AIを並列で走らせると「どれが何やってたっけ」になる。Kiro 1.0.288のセッション整理が地味に効く
Kiro IDE 1.0.288 の話、前回・前々回は Powers が Agent Plugin 形式になった件を書きました。社内ルールもMCP設定も1フォルダで配れるようになった、という配布側の話ですね。
ただ、このバージョンにはもう一つ、地味だけど自分にとってはこっちの方が刺さった変更が入っています。Agent Focus Mode のセッション周りです。
正直、Powers の話に比べると changelog では脇役の扱いなんですが、AIに複数の仕事を同時にやらせるようになった人ほど効いてくる変更だと思ったので、今日はこっちを書きます。
並列で走らせた瞬間に始まる「行方不明問題」
Agent Focus Mode は、公式ドキュメントによると「チャットが主役で、コードエディタが脇役」というレイアウトのモードです。左にセッション一覧、真ん中にチャット、右に spec や diff が出る。コードを自分で書くというより、AIに指示を出して結果をレビューする使い方を前提にした画面ですね。
ここで効いてくるのが複数セッションの並列実行です。公式ドキュメントによると、セッションはワークスペースごとにグループ化されて左パネルに並び、それぞれに状態表示が付きます。
回転中:エージェントが作業している
警告:こちらの入力待ち(ツール承認や確認)
一時停止:アイドル状態で、次のメッセージ待ち
この「警告」が出ているセッションを拾い上げる、という運用ができるのはありがたい。ツール承認を待って止まっているAIって、放置すると本当にそのまま何時間も止まってますからね。
ただ、ここまでは前からあった機能です。問題は、セッションが増えたときに一覧が流れていくこと。
業務ツールを触っていると、「本命の改修を1つ長時間走らせつつ、その横で細かい確認を何本か回す」みたいな使い方になりがちです。#14 で書いた実装フェーズなんかは特にそうで、長いタスクを回している間に手が空くので、つい別の相談を始めてしまう。すると本命のセッションが下の方に押し流されて、探すのに毎回スクロールする羽目になります。
ピン留めで「本命」を固定できるようになった
1.0.288 で入ったのが Pin Session です。公式ドキュメントによると、ピン留めしたセッションはそのセクションの先頭に固定され、他のセッションが増えても位置が動かない。解除すれば元の並び順に戻ります。
たったそれだけなんですが、「長時間走らせている本命を常に1クリックで開ける」というのは、並列で回す前提だとかなり違います。ブラウザのタブ固定と同じ発想ですね。
地味な機能ほど、実際の運用では効くというのは Hooks のときにも感じたことでした。
IDEで始めた会話を、そのままCLIに持っていける
もう一つ、個人的に「お、これは」と思ったのが Open with Kiro CLI です。
公式ドキュメントによると、セッションを選んで Open with Kiro CLI を実行すると、その会話がターミナルウィンドウで開いて、CLIから続きを指示できるようになります。IDEで始めた会話の文脈を持ったまま、CLI に移れるということですね。
うちの環境だと、この線は太くなりそうだなと思っています。設計の相談やspecを固めるところはIDEの画面が見やすいけれど、実際にファイルをまとめて動かしたりコマンドを叩いたりする段になるとCLIの方が速い。今までは「IDEで詰めた話をCLIにもう一度説明し直す」みたいな二度手間が発生していました。
なお、Agent Focus Mode 側にはまだできないこともはっきり書かれています。公式ドキュメントによると、設定、Powers とスキル、MCPサーバの管理、ターミナル、gitの本格的な操作、ファイルの直接編集は、従来のIDEビューに戻る必要があるとのこと。右上のボタンで行き来できて、セッションは両方のビューで引き継がれます。
「全部この画面で完結する」わけではないので、そこは期待しすぎない方がよさそうです。
アップデート通知がセッションパネルに出るようになった
これは50人に配った側としてありがたい変更でした。
公式ドキュメントによると、新しいバージョンが出るとセッションパネルの下部に更新の行が表示されるようになり、設定ペインには Check for Updates ボタンが付きました。
前に社内の棚卸しをしたとき、バージョンがバラバラで「その機能、あなたのKiroにはまだ無いです」という会話が何度も発生しました。更新に気づく導線が画面の中にあるかどうかは、配る側にとっては地味に大きい。全員が changelog を毎日見に行くわけがないので。
changelog によると、このバージョンではセッションの一括移行も入っているようです。手元でどう動くかはこれから確認して、また書きます。
まとめ
1.0.288、Powers の Agent Plugin 対応が目玉として語られがちですが、セッション側にも実務で効く変更が入っていました。
Pin Session:長時間走らせている本命を先頭に固定できる
Open with Kiro CLI:IDEの会話を文脈ごとCLIに持っていける
更新行 / Check for Updates:バージョンのばらつきに気づける導線が画面内にできた
ただし Agent Focus Mode は万能ではなく、設定・MCP管理・ターミナル・git・直接編集はIDEビューに戻る必要がある
こうやって並べてみると、どれも「AIに賢くなってもらう」機能ではなくて、人間側が全体を見失わないための機能なんですよね。
この連載でずっと書いてきた「AIに全部やらせない」というのは、要するに人間がハンドルを握り続けるという話でした。並列でAIを走らせられるようになった今は、それが「どのセッションが何をしているか把握し続ける」という形に変わってきているのかもしれません。
ピン留めみたいな地味な機能に安心してしまうあたり、自分もだいぶ実務寄りになったなと思います。
それでは、また次の記事で。
