【レビュー】エントリーの概念を粉砕する異端児。FIIO「M21」が魅せる、デスクトップ級の駆動力と静寂
DAP(デジタルオーディオプレーヤー)市場は年々インフレを続けており、ミドルクラスでも10万円超えが当たり前になりつつあります。しかし、そんな「沼」の常識に真っ向から冷や水を浴びせる、とんでもない価格破壊モデルが登場しました。それがFIIOの「M21」です。
約5万円台というエントリークラスの価格設定でありながら、その実態は「ポータブルの皮を被ったデスクトップオーディオ」と言っても過言ではありません。このDAPが手持ちの機材にどのような相乗効果をもたらすのか、ハードウェアとしての魅力をじっくりとレビューしていきます。
■ 1. クアッドDAC搭載。極めてニュートラルで広大なサウンド
M21の心臓部には、シーラス・ロジック社の高品位DACチップ「CS43198」がなんと4基(クアッドDAC)も搭載されています。
音の傾向は非常にニュートラルで、特定の帯域を過剰に誇張するような嫌らしさがありません。特筆すべきは、ノイズフロアの低さからくる「無音空間の静寂」と、そこから立ち上がる音の立体感です。全体的にクセがなく、見通しの良い広大な音場を持っているため、長時間のリスニングでも全く聴き疲れしない上質なサウンドバランスに仕上がっています。

■ 2. 最大の武器「デスクトップモード」と暴力的な駆動力
個人的に、このM21を単なるDAPの枠から完全に逸脱させていると感じるのが、本体底面に備わった「2つのType-Cポート」の存在です。
一つは通常のデータ通信・充電用ですが、もう一つは「独立給電用」のポートになっています。ここに外部電源を接続して「デスクトップモード」をオンにすると、内蔵バッテリーを完全にバイパスしてシステムを駆動させることができます。
これにより、過充電によるバッテリーの劣化を完全に防げるだけでなく、4.4mmバランス接続時で最大950mW(32Ω)という、ポータブル機材としては規格外の「スーパーハイゲインモード」が解放されます。
自宅のデスクで腰を据えて音楽を聴く際、要求電力が高いイヤホンやヘッドホンを繋いでも、音が痩せることなく完璧な制動力で鳴らし切ってくれます。まさに、デスクトップオーディオ環境の中核を担える強烈なポテンシャルです。

■ 3. Snapdragon 680がもたらす、スマホライクなサクサク操作感
どれだけ高音質でも、UI(ユーザーインターフェース)の動きがもっさりしていては使う気が失せてしまいますが、M21はその点も抜かりありません。
SoCに「Snapdragon 680」を採用しており、Android OSの動作が非常に滑らかです。各種ストリーミングアプリでの楽曲検索や、ローカルに保存した重いハイレゾ音源のブラウジングでも、もたつくことは一切ありません。「サクサク動く」という、現代のDAPにおいて最もストレスフリーであるべき部分をきっちりとクリアしています。

■ 4. ビルドクオリティと「持ち運べる絶妙なサイズ感」
筐体はフルアルミニウム合金製で、背面にはサラサラとした手触りのAGフロストガラスがあしらわれており、手にした時の剛性感と高級感はとても5万円台のそれではありません。
サイズ感は、昨今の巨大化するハイエンドDAPに比べると程よい厚みと重さ(約193g)に収まっています。「少し特別な機材を持ち運んでいる」という所有欲を満たしつつ、ズボンのポケットや小さなカバンにも問題なく収まる、ポータブル機としての絶妙なラインを突いています。
(※ちなみに、付属のケースが昔懐かしい「カセットテープ風」のギミックになっており、所有者をニヤリとさせる遊び心も隠されています)
■ 5. 結論:「ポータブル」と「据え置き」を繋ぐマスターピース
FIIO M21は、価格を疑うほどのビルドクオリティと、クアッドDACによる高解像度サウンド、そして何より「外部給電によるデスクトップ機化」という変態的(褒め言葉)なギミックを詰め込んだ、隙のないDAPです。
CS43198×4基が描き出す、ノイズレスで広大な音場
4.4mmバランス出力のポテンシャルを極限まで引き出すデスクトップモード
据え置き運用時のバッテリー劣化を防ぐ独立給電ポート
「外出先では身軽な高音質ポータブルとして、帰宅後はデスクのメインシステムとして」という、シームレスなリスニング環境を構築したいオーディオファンにとって、これ以上ない最適解となります。間違いなく、この価格帯における新たなベンチマーク(基準)となる名機の誕生です。
