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クラシック音楽の世界からやってきた支配人が生み出す、面白いチラシと新しい働き方!吉祥寺シアターの裏側インタビュー

【10/10追記】東京都江東区亀戸の「ギャラリーおちらしさん」では、10~11月に吉祥寺シアターの仮チラシを大特集!! 直に面白さをドドンと体感いただけるチャンスです。ぜひご来場をお待ちしております!!


首都圏の演劇ファンを中心に、SNSでもたびたび注目の的となっているこちらのチラシ。皆さんはご存じでしょうか?

妖精大図鑑『かいだん』公演チラシ(2025年8月上演)

このチラシを作成しているのは「吉祥寺シアター」「武蔵野市民文化会館」等を運営する、武蔵野文化生涯学習事業団のスタッフの皆さん。一度見たら忘れられないダイナミックな謳い文句と文字組みは、出会う度に「この公演もまた吉祥寺シアターだ……」と必ずや思いを馳せてしまうパワーに溢れています。

そのほかにも、公式noteでのインタビューやレポート記事、WEBサイト「ぎゅぎゅっとアルテ」など、劇場を使う公演団体にも、足を運ぶ観客にもヒットする独自の運営方針を見せているのです。そんな劇場運営の心意気について、吉祥寺シアター支配人栗原一浩さん、職員の小西力矢さん田中遥さんにお話を伺います!


職員の“やりたいこと”が劇場のカラーになる

――本日はインタビューさせていただきありがとうございます。まずは支配人の栗原さんから、これまでの経歴をお聞かせください。

栗原: 二度目の支配人をしている栗原です。現在の吉祥寺シアターは2005年のオープンから数えるとだいたい4期目くらいに当たるんですが、2期目の頃にも支配人をしていました。僕はもともと武蔵野市民文化会館でクラシック音楽の仕事をしていて、兼務する形で支配人になったんです。実はそのころ、演劇が大嫌いで(笑)。

――いきなり予想外のお話でビックリしています(笑)。

栗原: 僕の大学時代には第三舞台などがむちゃくちゃ流行っていたんですが、周りに演劇の観方を強制されたり、否定されることが苦痛で馴染めなかったんです。けれど好き嫌いの前に、まずは観てみないことには始まらないと思って、吉祥寺シアターの支配人になった最初は年間800本の舞台を観ました。商業でも小劇場でも面白そうならとにかく何でも自分でチケットを取って、観て……。20年ほどやると結構分かるようになりましたね。そのあとに異動があり、改めて支配人になったのが2022年です。

――支配人や職員の皆さんは、どんなお仕事をされているのですか?

栗原: 「吉祥寺シアターを使いたい」と言ってくださる劇団と一緒に公演を作ったり、どうやったら知ってもらえるか、どうやったらチケットが売れるかを考えたりしています。僕の理想はヨーロッパのオペラハウスのような場所。オペラもバレエも演劇もオーケストラもあるから、皆が地元のちいさな劇場のことを好きだし、そこへ行って楽しんでいる。日本だと大きな劇場や有名な劇場へ、遠くから足を運ぶことが多いですよね。吉祥寺シアターは地域の人に楽しんでもらいつつ、演劇ファンが観ても悪くないかなと思えるような劇場にしたいんです。

――最近ますます吉祥寺シアターで上演されている作品が面白そうだと感じています。ラインアップも皆さんで決められているのでしょうか?

小西: 基本的には栗原さんがメインで決めていますね。新劇やすでに繋がりのある団体が多いので、支配人以外のメンバーが若手の団体、これから注目を浴びるような団体をピックアップしています。僕は元々「しあわせ学級崩壊」という劇団で脚本・演出・音楽をしていて、2023年4月から吉祥寺シアターの職員になりました。これでも栗原さんを除くと一番古いスタッフの一人です。業務の一環として「吉祥寺ファミリーシアター」などの創作を行ったり、劇場のキャンセルが出たときに「せっかくだから何か作って良いよ」と言ってもらって企画をやったり、結構変わった自由な活動をさせてもらっています。

吉祥寺ファミリーシアター2025『銀河鉄道の夜』チラシ(2025年8月上演)

田中: 私は昨年度まで3年ほど、武蔵野市民文化会館で音楽や寄席、ワールドミュージックなどの担当をしていました。学生時代から小劇場の制作をやっていて演劇のほうが好きだったので、栗原さんに拾ってもらったような形で今年度から吉祥寺シアターに勤めています。

――皆さん比較的新しく吉祥寺シアターの担当になられたんですね。

栗原: 今年度から夜間嘱託制度も導入して、新しく2名が働いています。普通、劇場は時間の制約がある仕事ですが、今後の少子高齢化を考えても、子育てしながら演劇ができる環境があった方がいい。夜は夜間勤務の人がカバーして、その他の職員は夕方早く帰ることもできるし、残りたければ開演時間まで付き合って19時ごろに帰ってもいい。そんなふうに一生働ける、演劇に関わり続けられる劇場にしたいんですよね。職務外で演劇に関わっている人でも休暇の範囲で兼ねられるならば、採用の際には特に問題にしていません。

小西: 栗原さんは相手がどんな人か一目でわかるらしく、僕も採用面接の際は栗原さんの一押しで入りました(笑)。

――それは人事採用において無敵の能力だと思います。

栗原: もちろんそれがすべてではないんですよ(笑)。物事はすべて人に始まって人に終わると思うし、人間はやりたいことをやれるのが一番だから、吉祥寺シアターでやりたいことがある人に働いてもらいたい。そして、どうしたら職員に楽しんで良い仕事をしてもらえるかということを常に考えて、幸福に働ける状態を作り出すことがとても重要だと思うんです。特に公共劇場はたとえどんなにチケットを売ったとしても、それがダイレクトにお給料に反映されるわけではないから、そうではないところにやりがいを見出すことが必要なんですよね。劇場本来の役割に付随するようなワークショップや企画は、そこで働いているスタッフが自由にやるのが良いんじゃないかと考えている。そのほうが地域の人や演劇が好きな人、いろんな人が見て面白い場所になるんじゃないでしょうか。

演劇を知らない人にも届けるには「連想」!?

――「吉祥寺シアターといえば、面白い仮チラシ」という方も多いかと思います。こちらも職員の皆さんによるお仕事なんですよね?

栗原: この仮チラシの始まりは、僕が文化会館で音楽の担当をしていたころになります。音楽や演劇のチラシってすでにアーティストや劇団を知っていることが前提になっていて、写真や名前じゃ誰のどんなイベントなのか分からないこともあるじゃないですか。なので、チラシを見れば1枚で全部が分かるようにしたいと考えていました。そこで文章をワープロで打って、輪転機で刷ったのが最初です。近所の蕎麦屋のおじちゃんがこの仮チラシを見て、店を閉めた後にチケット代を握りしめて観に来てくれるのが理想ですね。今は僕がベタ打ちした原稿から、田中さんや小西さんにWordで文字組みをしてもらっています。

小西: 人によって打ち出したい内容や、スタイルが結構違うんです。栗原さんはよく作品や劇団の魅力を別の何かに例えていますね。

劇団チョコレートケーキ『ガマ』公演チラシ(2025年5~6月上演)

――劇団チョコレートケーキさんのチラシは、「2つ星イタリア料理店」。面白い文言です。

栗原: これはチョコレートケーキの制作の方とお話ししたことをヒントにしています。劇団内でどうやって芝居を作っていくかという話を聞いて、僕の知っているイタリアンレストランのエピソードに似ていると思い立ったんです。『ガマ』は沖縄戦の話ですが、ストーリーの内容を具体的に書くよりも、一個ひねって、さらにもう一個ひねって、核心的なことはほんのちょっとだけ入れる。そうして演劇を観たことがない人でも、面白そうだから観に行ってみようと思ってもらえるようにチラシを作っています。みんなが好きだし、興味があることなので、食べ物に例えることが多いです。

――ソムリエのようで素敵だと思います。

栗原: ワインとかチョコレートとか、特にちょっと高価なものに例えようとしていますね。劇団の格が落ちないようにというか……。要するにイメージを売っているんです。具体的な事実は、ちっちゃく2行ぐらいしか書かない。あとは自分の連想した、全然違うことが書いてあるという(笑)。

小西: もうひとつのスタイルは、これでもかと事実を詰め込むタイプです。スタイルによる違いを見比べてみると面白いですね。栗原さんの作った方は「黒トリュフのオムレツ」「コンドリューの白ワイン」というようなイメージが押し出されていて、もう一方は受賞歴などの具体的な事実がメインになっています。

左)栗原さんによる『エマニュエル・デスパックス ピアノ・リサイタル』公演チラシ
(2025年10月開催)
右)別の職員の方による『横坂源 無伴奏チェロ・リサイタル』公演チラシ
(2025年8月開催)

――並べてみると、本当に違いますね!

栗原: 僕も元々こういった事実を連ねるタイプで、右のチラシを作った弟子に当たる職員にそう教えていたんです。孫弟子の田中さんもこのタイプですね。皆同じじゃつまらないと思って、僕は吉祥寺シアターに戻ってきたときからイメージで伝えるタイプにあえて変えました。

田中: 私は、事実をとにかくたくさん調べなさいということと、事実を並べる中にも何か面白いことを紛れさせるということを教わりました。

――これだけ情報が詰まっていると、文字組みもかなり大変かと思うのですが、どのように作っているんですか?

田中: よく栗原さんから上手だと言われるんですが、私は結構フィーリングなんです。過去のチラシをたくさん見て学んだので、自然とインプットされているのかもしれません。フォントはあまり使わず3種類ぐらいで、大きさを変えたり、長体をかけて文字を細長くしたり……。上部が一番見られるところなので、そこがメインのコピー。あとは真ん中・下部を目立たせるというように、形式はどのチラシも統一されているかなと思います。

――吉祥寺シアターさんのチラシにはノリノリで勧めてもらっているような、リズムとパッションを感じます!

栗原: 読んでいる人に訴えかけるように文字を置くことは、すごく重要だと思っています。お客さんがチラシを見るのは一瞬ですよね。 ピッと見た瞬間に面白くなかったらそれまでなので、メインのコピーや文字に力がないといけない。大変優秀な文字組みですよ。いろいろと工夫してくれています。

これからもより公演団体と協働する劇場に

――半年ほど前から「ぎゅぎゅっとアルテ」というWEBサイトもスタートしていますよね? 武蔵境の掲示板でチラシを見てからずっと気になっていました。

WEBサイト「ぎゅぎゅっとアルテ」チラシ

栗原: 「ぎゅぎゅっとアルテ」は、田中さんが中心になって作っているサイトです。2022年に生まれた武蔵野文化生涯学習事業団は、吉祥寺シアターなどを運営する武蔵野文化事業団と、市内のスポーツ施設などを運営する武蔵野生涯学習振興事業団が合併する形で生まれました。その際に問題となったのが、リニューアルしたサイトの見づらさです。スポーツ施設などは無料で参加できる事業が多い一方、演劇や音楽はチケット価格が1万円ほどの公演もある。これが混在しているとチケットを売ることに特化できないので、サイトの見方が分からないとたくさんお声をいただいたほか、実際にチケットの売り上げが下がってしまったんですね。そこでチケット販売や友の会のことが分かりやすいWEBサイトを、若い職員たちで作ってもらうことにしました。

WEBサイト「ぎゅぎゅっとアルテ」

――チケット販売専用の電話番号がスクロールしても常に表示されているほか、発売日も分かりやすく明示されていますよね。すみずみまでとても気持ちよく利用できるサイトだと感じています。

田中: 今の事業団のサイトは施設紹介がメインなので、各公演のことは詳細のページに一度飛ばないと内容が分からないんです。「ぎゅぎゅっとアルテ」では最初のページからどんな公演が予定されているのか、一目で見えるようにしました。他の劇場さんのサイトも参考に、チケット購入ボタンがすぐに押せたり、このページを見たいなと思ってもらえる遊び心を出したり、そんなところも心掛けて作っています。サイト上の配置なども若手の職員6人で考えて作っているので、使いやすいと言っていただけるとすごく嬉しいです! スマホでの表示も、これからこだわっていきたいと思っています。

――チラシやWEBサイトのわかりやすさの一方で、noteでは公演や団体をさらに掘り下げる活動もされていますよね。

栗原: まだ道半ばではあるんですが、演劇のコアファンの方々も大事にするために力を入れているのがnoteです。これは小西さんの提案がスタートですね。

小西: 自分自身が若手劇団の主宰として活動していたこともあり、そういった人たちのサポートがしたいと思ったのが吉祥寺シアターに入ったきっかけでした。劇場職員もクリエーションメンバーの一員として劇団を支えるような、そんな関係のあり方を作りたかったんです。そこで稽古場に何度も足を運んでインタビューをして記事を書いたり、動画にしたり、そうして劇場も作品を一緒に作っているんだという感覚を共有することを目指しています。今はこの仕事をするには知識が足りないと思っているので、とにかくたくさん演劇を観るようにもしていますね。

――公演団体の方々にとっては、本当に心強いサポートだと思います。

栗原: 数年前に比べて職員の人数がやっと揃うようになってきたので、今後どうなっていくだろうという思いもあります。やはり事業をやりつつ、劇団のサポートをしていくには時間や手間が必要ですからね。「吉祥寺シアターを使って良かった」「また公演をしに戻って来よう」と思ってもらいたいし、そういう方々とこれからも仕事をしていきたい。だから劇団と関わって僕たちも一生懸命応援して、一緒になって作品を作り、チケットを売っていくことが必要だと思っています。劇場をもっと良くするためには吉祥寺シアターという船を誰が漕ぐのかが重要で、つまり働いている人の手にかかっているんですよね。田中さんをはじめこの春から働き始めた職員もいるから、ここからまた皆のやりたいことが沢山できるようになったらいいんじゃないでしょうか!

――貴重なお話をありがとうございました。これからの吉祥寺シアターがますます楽しみになりました!

インタビュー/成島秀和(おちらしさんスタッフ)
インタビュー・文/清水美里(おちらしさんスタッフ)

- 吉祥寺シアター 今後の公演情報 -

妖精大図鑑『かいだん』
エキセントリックセンチメンタル・妖精大図鑑が、真夏にお送りする怪奇階段物語!?

日程

2025年8月1日(金)~3日(日)

チケット
<武蔵野文化生涯学習事業団取り扱い>
一般自由席 5,000円/アルテ友の会自由席(前売のみ) 4,500円
学生自由席 3,800円
当日券 +500円(現金のみ)

★特別特典★
武蔵野文化生涯学習事業団でチケットをご購入いただいた方に、チラシ表面のデザインを使用したポストカードプレゼント!

【公演の詳細・チケットのご予約はこちら】

Pカンパニー『5月35日』
現実世界の不条理を上演するPカンパニーの意欲作!

日程

2025年8月13日(水)~18日(月)

チケット
<全席指定>
前売・当日 一般6,600円/アルテ友の会(前売のみ)6,000円
シニア割(65歳以上) 5,500円/アルテ友の会(前売のみ)5,000円
U25割(25歳以下) 3,300円/アルテ友の会(前売のみ)3,000円

【公演の詳細・チケットのご予約はこちら】

吉祥寺ファミリーシアター2025『銀河鉄道の夜』
世代を超えて愛され続ける、宮沢賢治の不朽の名作!

日程

2025年8月23日(土)~24日(日)

チケット
<全席指定>
大人 2,000円/子ども(中学生以下) 1,000円
※未就学児は膝上鑑賞無料。お席が必要な場合は子ども料金となります。

★託児サービスあり★
ご希望の方はチケットのご予約後、公演1週間前までに吉祥寺シアターまでお電話ください。

【公演の詳細・チケットのご予約はこちら】

『めにみえない みみにしたい』
マームとジプシーの藤田貴大による、子どもから大人まで一緒に楽しむ演劇が、ついに吉祥寺シアターへ!

日程

2025年8月29日(金)~31日(日)

チケット
<全席自由>
おとな(19歳以上)3,000円
こども(2歳以上)1,000円

「はたらく劇場 探検隊」in 吉祥寺シアター
8月29日(金)15:00回の公演チケットを購入した方を対象に、おしごと体験もできるバックステージツアーを開催!
※要お申し込み・小学生対象です。

【公演の詳細・チケットのご予約はこちら】


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