海へほどける
癒されに来たわけではない。
仕事の途中に、たまたま外れた道を通っただけだった。
香川だから、海が見えるのは特別ではない。
観光地でもなく、わざわざ見に行く景色というほどでもない。
ただ今回は、いつもの通り道ではなかった。
それだけの違いだった。
橋の上から見える水は、
まだ川のままで、
海の音は、ここまでは聞こえてこなかった。
この辺りは、ほとんど車も通らず、
近くに住んでいるはずの人の姿も見えなかった。
静かというより、
世界から少し外れてしまったような場所だった。
境い目は、きっとどこかにある。
でも、それを無理に見つけようとしなくても
いいのだと思う。
はっきり分からなくても、
水は自然に、海へほどけていく。
この日立ち寄ったのは、
川がそのまま海へほどけていくのが見える橋。
観光地でもなく、
立ち止まらなければ、気づかない場所だった。
