私ならこう設計する。──LOGICのLPを「顧客主役」で再構築した全記録
※本記事はシリーズ第4弾です。
第1弾:「商品を売るな、体験を設計せよ。──語りたくなるD2Cブランドの構造」
第2弾:「なぜストーリーがない製品は、価格で捨てられるのか。──D2Cメンズコスメの生存戦略」
第3弾:「ストーリーは設計した。でも、なぜ伝わらないのか。──LP・SNSに『顧客主役』を実装する方法」
はじめに:なぜLOGICを題材に選んだか
前回の記事で「設計と実装は別のスキルだ」と書いた。
ナラティブが優れていても、LPやSNSの表現レイヤーに翻訳されていなければ、顧客には届かない。この問題を最も鮮明に体現しているブランドの一つが、メンズD2Cコスメ「LOGIC(ロジック)」だ。
LOGICのブランド設計は、実はよく練られている。「忙しいビジネスパーソンのための合理的なスキンケアルーティン」というナラティブ。ビラン(悪役)は「スキンケアの面倒さ・複雑さ」。主人公は「多忙でも自分を管理したいプロフェッショナル」。
設計は存在している。でも、現状のLPではその設計が顧客に届いていない。
では、私ならどう設計するか。
本稿は、LOGICのLPを「顧客主役」の原則で再構築した、実践的な設計記録だ。ブランドの強みを殺さず、顧客の感情の流れを設計しながら、CVRに直結する構造をどう作るか──その思考プロセスごと公開する。
設計の前提:何を変えて、何を残すか
まず、LOGICの現状LPの問題を整理する。
残すべき強み
「60秒ワークフロー」というコンセプトの鋭さ
泡立て不要の洗顔×マイクロミストという製品の合理性
「仕事のパフォーマンス」という文脈設定
変えるべき問題
ブランドが主語になっているコピー
感情の流れが設計されていない構成
「コスパ訴求」というターゲット心理との矛盾
セクション間の「次を読む動機」の欠如
この2つを明確にすることが、再設計の出発点だ。強みを活かしながら問題だけを外科的に修正する。それが「LP構造改善」の正しいアプローチだ。
設計思想:感情の流れを先に決める
LP設計で最初に決めるべきは、コピーでもビジュアルでもない。「読み進めるにつれて顧客の感情がどう動くか」という流れだ。
論理的に正しい構成でも、感情の温度が設計されていなければ離脱する。逆に感情の流れが設計されていれば、多少の論理的な粗があっても読み切られる。
LOGICのターゲット──多忙なビジネスパーソン──に対して、私が設計する感情の流れはこうだ。
FV(第1) → 「あ、自分のことだ」 (共鳴)
第2セクション → 「そうそう、それがずっと嫌だった」(共感の深化)
第3セクション → 「これなら解決できそう」 (期待)
第4セクション → 「理屈がわかった、信頼できる」 (納得)
第5セクション → 「自分と同じ人が使っている」 (安心)
第6セクション → 「始めない理由がない」 (決断)
第7セクション → アクション
この流れを先に決めてから、各セクションのコピーとビジュアルを設計する。順番が逆になると、「良いコピーが並んでいるが、読み通されないLP」ができあがる。
第1セクション:ファーストビュー(FV)
狙い:3秒で「これは自分のための話だ」と確信させる
ビジュアル設計
仕事の道具の隣に機能的に配置されたLOGIC──この方向性は正しい。ただし人物を出す場合は、顔のアップではなく「仕事へ向かう準備を整える手元や後ろ姿」に限定する。
理由は単純だ。顔が映ると、訪問者は「自分ではない誰か」を見る。後ろ姿や手元なら、訪問者自身が「その場面の主人公」として投影できる。
コピー設計
【修正前】
メイン:「仕事のパフォーマンスは、60秒の思考の整理から始まる。」
これはブランドが語っている構造だ。主語がない、あるいはブランドが主語になっている。
【修正後】
メイン:「あなたの朝に、まだ60秒の無駄がある。」 サブ:泡立て不要の洗顔と、1秒のミスト。多忙なプロフェッショナルへ贈る、論理的スキンケア・ワークフロー。
「あなたの朝」という主語が、訪問者を即座に主人公にする。さらに「まだ無駄がある」という指摘は、改善余地の存在を示す問いかけだ。「そうかもしれない」と感じた訪問者は、次のセクションへ進む動機を持つ。
CTA:
「まずは60秒の体験から(初回限定スターターセットを見る)」
CTAのコピーは変更なし。「60秒の体験」という表現が、製品の世界観とCTAを自然につないでいる。
→ 次セクションへの引力:「あなたの朝に無駄がある、とはどういうことか?」という問いを残して次へ。
第2セクション:共感と課題の定義(Problem & Agitation)
狙い:「自分の不満」を言語化し、現状の非効率を「仕事の敵」として定義する
設計の核心:ビランを「仕事の文脈」で語る
このセクションで最も重要なのは、ビランの言語化だ。LOGICのビランは「スキンケアの面倒さ」だが、それを美容の文脈で語ってはいけない。仕事の敵として定義する。
【修正前】
「スキンケアは重要だと分かっている。しかし、朝の貴重な時間を奪われるのは不本意だ。」
方向性は正しい。しかし「不本意だ」という表現が弱い。ターゲットが実際に感じている摩擦をもっと具体的に言語化する。
【修正後】
「スキンケアは重要だと分かっている。 でも正直に言えば、朝の洗面台で迷っている時間が、一番無駄だと思っている。」ベタつく。工程が多い。何を選べばいいか分からない。 その「小さな摩擦」が、あなたの集中力を削いでいませんか?スキンケアが面倒なのではない。非効率な設計が、面倒にしているだけだ。
最後の一文が重要だ。「面倒なのは製品のせいではなく、設計の問題だ」という視点転換が、LOGICの解決策への期待を生む。
→ 次セクションへの引力:「では、効率的に設計されたスキンケアとはどういうものか?」
第3セクション:解決策の提示(Solution)
狙い:「世界観」ではなく「合理的な仕組み」を売る
「ワークフロー」として提示する
【修正・強化】
タイトル:最小の労力で、最大の清潔感を。LOGIC 2-STEP WORKFLOW.これはスキンケアではない。朝のパフォーマンスを最大化するための、2ステップのワークフローだ。
Step 1(洗顔):泡立てる時間はゼロへ。 クレイ配合の濃密泡が、瞬時に皮脂と古い角質を吸着。手を動かす時間は、15秒。
Step 2(ミスト):手で塗る手間すらカット。 微細ミストが1秒で顔全体を包み込む。ベタつかないから、すぐにPCを触れる。仕事の戦場にふさわしい、引き締まった肌へ。合計60秒。これが、LOGICが設計した「朝のワークフロー」だ。
「ベタつかないから、すぐにPCを触れる」という具体的なベネフィットが、このセクションの鍵だ。仕事の文脈に製品を完全に接続している。
→ 次セクションへの引力:「なぜ60秒で本当に効果が出るのか?」
第4セクション:論理的な裏付け(Reason / Evidence)
狙い:男性特有の「納得感」を醸成する
「なぜ効くか」を仕事の言語で説明する
このセクションは元の設計の方向性が正しい。成分・技術・香りの効能を論理的に説明する。ただし、説明の軸を「美容効果」ではなく「仕事のパフォーマンス維持」に統一する。
噴霧技術:1滴のムダもなく、均一に。 マイクロミストは、手塗りでは届かない角質層まで浸透※させるよう設計されている。職人の精度で設計された噴霧ノズルが、毎朝同じ品質を再現する。(※角質層まで)
成分の最適化:男性の肌に特化した処方。 忙しい男性の肌荒れ・テカリ・乾燥を防ぐ成分設計。「なんとなく良さそう」ではなく、ターゲットの肌課題から逆算して配合している。
香りの設計:仕事モードへのスイッチ。 精油ベース(ヒノキ系)の香りは、「リフレッシュ」という感覚的な体験価値を持つ。60秒のルーティンが、単なる洗顔ではなく「今日も自分を整えた」という自己肯定感の儀式になる。
→ 次セクションへの引力:「実際に使っている人は、どんな変化を体験しているか?」
第5セクション:自分事化の強化(Personalization / UGC)
狙い:創業者ではなく「自分に近いユーザー」の声で安心させる
職業別UGCの設計
元の設計にあった職業別UGCの方向性は正しい。ここに「変化の物語」を加える。使用感だけのレビューではなく、「使う前の自分」と「使った後の自分」の差分が語られているUGCを優先して掲載する。
エンジニア・32歳: 「スキンケアが続いたことが一度もなかった。これは3ヶ月続いている。コードを書く前のリセットになってる。」
営業・28歳: 「大切な商談の前、トイレで60秒。ベタつかないから、すぐに名刺を出せる。清潔感のリスク管理が変わった。」
経営者・41歳: 「出張先でも同じルーティンが維持できる。スプレー缶だから荷物にならない。パフォーマンスのブレがなくなった。」
3つのUGCはすべて「Before→After」の構造になっている。「続かなかった→続いている」「リスクがあった→管理できた」「ブレがあった→なくなった」という変化の物語が、読者の自己同一化を促す。
→ 次セクションへの引力:「自分も始めるとしたら、何から?」
第6セクション:オファー設計(Offer)
狙い:価格ではなく「判断コストの削減」で価値を提示する
コスパ訴求からの脱却
【修正前】
「1日わずか88円の投資。」
これはターゲット設定と矛盾する。「パフォーマンスを最大化するプロフェッショナル」は、価格より時間とリスクで意思決定する。コスパ訴求は、ターゲットを「コスパを重視する消費者」に引き下げてしまう。
【修正後】
「毎朝の『何を使えばいいか分からない』という判断コストを、ゼロにする。」定期コースなら、次に何を買うかを考える必要がない。1〜3ヶ月でサイクルの変更も可能。あなたの朝から、ひとつの迷いを消す。
「判断コストの削減」という価値提示が、ターゲットの意思決定軸に合致する。価格の話は一切しない。
→ 次セクションへの引力:「始めるなら今、どうすればいいか?」
第7セクション:クロージング(CTA)
狙い:迷いをゼロにして、最初のアクションを促す
コピーの最終調整
【修正前】
「完璧な準備が、最高の結果を生む。あなたの朝を、論理的にアップデートしよう。」
方向性は正しい。「論理的にアップデート」というLOGICらしい言葉も活きている。ここに「リスクゼロで始められる」という安心感を加える。
【修正後】
「完璧な準備が、最高の結果を生む。 まず60日間、あなたの朝を論理的にアップデートしてみてほしい。 変化を感じなければ、やめればいい。でも、ほとんどの人は続けている。」
「60日間試す」という時間軸の提示が、「失敗のリスク」を下げる。「ほとんどの人は続けている」という一文が、社会証明として機能する。
ボタン:
「最短翌日お届け。スターターセットで60日間を始める」
設計全体の振り返り:何を変えたか
改めて、今回の再設計で変えたポイントを整理する。
(変更点)FVの主語
(修正前)ブランドが語る
(修正後)「あなたの朝」が主語
(変更点)ビランの文脈
(修正前)美容の不便さ
(修正後)仕事の集中力を削ぐ敵
(変更点)オファーの軸
(修正前)コスパ(1日88円)
(修正後)判断コストの削減
(変更点)UGCの構造
(修正前)使用感レビュー
(修正後)Before→Afterの変化の物語
(変更点)CTAの設計
(修正前)購入を促す
(修正後)60日間のコミットを促す
(変更点)セクション接続
(修正前)各セクションが独立
(修正後)次を読む動機を末尾に設計
変えなかった強み
「60秒ワークフロー」というコンセプト
2ステップという製品設計の合理性
職業別ペルソナによる自己同一化設計
仕事のパフォーマンスという文脈設定
まとめ:LP設計は「感情の流れ」から始める
LP設計の出発点は、コピーでもビジュアルでもない。
「訪問者の感情が、どの順番でどう動くか」という流れの設計だ。
この流れを先に決めてから、各セクションのコピーとビジュアルを当てはめていく。LOGICのように優れたナラティブを持つブランドでも、感情の流れが設計されていなければ、顧客には届かない。
設計と実装は別のスキルだ。そしてLP改善は、デザインの話でも文章の話でもなく、顧客の感情設計の話だ。
あなたのLPの「感情の流れ」は、設計されていますか?
「CVRが伸びない原因が、設計なのか表現なのか判断できない」 「ブランドの強みはあるのに、LPに活かしきれていない」
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