舞鶴で軍港クルーズしてきた話
海上自衛隊の大規模な拠点は全国に四箇所ある。
横須賀、呉、佐世保、そして舞鶴。
それらはいずれも帝国海軍の鎮守府という拠点が置かれた軍港で、現在も各地方隊の拠点となっている。
今回はそんな軍港がある町の一つである舞鶴へと向かった。
お目当てはもちろん「軍港クルーズ」だ。
今年2月に呉で「軍港クルーズ」を堪能し、3月には友人が佐世保で「軍港クルーズ」を楽しんできた話を聞いたこともあり、舞鶴での軍港クルーズにも興味が湧いたのだ。
日帰りで行ける距離にある舞鶴にはこれまで何度も訪れていながら、一度たりとも軍港クルーズに参加したことはなかった。
今思えばもったいないことをしてきたが、過去を振り返っても仕方がない。
思い立ったが吉日とも言う。
ゴールデンウィーク直前の土日という渋滞に巻き込まれることもないであろう時期を見計らい、観光も兼ねて単身舞鶴へと足を運んだのだった。

日帰りであり時間も惜しいので、一般道ではなく全て高速道路を利用した。
舞鶴若狭道は福井県敦賀市(敦賀JCT)から兵庫県三木市(吉川JCT)までの間を日本海側から繋ぐ高速道路だ。
日本海側にあるが、残念ながら大半が内陸を走っているため北陸自動車道のような眺望の良さはあまりない。
そんな舞鶴若狭道で最も眺望がよいであろう三方五湖PAで休憩を取ることにした。
ここは三方五湖の一つである三方湖を見渡すことが出来る位置にある。
スマートICも併設されており、三方五湖周辺での観光にも適している。




舞鶴東ICを退出して海へと向かう。
舞鶴市街地へ到着したのは午前11時頃だった。
先に昼食を済ませようかと思い店が入居している施設の駐車場に車をとめたが、開店時間である午前11時半には早かったため付近を散策することにした。
とりあえず海へと向かって歩を進めてみる。




舞鶴港でのんびりと海を感じる。
高校生がボートの練習をしている姿が見える。
帰宅してから調べてみると、すぐ近くの建物は京都府舞鶴漕艇センターであり、東舞鶴高校ボート部の練習場所だったようだ。

舞鶴市街地にある業務用スーパーで買っておいたココナッツミルクを飲む。
ほどよい甘さで後味はさっぱりしており、甘さがベトベトと口の中に残らない。
気に入ったので最近よく飲んでいるオススメの一本だ。
出先でも普段買っているものと同じ物を買えるのがチェーン店のいいところだと実感する。

本日のお昼はクリームにこみハンバーグだ。
多世代交流施設まなびあむ内の一階にあるバーグメンというお店だった。
注文方法はモバイルオーダーで、注文すると御覧のとおりハンバーグが一皿出てきた。
しかし、ご飯などは何も付いてこなかった。
おかしいと思い尋ねてみると単品での注文になっていたのだが、そもそもハンバーグを単品で注文する人などいないだろう。最初からセットメニューにしておいて欲しいものだ。
とりあえず、その場でご飯とサラダのセットを口頭で追加注文した。




昼食を済ませたところで、時刻はまだ正午前。
私がネットで予約した軍港クルーズの出航時刻は午後1時で、出向時刻の20分前までに乗船券を引き換えることになっていた。
チケットの受取まで40分近く中途半端に時間が余ってしまったのだ。
遊覧船乗り場の近くには博物館や売店、飲食店等が入居した舞鶴赤れんがパークという施設があるので、そこで時間を潰すというのも選択肢としてはあった。
しかし、ここは以前訪れたことがあったので、せっかくなら行ったことがない場所へ行きたいところ。
そこで今回は、舞鶴港を挟んで対岸に見える斜張橋を見に行ってみることにした。
舞鶴クレインブリッジ

約10分後。
橋に行くつもりだったのに、なぜか山村部にいた。
大雑把に道を調べて分岐をろくに確認せず道なりに進んでしまった結果、大浦半島の内陸部へ向かう道路に入ってしまっていたのだ。

転回できそうな広めの空間を見つけたので、ここで道を確認して引き返した。

引き返して分岐の交差点を確認し、橋へと向かった。
橋の手前には駐車場が設けられており休憩できるようになっていたので、車をとめて徒歩で散策することにした。







舞鶴港方面とは逆方向にあるのは平湾という入江で、日本海には通じていない。
ちなみにこの橋を進むと関西電力の舞鶴火力発電所へと通じており、そもそもこの橋は当初発電所の工事用道路として建設されたという。
むろん住民のためのショートカットルートにもなり、内陸を通る従来のルートに比して移動時間が大きく改善されたそうだ。

海軍ゆかりの港めぐり遊覧船(一回目)

舞鶴での軍港クルーズは「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」という名前で運航されているが、長いので以下軍港クルーズと俗称を続ける。
遊覧船のチケットはネットで予約が可能だが、予約した上で当日に紙のチケットと引き換えする必要がある。乗船料金の支払いもこの際に行う。
チケット売り場は乗船場所ではなく赤れんが博物館内に併設されており、20分前までにチケットを購入しておく必要がある。





遊覧船は小ぶりだが冷暖房完備なので船室内は快適だ。
しかし、船室内からだとガラス越しに観ることになるため、船から三方を見たい人は出入り口がある後部デッキに立って観ていた。
もちろん私もその一人だった。
また、船のスタッフには元海上自衛官の方も多いようで、最初に乗ったクルーズでは船長と船内アナウンスを担当するスタッフの2名が元海上自衛官だった。





乗り場からも見えるこの船は掃海艇あいしまという。
外観からは分かりにくいが、実はこの船は現代では珍しい木造船なのだ。
木造船である理由は磁気による触雷を避けるためで、船内アナウンスによれば船体は松の木で作られているとのことだった。
防風林としても植えられる松は湿気にも強いからだろうか。
掃海とは海上もしくは海中に散布される爆弾である機雷を除去する作業のことをいい、触雷とは機雷に接触することをいう。





はつしまも同様に掃海艇だが、こちらは木造船ではなく強化プラスチック(FRP)で作られている。
FRPは木造船と比べて強度も耐用年数も高いのが利点だそうで、今後は木造船は姿を消していくだろう。



北吸桟橋は全国の海上自衛隊基地の中で最も長い桟橋だ。
長い桟橋に一直線に艦艇が並ぶ姿が見られるため、とても様になる。
呉や横須賀といった他の軍港では長さが短い桟橋がいくつもあるため、このように艦艇が一直線に並んだ姿を見ることは出来ない。
これは舞鶴ならではの光景だろう。

DD-118 ふゆづき(右)



北吸桟橋の対岸にある白い建物は舞鶴警備隊の庁舎で、基地の警備業務を担っている。
手前に係留されているのは支援船だと思うが、艦番号が消されており詳細は分からない。
用途廃止されたものだろう。



舞鶴警備隊の敷地内に目をやると犬が見えてきた。
もちろん勤務している自衛隊員のペットではない。
この犬たちは警備犬といい海上自衛隊や航空自衛隊の基地を警備するために特殊な訓練を受けており、犬種はジャーマンシェパードだそうだ。
海を守る役目に就いているが、間違っても"Seaの"シェパードではない。








フェリーターミナルのある前島埠頭を過ぎると東岸に白い建物が見えてくる。
海上自衛隊の舞鶴教育隊だ。
海上自衛官として採用された者が教育を受ける部隊で、今年も300人以上の新隊員が入隊して教育を受けているとのこと。
船内アナウンスを担当しているスタッフのおじさんは、退官時に教育隊の教官をしていたと言っていた。
気さくに親父ギャグを飛ばす親しみやすそうなおじさんだったが、現役時代は鬼教官だったのかもしれない。


教育隊の敷地内には小さな船が大量に宙吊りにされていた。
これは短艇もしくはカッターと呼ばれる手こぎボートで、教育隊の訓練に用いられるものだ。
防大での体験記でもカッターの事が書かれていたが、それによれば尻の皮が剥けるという。
根性が必要だって、はっきりわかんだね。



舞鶴湾に浮かぶ二つの無人島で、左が蛇島、右が烏島という。
蛇島には帝国海軍によりトンネルが掘られガソリン庫が整備されており、現在もその遺構が残っているという。
ただし島内全域が国有地であるため立入禁止であり、令和8年5月現在は見学することが出来ない。

西側にはもう一つ巨大な建物が見えてきた。
舞鶴航空基地の格納庫だ。
この基地には対潜哨戒ヘリコプターSH-60Kを運用する第23航空隊が編成されており、同機は必要に応じて護衛艦に搭載される。
実は12年ほど前に基地見学へ行ったことがあるので、ちょっと懐かしく感じた。
当時ヘリコプターの整備をする隊員から、テレビで見る自衛隊の指導はあくまでテレビ向けであって実際のシゴキはもっと厳しいというような話を聞いたのを覚えている。
飛んでくる言葉もそんな生易しくはないそうだ。



ここで船内アナウンスがあった。
なんと「ひゅうが」が入港してきたというのだ。
ひゅうがは海上自衛隊のヘリ空母であり、舞鶴基地で最大の艦艇でもある。
しかし、この時点では入港してきたばかりなので遠目でしか見られなかった。

巨大な貨物船が見えてきた。
これはジャパンマリンユナイテッドの舞鶴事業所、要するに造船所だ。
その前身は舞鶴海軍工廠であり、戦前は多くの軍艦を製造してきた国営の造船所だった。
調べてみると船舶の新造は既に終了し造船所としての幕を下ろしてしまい、現在は艦船の修理のみを請け負っているという。


















海上自衛隊最速の艦艇、はやぶさ型ミサイル艇だ。
その最高速度は40ノット(時速約81km)にもなる。




最新鋭の護衛艦、もがみ型をようやく近くで見ることができた。
レーダー反射断面積を減らしステルス性を高めるために艦の形状から極力凹凸を廃した結果、このような独特な形状となっている。
不格好な気もするが、実用性を極めたという点ではそれはそれで美しいのではないかとも思える。
もがみ型護衛艦は呉で軍港クルーズに参加した際に見たかったのだが、呉のもがみ型は桟橋の内側にありほとんど見られなかった。
今回は側面からその形状をはっきりと見ることが出来たので、そういう意味でも非常に満足できた。


















先述した教育隊の元教官は南極観測船の乗組員だったそうで、その際にお土産として持ち帰ってきた南極の石が船室後方に展示されていた。
海軍ゆかりの港めぐり遊覧船(二回目)

船を降りると、先ほど入港しかけていたひゅうがが桟橋付近まで来ていた。
そこで私は思った。
「これ、次の便の遊覧船に乗れば、もっと近くでひゅうがを見ることが出来るのでは…?」
そもそも海上自衛隊の護衛艦がいつどこにいるかは一般人には分からない。
特別なイベントでもない限りは軍事機密になることから、軍港まで足を運んだ際にどの艦艇が見られるかは完全に運次第なのだ。
自分が見たいタイミングで、自分が見たい艦艇を見られるとは限らない。
したがって「今」見るべきだ。
そう考えた私は、下船すると直ちに次の便である午後二時発のチケットを購入し、立て続けに軍港クルーズを堪能することにしたのだった。










ヘリ空母に分類されるだけあって、かなりの大きさであることが分かると思う。
後ほどじっくり見るとしよう。


船内スタッフも交代となり船内アナウンスの担当者が代わると、船内からの解説も多少の変化があって面白かった。
この白い建物は舞鶴教育隊の施設の一部だが、用途としては船内で火災が発生した際の消火訓練を行うための施設だそうで、自衛隊のみならず海上保安庁も訓練のために利用するという。

船内アナウンスの変化はあるが、見える艦艇や景色についてはヘリ空母ひゅうがの存在を除き先ほどと大きく変わらない。
そう思っていた矢先に、またしても船内アナウンスで新しい情報が知らされた。
なんとひゅうがに続きやはぎ(もがみ型護衛艦5番艦)が入港してきたというのだ。

一日の間に立て続けで2隻の艦艇が帰港することは珍しいらしく、またひゅうがの時と異なり帰港する際の様子を船から見られたのも嬉しい。
偶然とはいえ、即断即決した自分の判断が正しかったのだと思わずにはいられなかった。






停泊している姿を観るのもいいが、やはり航行している姿を観られるというのは格別だ。
甲板に出ていた海上自衛官も手を振ってくれるので、こちらも振り返す。




いよいよ大本命のひゅうがをじっくり見る。
ひゅうがには12年前に舞鶴に来た際に体験乗艦したことがある。
ヘリコプター用の艦内エレベーターで全通甲板まで上がったのは貴重な体験だった。

ひゅうがは全通甲板を有し対潜哨戒ヘリコプターを多数同時運用することが可能な実質的なヘリ空母だが、艦種記号はDDHとなっておりヘリコプター搭載護衛艦となっている。
DDというのは駆逐艦を意味するDestroyerを指しているため、ひゅうがは全通甲板を有し基準排水量13950トンの超大型ヘリコプター搭載駆逐艦ということになる。
一体どこが駆逐艦なのかと思うだろう。
しかし、実は後継であり完全に空母化改修される予定のいずも型護衛艦とは異なり、駆逐艦ではないと言い切れない部分があるのだ。

いずもは艦単体の武装として最低限の対空ミサイルと対空機関砲しか搭載しておらず、その攻撃力の大半は搭載する航空機に依存している。空母なのだから当然だろう。
しかし、対するひゅうがは強力な対潜ミサイルや対空ミサイルを搭載しているため、艦単体でも高い攻撃力を持っている。
いずもとは異なり、ひゅうがには固定翼航空機(F-35Bなどの艦上戦闘機)を搭載するための空母化改修をする予定はない。
もっぱら対潜水艦戦に特化した艦艇として運用されるのだろう。
駆逐艦とは元々水雷艇という魚雷を搭載した高速の小型艇を駆逐するための艦艇だったが、現代では対空戦や対潜戦を担い艦隊の中核を構成する艦艇となっている。
この点から言えば、ひゅうがが超大型のヘリコプター搭載駆逐艦といっても過言ではないのかもしれない。









正面から見た姿は格別圧巻で、写真以上の迫力を感じられる。
この位置からひゅうがを見られるのは遊覧船だけだ。
あらためて連続で乗船して良かったと思う。





五老スカイタワー

艦艇を見終えたあとは、舞鶴でも一番のビュースポットである五老スカイタワーへとやってきた。
標高約300mの五老岳の頂上にある50mのタワーで、舞鶴の街と舞鶴湾のリアス式海岸を一望することが出来る。
この「五老ヶ岳からの舞鶴湾」は近畿百景で第一位に選出されており、これをウリにしていた。






呉へ行った際も潜水艦そうりゅうから公式に認定されたカレーを提供している飲食店があったが、こちらではイージス艦みょうこうから公式認定されたカレーがあるようだ。
次に舞鶴を訪れた際は食べてみたい。

平成25年にサービスを開始し爆発的にヒットしたオンラインゲーム「艦これ」とコラボをしているようで、そのパネルが置かれていた。
これも呉と同じだ。
鎮守府が置かれていた街には全てコラボパネルがあるのだろうか。













大型コンテナ船も停泊可能な舞鶴国際埠頭が見える。
供用開始は平成22年と意外に新しい。

舞鶴という町は、この五老岳を境に東西に分かれている。
西舞鶴は丹後田辺藩の城下町として江戸時代以前から政治経済の中心地として発展してきた町であるのに対し、東舞鶴は明治以降に軍港を中心に発展してきた新しい町だ。
西舞鶴が舞鶴市、東舞鶴は東舞鶴市として行政区も分かれていたが、海軍から軍港都市とし要望されて合併し今に至る。


五老スカイタワーを出て帰路につく。
途中でやや眠気に襲われたため、小浜ICを降りて道の駅若狭おばまで休憩を取ることにした。
ここは賢い料金という社会実験の対象となっている道の駅で、ETC2.0車載器を搭載した車両に限り高速道路の乗り直し料金が据え置きとなる。
早い話がPAやSAとして利用できる道の駅だ。
詳しくは個別に記事にしているので、そちらを参照してほしい。

かつて小浜市は日本語での読みが同じと言うだけの理由でアメリカ合衆国大統領のバラク・オバマを支持し、勝手に推し活していた。
写真にも写りこんでいるが、オバマまんじゅうやらオバマせんべいやらを商品化している。
こういうお祭りのようなノリとテンションでここまで貫き通せるのも大したものだが、未だにアメリカ合衆国大統領に関連付けたポップを作っているのが面白い。
トランプ大統領は口が裂けても「(バラク・)オバマっていいね」なんて言わないだろう。
「小浜っていいね」なら言ってくれるかもしれない。


さいごに
舞鶴で軍港クルーズがしたいと思い突発的に決めた舞鶴旅行だったが、とにかく運がよかった。
天候に恵まれた上に二隻の自衛艦の入港を見られて、本当にこのタイミングで舞鶴へ行って良かったと思っている。神に感謝。
ゴールデンウィーク中に行こうものなら、艦艇の状況以前に渋滞や混雑でそれどころでは無かっただろう。
気になって連休中の軍港クルーズの予約状況を見てみたが、案の定丸一日全ての便が完売していた。
この記事を書き終えた段階でゴールデンウィークはもう終わりかけだ。
もし興味関心が湧いたのであれば、ちょうど今週末以降に行くのが狙い目かもしれない。

