母の入院~(8)紙コップと薬の配列
高齢の母が退院した。病院からは、一包化された薬が30日分。日付と服用タイミングが印刷されている。整然としているようでいて、実際に手に取ると、その量にたじろぐ。疼痛の薬、その副作用を抑える薬、血圧、コレステロール、血液をさらさらにする薬。1日あたり10種類近くを、食前・食後に分けて服用する。
認知力がしっかりしている人でも、混乱しそうな構成だった。そして、最も飲み忘れてほしくない認知症の薬が、母の手元に残っていた。本人は「薬は忘れるくらいがいい」と笑った。確かに、元気で症状が出なくなったなら、それも一理ある。だが、持病があり、認知力が低下している人にとっては、そうもいかない。
中には、急にやめると症状が悪化する薬もある。医師と相談しながら、少しずつ減らすべきものだ。勝手にやめるのは危うい。
市販のピルケースやピルポケットも検討した。だが、錠剤、カプセル、散剤が10種類近くあると、容量が足りない。複数の病院に通っているため、処方のタイミングもずれる。一包化も完全にはできない。
そこで、紙コップを使ってみることにした。これは母のためというより、自分の確認のためだった。紙コップに「朝食前」「夕食後」「寝る前」などと書いた紙を立札のように入れて、7日分を用意する。そして、1日ごとに母に渡す。
最初はうまくいった。だが、テーブルの上がごちゃついてくると、母は空いたスペースを作るために、飲んでいない薬の紙コップに別の紙コップを重ねてしまう。結果、飲み忘れが起きる。さらに、飲み終えた薬のパッケージを紙コップに戻す癖があり、飲んだかどうかの判別がつかなくなる。
そこで、配列の工夫を試みた。空の紙コップを6つ、マスキングテープで連結する。朝昼晩の食前・食後など、6区分のためだ。その空のコップに、薬の入った紙コップを重ねる。上にある紙コップを取って飲み、飲み終えたら空のパッケージは捨ててもらい、元に戻す。これで、配列が崩れず、薬の有無で服薬状況が一目でわかる。
今のところ、この方法でうまくいっている。紙コップの軽さと柔軟性が、意外にもこの用途に適していた。生活の中の小さな実験が、ひとつの安定をもたらしてくれた。
