連載『それゆけ!重さん21』~お見舞い
お見舞い
1年の別居の末、私は離婚することになり、
重さんは私のお父さんではなく、ただのおじさんに戻った。
元夫とはしばらくは連絡も取っていなかったが
数年経ったある日、急に連絡が来た。
重さんが、入院していると言う。
あれから、何度も入退院を繰り返し、手術もしてきたらしい。
それは病気になってからも、
私が出逢ってからも繰り返されてきたことだから、
驚くことはないのだけど、
今回ばかりは違うのだと言う。
”もう手術したくない”と重さんが言っているらしいのだ。
病気になる前、高額の保険にたまたま加入した重さんには、
1回手術するとそれなりのお金が入ってくる。
だから、手術するときは「お金稼いでくるよ」と言っていた重さん。
すげえ、かっこいいと思ったものだ。
その重さんが、手術したくないと言うなんて。
どうやら術後の感染症で
入院が長引くことが続いていたようだ。
いろんな新薬も試されて、身体はボロボロになっていて、
元夫が投薬をやめてもらうように掛け合ったりしていた。
最近は、意識も朦朧としていていると言う。
あの重さんが・・・
ーーーーー
私は、最後になるかもしれないと感じて、
思い切って重さんに逢いに行った。
白いベッドの上に横たわる重さん。
少しやせて、少し老けたけれど、ちっとも変わらない。
重さんは、目も悪くなってきていて、
私が病室に入ると、身体をおこして、
目を細めてこちらを見て確認している。
「お、珍しい人が来たぞ」
「来ましたー」と私。
重さん、私のことを忘れてなかった。
それだけで嬉しかった。
あのタクシーで駆けつけた時以来だった。
重さんは何か分厚い本を読んでいた。
詳しくは覚えてない。
女流作家の書いた宗教的な本だったと思う。
「そんな本、読んでるんですね」と話したのだけ覚えている。
その日が、重さんと逢った最後の日になった。
22に続く
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