
でも、そういうものの方が、案外あとに残る。

今回の旅を決めたのは、店を閉めてからではなかった。

たぶん、1月くらいだったと思う。
まだ店をやっていた頃、なんとなくANAのサイトを開いた。

「店を閉めたら旅に出よう」

そんな前向きな計画があったわけではない。
本当に、ただなんとなくだった。

マイレージが溜まっていた。
せっかくなら、どこかへ行けるのかもしれない。
できれば、普段はなかなか乗れないビジネスクラスで。

以前にもマイルでビジネスクラスを取ろうとしたことがあったが、希望の日程はまったく取れなかった。
聞くところによると、特典航空券のビジネスクラスは、約1年前から押さえる人も多いらしい。

今回も無理だろうと思っていた。

ところが、取れてしまった。
しかも、日本のゴールデンウィークが始まる時期だった。

行き先は、結局タイだった。

その瞬間に、旅が決まった。

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