無機質な夜
──笑顔を向けてしまった私
— episode by Tatsuno —
「エッチな写メおくって」
私たちは、
恋人でもなければ、友達でもない。
こんなLINEは来るけれど、
セフレですら、なかった。
たった、一度きり。
少し粗末なものを
出し入れしただけの関係だ。
──それも、あの日限りで
終わるはずだった。
「……やだ、ちょっと待って」
少し幼い顔立ち。
小動物みたいな瞳。
カッコイイ、というより
どうしようもなく、
私の好みだった。
そんな、好みの顔が目の前で
アンドロイドへと変わる。
目の前にいる無機質な男は、
ベッドの下から
誰に使ったかわからない振動物体を取り出し、
無言のまま、
それを私に押し当てた。
私の声は、届かない。
息を殺して、ただ耐えるしかなかった。
友達に連れられて行った、
賑やかな飲みの場。
その中で、
1番タイプだった人。
無邪気に笑う、
優しい笑顔に惹かれてしまった。
「一緒に帰ろう」
誘われたのに、その夜は一緒にいられなくて。
何度か連絡を重ね、
2度目の夜に、
私は彼のマンションへと手を引かれた。
タワマン。
フェラーリ。
バレンシアガ。
お金の匂いに惹かれたわけじゃない。
そう言い聞かせないと、
私はあの夜を、
受け入れられなかった。
詳しいことはよく知らない。
「いくつもの会社を経営してる」
と言っていた。
優しい笑顔。
好みの顔。関西訛りのイントネーション。
好きかも、という感情にただ従っただけ。
なのに、
目の前のこの男は、一体誰?
終始、目は合わず、
言葉もなく。
アンドロイドは、
人体実験の末に果てた。
最低だと、わかっている。
それでも、
期待してしまう自分が、まだいる。
「エッチな写メおくって」
私は今日も、
彼に指定されるまま、
レンズ越しに笑顔を向ける。
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この夜に、心が少し揺れたなら。
その揺れを、ここに置いていってください。