連載『それゆけ!重さん18』~絵
絵
重さんの好きな物は、食べ物、野球、乗り物、スピード・・・
お酒は身体が受け付けず、
エンタメもほとんど興味がないのだけど、
実は、もう一つだけ趣味があった。
それは、絵を描くこと。
お店には、赤茶の唐傘が置いてあって、
その唐傘には、黒い墨で、着物の女性の美人画が描かれていた。
特に上手と言うわけでもない。
でも、なんとなく味のあるそれっぽい絵が描かれているのだ。
その絵は、重さんが描いたものだという。
入院中に描いていたスケッチブックにも黒い墨で、
大きな池が描かれていた。
真ん中に池、左端に池を眺める人影がある。
よく見ると、その人影は、車いすに座っていて、坊主頭だ。
そう、座ってたたずんでいるのは重さん本人だった。
何これ!
自分の絵に自分が登場するだけでも驚きだけど、
さらに驚くことに、
その人物は、赤い薔薇を持っていた!!!
何、この気障な絵!
そういえば、お母さんのスナックで、
私はいつも、重さんから歌のリクエストを貰ったっけ。
曲目は、高橋真梨子さんの『五番街のマリー』
マリーという娘と 遠い昔にくらし、
悲しい思いをさせた それだけが気がかりーー
私は、『ジョニーへの伝言』も良く歌っていたけど、
重さんのリクエストは決まって『五番街のマリー』で、
いつも目をつむって味わいながら聴いていた。
(昔の好きな人でも思い出してるの?)
なんて、重さんのロマンスを私は想像してたんだ。
ーーーーー
こんなこともあった。
重さんの家のビルは、
2階が喫茶&スナック、3階が居住スペース、4階は物置で、
小さなビルだったため、長い外階段があった。
ある日、久しぶりにお店に訪れると、外階段に絵が描かれてる!
色とりどりの鮮やかな動物や植物の絵が、
歩くスペースに所狭しと、お洒落アートや曼荼羅のごとく、
描かれていた。
きゃっ!
一部まだペンキが乾いていない。
そう、重さんは、ペンキを直接塗りたくって絵を描いていたのだ。
そういえば、
ビルは、上から下までかわいいショッキングピンクだった。
重さんってロマンティック。
というか、どこかポップでもあった。
切断の危機すらあった足を抱えながら、
どんな時でも重さんは、
病人ではなくいつもその時を楽しんで生きていた。
19に続く
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