見出し画像

古い時代の記録



 子どもの頃から、三国志演義などは好きだった。このごろは、三国志以外の時代の古代中国の正史を読んでいる。もちろん、翻訳されたものだが、小説になっているものと違って、落ちも何もないので、とても生々しい。

 辺境の賊の討伐に行った将軍が敗れて落馬し、殺されて食われた、などという記述もあった。
 
 三国志演義を子どもの時に読んでいた時に、勇壮なエピソードに心を躍らせもしていたが「なんでこんなに愚かな事が起こるんだろう」と、たびたび思っていた。


 
 権限を持ったら、素朴で賢い人柄だったのが、贅沢をしだして余計なものを次々と建築し、自分の気に入る人だけと徒党を組んで引き立てたり。

 人々が不満を持っていて危険な状況なのに、上の人が正しい報告を嫌がり、下も報告しなくなっていったり(国が滅ぶパターン)。

 行き過ぎた処罰を行っても平気になっていったり。

 そこで戦争を起こしたらまずいだろという所で戦争を起こしたり。

 年齢を重ねると、私は権力を持った事が無く誠に非力な人間だが、対等な人間関係が無いと、感覚として他人のことが(他人だけでなく、自分の力量自体も)肌でわからなくなることがわかった。堕落するのは、頭や体の良し悪しだけではないのだ。

 時代も国も違うが、仏陀が自分の生き方と王宮の外のあまりの違いに疑問を感じて、自分で王族の身分を捨てて、外に出て行って僧侶として歩み出したというのは、驚嘆に値する。だからこそ、精神世界の偉大な開祖の一人なのかもしれないが。

 話がずれた。

 災害や飢饉、疫病などで社会不安が起きていて、今までのやり方を変えられず、あるいは、このまま死ぬくらいだったらいっそのこと……と乱暴な考えに突き動かされるように、それを選んでしまったのかなあとか。

 「乱を起こすのは一人でも、塗炭の苦しみを受けるのは無数の民である」という言葉があった。「塗炭の苦しみ」という言葉を私は知らなかったので、調べてみた。泥水に漬けられたり、炭火で焼かれるような苦しみ、ということだそうだ……

 歴史における、戦争や変事は、庶民にとっては、命に関わる悲劇、というかその人の子孫にまで影響を与えることで、間違ってほしくないところだが、それを変える事がとてつもなく難しい。そういうことを、今の政治を見ていても、肌で感じる。
 流されず自分を変えつつバランスを取るということが、いかに難しい事か。

 悲惨な事ばかりを書いてしまったが、歴史書に書かれている話は、そういう内容ばかりではない。

 身分に関わらず、能力のある者は取り立てた、とか。身分の高い低いに関わらず、罪を犯した者は処罰した、とか。

 皇帝が道に外れた事をしていた時に、諫言して「もし、私の言う事を参考にしていただければ、処刑されても本望です」と言う者がいたり。そこで、殺害されたりもするのだが、それを肝に銘じて、行いを変える権力者もいたりとか。

 とても単純だけど、これがなかなか現代でも、できないというのを大人になって知った。

 飢饉が起きた時に、備蓄を放出して民衆を救ったとか。1800年前くらい前でも、災害が起きた時に、そういう事をやっているのだ。とても高度な現場判断だ。子どもの頃、読んだら「へえ、かっこいい」としか思わないが、やったことが理解されずに、懲罰を受ける可能性もあるし、それが嫌で反対した仲間も絶対いたはずなのだ。
 それでも、敢えてやった。そして、もちろん、その判断のタイミングが、合わなければ、予算や国家経営の面で存続の危機になるほどの、大被害を与えてしまう可能性もある。

 ただただ、言葉だけのものだが、自分の少ない体験してきた事で、できてきた感覚の持ち合わせで、過去の記録を読み、心が動くのだ。合っているかどうかはともかく、それで想像する。



 心が動かない話というのは、眠くなる。心が動くということは、まだ、自分には何かを感じる力と、感覚の持ち合わせが残っていたということだ。

 それは作品を作る、あるいは人の作品を読むということにも生きるかもしれない。
 あるいは、今、自分が出会っている事態に対してどう生きるか、ということに、時代もテクノロジーもまるっきり違う時代なのだが、参考になるような気がする。

 突然話が変わるが、暗殺されたイスラエルのラビン首相も、強硬な人だったそうだ。しかし、ある日「歴史の勉強をしよう」と言い出し歴史学者を招いて「暴動の歴史」の勉強を始めたという。
 そして「武力だけでは無理なんだな」と言ったそうだ。そして、パレスチナとの和平の試みが始まった。
 残念なことに、彼の志は果たされず、さらに強硬な人たちが、台頭して、ますます事態は混迷してしまった。
 大きなうねりの中では、人が何かできることは少ないのかもしれない。
 それでも、歴史に学ぶ事は多い気がする。

全体の目次へ

いいなと思ったら応援しよう!