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こころのありか


「三月は二月を遠く思い、過ごそう。」
ナフタレン太郎は校庭を歩く、
ツガイの男女を見てつぶやいた。

二月には希望があった、
共学に通う思春期の男性には。
現実味のない、
宝くじの一等当選のような、
力点、支点、作用点の法則に反目した希望が。

特に当てもないが、
好意のチョコレートが降り注ぎ、
眼前には頬を赤らめた乙女。

妄想、空想の二月

お楽しみBOXと化した靴箱も、
波乱を孕んだ放課後の氷の様な空気も、
マフラーを巻いた乙女も、
徐々に緩くなる気温と共に個体から液体へ、
果てには揮発してしまう。

どうやら校内に、
揮発した二月を蒸留し、
ボトルに詰めて販売する売店があるだとか
聞いたが、それに食い付く間抜けな自分を俯瞰し、情報屋には、「不憫な」とだけ返した。

今この瞬間にしか、こころは
存在し得ないのだ。
揮発した過去を蒸留し冷やして液体にしても、
そこには現象としての二月しか存在しない。
とか高尚に煙を巻いて。

わたしは三月の補講に精を出し
可愛くもない隣の席のアイツから
「ねー、チョコもらった?」
に空虚な返事をして
含みがちな
「ふーん、、、」の声を
右耳から左耳へ通し
三階の校舎から校庭へ落とし込むのだ。

我が乙女わ何処。




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