バキ童ぐんぴぃがブックオフ日本1位をとった経営戦略
「エッチな本を置きたい」という一言が、社内で大暴挙と言われながらも日本1位という結果を生んだ。これは単なる武勇伝じゃなくて、組織論として読める話だった。
> 熱量ある"わがまま"が、合理的な差別化になることがある。
この記事のポイント
・成人向けコンテンツ配置が集客の起爆剤になった
・反発を受けた施策が日本1位の売上を生んだ
・「好き」を権限と結びつけるとスタッフが動く
エッチな本の陳列が日本1位を生んだ、何が起きたか
登録者数 200万人超 を誇るYouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」で知られるお笑い芸人のぐんぴぃが、芸人になる前にブックオフの店長として勤務していた事実は、あまり知られていない。
ぐんぴぃは店長時代、成人向けコンテンツのオンライン陳列ならぬ「エッチな本を店頭に置く」という施策を強行した。社内では「大暴挙だ」と反発を受けたとされているが、その結果としてブックオフの店舗売上で日本1位を獲得した。現在この経緯は、人材育成の起業家・坂井風太との共著『理不尽仕事論』(文藝春秋、2025年4月刊)に収録されている。
なぜ「社内反発の施策」が日本1位を引き寄せたのか
ぐんぴぃが直面していた課題はシンプルだった。利益を上げるには客単価か来店頻度を上げるしかない。ブックオフというフォーマットの中で差別化できる余地は限られている。そこで彼が目をつけたのが、「他の店が置きたがらないけど需要は確実にある」成人向けコンテンツというカテゴリだった。
エッチな本を含む成人向けゾーンをあえて充実させるという判断は、チェーン店舗のオペレーション上「やらない理由」が山積みになる施策だ。本部との調整、スタッフの抵抗感、近隣への配慮。それでも彼が押し切ったのは、「他店がやらないからこそ差別化になる」という逆張りの論理だったと考えられる。
実際に影響を受けたのはスタッフだ。ぐんぴぃはこの店舗で、児童書が好きなスタッフに「児童書コーナーを全部任せる、売上が上がればWin-Win」という権限移譲をやっている。成人向けコンテンツの配置戦略も同様で、「好きなカテゴリに責任を持たせる」という構造で店全体が動いていた。スタッフが自分の担当コーナーに愛着を持つと、売場の質が上がる。それが来店客の体験を変える。
ブックオフというビジネスモデルの視点で見ると、中古本販売は仕入れ原価がほぼゼロに近く、カテゴリの目利きが利益率を左右する。成人向け中古コンテンツはデジタル化によって市場が縮小しているとされているが、逆にオンラインで入手しにくいニッチな物理在庫ほど店頭でのレア価値が高くなる。この構造を利用した施策だった可能性がある。
業界全体のトレンドで言えば、リユース市場は今なお成長している。一方で「何でも揃う」という総合性だけでは差別化できなくなってきた時代に、「あの店に行けばあのカテゴリが揃う」という専門性の方向に振り切る動きが強まっている。ぐんぴぃの施策は、その方向に早く動いた一例と見ることができる。
この「反発施策を押し切る構造」を組織論に読み替えると
私がコンサル時代に一番痛感したのは、「社内の反発が強い施策ほど差別化になりやすい」という逆説だった。大手メーカーの新規事業案件で、「それは弊社のブランドイメージに合わない」と潰れそうになったアイデアが、外部目線では明らかに勝ち筋だったことがある。社内で反発が強いということは、それだけ既存の文脈から外れているということ。つまり競合も「やらない理由」が山積みになっている領域だ。
ぐんぴぃの施策で私が注目したのは、「エッチな本を置く」という意思決定よりも、その前後のマネジメント設計だった。児童書コーナーを好きなスタッフに丸ごと委ねる、という権限移譲のやり方は、モチベーション管理の教科書に書いてある「自律性の付与」をそのままやっている。理論を知って実行したわけじゃなくて、「楽しく働いてもらうにはどうするか」という問いから自然に辿り着いたところが面白い。
もうひとつ気になるのは、ぐんぴぃ自身が「叱れるようになってしまった」と振り返っている部分だ。本人は「肩肘界隈だった」と笑い飛ばしているけど、これは組織の中で権限を持った瞬間に人がどう変容するかという問題と直結する。『理不尽仕事論』の目次にも「なぜ権力者ほど傲慢になっていくのか」という章がある。ぐんぴぃ自身がその問いを自分のエピソードとして持っているから、刊行から約2ヶ月で累計
1万部
を突破した書籍の説得力につながっているんだと私は見ている。
熱量ある「わがまま」が結果を出せるかどうかは、それを支える権限移譲の設計にかかっていた。
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