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真島昌利 魂の全曲レビュー

真島昌利が1989年〜1994年に発表したソロ作品の全曲レビュー


夏のぬけがら (1989)

アナログ盤、CD

 記念すべきソロデビュー作、「TRAIN-TRAIN」発表後の翌年にリリースされた作品 本作の一番の特徴は、アコースティックギターとピアノを基調としたノスタルジックな作風 エレキギターも殆ど使われておらずフォーキーで静かな世界観で、歌詞も叙情的かつ内面的な曲が多くブルーハーツとは詞曲ともに全く違う音楽性
 自分がこのアルバムに初めて出会ったのは中2の頃だったんだけど、初めて聴いたときは正直あんまり刺さらなかった(当時は初期ブルーハーツのようなストレートなパンク・ロックが大好きだったし、それを求めていたからかも) そこから何度も聴き重ねたらいつの間にか「夏のぬけがら」の持つ魔力に気づき、今ではブルーハーツのアルバムよりも聴く回数が多い作品
 毎年夏の終わりにこの作品を必ずヘビーローテーションするようにしています これまで何度も魂を揺さぶられてきた、自分にとっての永遠の名盤

■全曲感想
 M1 夏が来て僕等:繊細なアコースティックギターの音色が世界観を彩るフォークソング 小学生の夏の思い出を綴った歌詞は、まるでその光景が目に浮かぶように鮮明だし、何よりも純粋さに満ち溢れてる サビの最後の歌詞「成長のドアを足であけた」も好きだな、多感の時期を過ごすなかでの反抗心が見え隠れした名フレーズ

 M2 クレヨン:猛暑日の陽炎を揺蕩うようなサウンドと、擦りきれそうに歌うマーシーのギリギリの歌声の相性が抜群なフォークソング 思い通りの人生を歩むことへの憧れと現実とのギャップを表現した歌詞も凄い スピッツの草野マサムネさんも本曲をベタ褒めしてた 「クレヨン」はマーシーが歌うからこそ泣けるとのこと、とってもわかります

 M3 さよならビリー・ザ・キッド:アルバムのリード曲だと思う、哀愁漂うイントロのハーモニカの音色が美しいナンバー 大人になり結婚したことで反骨精神をなくしてしまった友達がテーマ、これが実話なのかはわからないが途轍もないリアリズムとセンチメンタルを感じる 個人的な解釈だけどこの曲の続編がM12「ルーレット」だと思っていて、友人との絶妙な距離感が好きだな

 M4 風のオートバイ:ソロ作品の曲で一番好きな曲です 美しいピアノと情熱的なボーカルに心奪われる、本アルバムで随一の熱さを有した壮大なバラード ドラマチックかつダイナミックな歌詞も圧倒的だし、一番の聴きどころはサビで登場するエレキギター 雷鳴のような音色は心の慟哭にも似ている 切なさと危うさの二面性を持った、隠れた大名曲
 あまりにも素晴らしい曲なので色んな人に聴いてほしいと思う反面、自分だけの曲にしたい気もする

 M5 小犬のプルー:カバー曲、調べてみると「みんなのうた」で歌われていたらしい 哀しげなピアノとフルートが世界観バッチリ、マーシーの曲ではないがアルバムの雰囲気に見事にマッチしてるし、「夏のぬけがら」の世界に必要不可欠な曲だと思う

 M6 地球の一番はげた場所:マーシーがリスペクトするシンガーソングライター友部正人さんの提供曲 レゲエ調のサウンドに載せた歌詞は「僕」と「君」の青く切ない青春の1ページを丁寧に表現してるし、5番終わりの転調は聴いてるこっちも夕闇の中に置き去りにされるような気持ちになるな 7分ある長い曲だけどダレることなく最後まで聴ける大好きな曲

 M7 オートバイ:バイク乗りにとっては絶対外せないナンバー M4「風のオートバイ」とは毛色が違う、静かな夜に似合う穏やかな曲 展開は少々単調気味だけどこの曲にはこのくらいチルなサウンドワークのほうが絶対似合ってる 街頭の少ない夜の田舎をバイクでトコトコ走りながら聴くのがおすすめ、浸れます

 M8 アンダルシアに憧れて:シングル曲 ほぼ同時期に近藤真彦もカバーし、以後のジャニーズグループのライブでも歌われているらしい有名曲 名曲がズラッと並んだ本作の中でもこの曲の完成度はずば抜けていると思う、イントロの情熱的なアコギの音色が聴こえてきたその瞬間からずっとマーシーのターン スペイン情緒漂うサウンドにマッチしたストーリー仕立ての歌詞も最高、まるで一本の短編映画を観ているようかのよう

 M9 花小金井ブレイクダウン:本作で一番暗い曲かも 激情的なハスキーボイスと雰囲気抜群のピアノがドラマチックなナンバー 歌詞はかなり難解ながらマーシーらしい言葉選びが冴え渡ってる もの悲しい余韻を残して終わるアウトロも完璧

 M10 カローラに乗って:色彩豊かなピアノと軽快なアコギが世界観を彩るポップチューン Aメロはゆったりした感じだけどサビでは一転して激しめになる曲展開も好き 晴れた日にドライブしながら聴くととっても気持ちいい

 M11 夕焼け多摩川:穏やかなピアノとカットギターのみで奏でられる情緒豊かなフォークバラード 壮大な多摩川とちっぽけな自分を対比したサビの歌詞は見事、最後のフレーズ「何も気にしないで」辺りで毎回泣きそうになる

 M12 ルーレット:「夏のぬけがら」のストーリーを締めくくるに相応しい名曲 晩夏の風のように吹き荒れるハーモニカは比較的明るめな音色ながらも哀愁を誘うし、友人への別れと応援の想いを綴った歌詞との相性も抜群 人生の転機や挑戦を「ゲーム」「ルーレット」と例える表現も好き 人との繋がりの大切さを教えてくれる「ルーレット」に出会えて良かったと心から思う

HAPPY SONGS (1991)

アナログ盤、CD

 2枚目のアルバム ブルーハーツの4th「BUST WASTE HIP」~5th「HIGH KICKS」の間にリリースされた作品 前作のセンチメンタルな雰囲気を若干残しつつ、よりポップに昇華し、更にジャズ・ボサノバ・ロカビリーなど多国籍なジャンルも織り交ぜた一作
 本作は歌詞がより独特になったと思う M2「砂丘」は韻を踏んだフレーズが耳に残るし、M1「オーロラの夜」やM8「サンフランシスコの夜はふけて」はダリ・ポールニューマン・バディホリーなど過去の表現者が多数登場 意外性のある言葉選びには何度聴いてもワクワクする
 前作「夏のぬけがら」は夏の終わりに似合う作品だったけど、本作は寒い日に似合う曲が何曲か収録されてて、モコモコしたサウンドメイキングも相まって、自分にとっては「冬の名盤」のイメージです (4thアルバム「人にはそれぞれ事情がある」は秋、3th「RAW LIFE」は消去法で春)

■全曲感想
 M1 オーロラの夜:シングル曲 暖かな白井さんのピアノの音色を軸とした、冬の夜に絶対聴きたい名曲 歌メロはポップでキャッチーなんだけど何度聴いても全然飽きない、ソロ作品で一番好きなメロディかも MVも美しい、今もめちゃカッコいいがブルーハーツ後期時代のマーシーはビジュアル面でも一際抜きんでていたと思う

 M2 砂丘:ブラスの音色が楽しいゴージャスなロック 韻を踏んだ歌詞は直接的な表現が多めながらもマーシーならではの言葉選びが冴え渡ってる いかすぜジョナサンっていう芸人が自身のYouTubeでも話してたけど、サビの「女」ってフレーズはちょっとドキッとする(令和の今だと物議を醸し出しそうだなって意味で)

 M3 休日の夢:お洒落なピアノとベースラインが印象的なボサノバ まったりしたバンドサウンドと軽やかなサックスの音色が心地いい一曲 アウトロはやや長めながらも各楽器の良さが存分に発揮されてて聴きどころ満載 こういう曲が3曲目という立ち位置にいるのも良い 前2曲がアッパーな歌だったこともあっていい感じにリラックスできるし、「HAPPY SONGS」がどういう作品なのかが伺える

 M4 朝:晴れた日の朝露のようなキーボードの音色が美しいスローなポップス 演奏はキーボードとアコギのみ、少ない音数で奏でるからこそマーシーの優しいボーカルがより強調されるし、メロディの美しさが活かされていると思う 歌詞も良い、Aメロ「ミルクの瓶の曲線に沿い光が転げて落ちていく」っていうフレーズは天才的だと思う
 余談だけど、2015年にマーシーとヒックスヴィルの真城めぐみが結成したバンド「ましまろ」でも「朝」って曲があるけど全くの別物です この曲の存在忘れてたのかな、、笑

 M5 ホープ:地味めな曲かもしれないけどアルバムで一番好きだし、ソロ作品の中でも屈指の名曲だと思う 雲間から覗き込む眩しい太陽の光を表現したようなイントロから心全部持ってかれるし、飛行機雲を描くようなギターサウンドは叙情的だし、何よりも歌詞が素晴らしい わかりやすく直接的な言葉選びで、感情を優しく解きほぐしてくれる 美しい歌詞とサウンドを存分に堪能した後にアコギで〆るアウトロも完璧 自分自身この曲に何度も心を救われてきたし、まさにホープ(希望)というタイトルに相応しい魂の名曲 何もかもうまくいかなくて疲れた人は是非この曲を聴いてほしいな、きっとあなたの人生もだんだんよくなっていくはず

 M6 夜空の星くず:シングル曲 満点の星の下で聴きたいロネッツ風のポップス 海外の童話のような歌詞と暖かなバンドサウンドがロマンチック 「天の川」ってフレーズが歌詞に出てくるけど、ぬくいマフラーに包まれているような音像も相まって、個人的には冬の夜に聴きたくなるな

 M7 ダイナマイトが150屯:小林旭のカバー 原曲は演歌調の曲ながらも本曲はロカビリー調の鋭利なロックンロールに変貌した 火花を散らしてるようなベースをはじめとして、熱量あふれる演奏もカッコいいし、マーシーもシャウトしまくり 聴きどころ満載のナンバー

 M8 サンフランシスコの夜はふけて:アルバムの中でもかなり好きな曲 ヒロトが演奏するハープと色彩豊かな白井さんのピアノがサンフランシスコの異国情緒を彩ってくれるロックンロール 歌詞は一見シュールな雰囲気ながらも世間の核心をついたような名フレーズが炸裂、間奏のマーシーのシャウトも激アツ

 M9 とても寒い日:外は寒すぎるから予定は全部キャンセルして家でゆっくりしようぜ、っていう究極の脱力ソング ギターを弾くのは「ブギ連」でも活動してる内田勘太郎さん、暖かい風を吹かすようなブルージーな演奏が世界観を演出してくれる ストーブの前でゴロゴロしながらこの曲聴くと最高に良い

 M10 2人でいれば:穏やかな音像で奏でるポップバラード 優しいアコギの音色とボンゴのリズムに心が洗われるし、まっすぐな恋心を歌うロマンチックな歌詞も誠実さに満ち溢れてる 地味な雰囲気だけどアルバムの中でもかなり好きな曲

 M11 ガソリンアレイ:浅川マキのカバー(原曲はロッド・スチュワートの有名曲) 歌メロをなぞったエレキギターとブルージーなボーカルのユニゾンがバッチリはまってる 故郷へ帰るときの想いを歌った歌詞もお気に入り 静かに始まるイントロから徐々に盛り上がり、最後のサビで最高潮を迎える曲構成もカッコいい 歌詞のテーマも相まって、バイク旅の帰り道の休憩中によく聴いてる

 M12 HAPPY SONG:アルバムのリード曲 牧歌的なピアノを軸にした、賑やかで愉快なポップソング 一発で覚えられるようなキャッチーな歌メロは何度聴いても幸せな気持ちになるし、「気楽にやろう」と肩の力を抜いてくれる歌詞も素敵 緊張感にあふれた現代社会にこそ、この曲が必要なんじゃないでしょうか 歌詞で歌われる「アイツ」って、相棒のヒロトのことなのかなってずっと思ってるけど本当の所どうなんだろう?そうだったらいいな

RAW LIFE (1992)

リマスター盤 (Revisited)

 3枚目のアルバム ブルーハーツの5th「HIGH KICKS」〜6th「STICK OUT」の間にリリースされた作品 前作まではフォークやポップ寄りの曲が多かったけど、本作はこれまでと一変して攻撃的なロックンロールが炸裂 歌詞も主張が一貫してるし、時折皮肉が効いていて、詞曲ともに尖りに尖った作風 ただしロック一辺倒にならずに、M7「ドライブしようよ」M10「こんなもんじゃない」など美しいミディアムソングも収録されてて、息苦しすぎずバランス感の取れた作品
 オリジナル盤発売から15年の時を経て2007年にリマスター盤(Revisited)が発売された 音の強度が増してより迫力あるサウンドに変貌し、ライブ音源6曲・シングルのC/W曲が2曲の計8曲が収録されたボーナスディスクも付いてくる豪華仕様 特にライブ音源はアレンジがガラッと変わった曲も何曲か存在するので、今からこのアルバムを聴くならリマスター盤を買うことを強くおすすめします

■全曲感想
 M1 RAW LIFE:アルバムのリード曲 爆発的なサビとラップ調のBメロが炸裂するロックンロール この曲が発表されて以降から還暦を超えた今でもマーシーはロックをやり続けてる事実 まさに「俺はとことんロックする」を体現してるなと思う 大好きな曲なんだけど、間奏の女性の喘ぎ声には何度聴いてもヒヤッとする笑

 M2 俺は政治家だ:シングル曲 エゴイズム全開の政治家を皮肉った歌詞がインパクト大、ゴージャスなブラスサウンドと硬質なギターリフも男らしさに満ち溢れてる 何とこの曲でミュージックステーションにも出演した タモさんとのトークの温度感面白かったし、パフォーマンスもめちゃカッコよかったのにYouTube消されてて観れない、、持ってる方誰かアップしてください(T_T)

 M3 GO!GO!ヘドロマン:シングル曲 チャックベリーみたいなギターリフでゴリ押していく力強いロックンロール 歌詞もエゴイズム全開かつ現代社会を風刺してて痛快 思わず一緒に歌いたくなるサビのコーラスも楽しいし、マーシーもシャウトしまくり 聴きどころ沢山の名曲

 M4 エゴでぶっとばせ:重めのビートとゴリゴリしたギターリフの相性が抜群なミディアムロック まさにタイトル通りの曲なんだけど自己中にはなりすぎず、「周りの目なんか気にすんな」っていう意思も込められてるように感じる 特に3番の歌詞が好きだな、発表から30年経った今でも通じるようなメッセージ

 M5 かしこい僕達:前4曲の重苦しいサウンドから一変して、明るめなサウンドが映える曲 ただし歌詞は相変わらず皮肉が効いていて、「出るものは杭にうたれる」と「正直者は損をする」を体現したような曲 そんな失敗をした先人から学んで、「かしこい僕達」は自分たちの生きたいように生きることを選択したみたいだけど、自分は2番で歌われるお姉さんのような生き方をしたいなと思う

 M6 煙突のある街:スローな曲ながらも歌詞のテーマは本作で最もヘビーかもしれない 公害問題で悩む町と、大気汚染の原因である工場で働く主人公がテーマ 生々しい物語調の歌詞と絶望的なサウンドも相まって、かなり重苦しい曲なんだけど絶対に飛ばしちゃいけない曲
 個人的な話だけど、自分の出身は「四日市ぜんそく」で有名な四日市市で、祖父や先生からコンビナートの公害問題について色々聞かされて育ってきたから、この曲をフィクションとしてとらえたくないな

 M7 ドライブしようよ:希望と期待感に溢れたポップス アルバムの流れからはかなり浮いているけど、ここまでヘビーな曲が並んだこともあり、清涼剤的な役割も果たしてくれてる 晴れた春の日に車乗りながら聴くのがおすすめ

 M8 情報時代の野蛮人:再びアクセル全開、街の風景を早送りしてるようなイントロが衝撃的なナンバー 労働者の皮肉と自虐と覚悟が込められた歌詞も良い、昔から好きだったけど社会人になり沢山理不尽を知るにつれてより好きになってきた名曲 俺は明日も働くよ!

 M9 関係ねえよパワー:豪快なタイトルと力強いビートで前進するミディアム調のロックンロール つまらない同調圧力を一蹴し、自分らしさを持つことの大事さを提唱した歌詞が大好き ここまで反抗的なテーマを持った曲が数多く収録されてきたけど、表現が被ってないマーシーの語彙力と想像力には感服してしまう

 M10 こんなもんじゃない:アルバムで一番好きな曲 これまで綴られた複雑な感情を全部吹き飛ばして美しいメロディに昇華させた、まさに大団円に相応しいナンバー イントロの壮大なキーボードとマーシーの誠実な歌声から世界観に没入できるし、特にサビの女声コーラスが入ってからの展開は圧倒的
 洋画の登場人物との会話を綴ったファンタジーな歌詞も良い 直接的ではないが「自分の生き方を信じなよ」っていうメッセージが込められている気がする 7分半と長めだけど、ファンタジックとリアリズムが同居した、魂の名曲

 M11 RAW LIFE (reprise):1曲目のバージョン違い 前曲「こんなもんじゃない」でクライマックスを迎えた後のアンコール的な立ち位置 原曲よりも少しBPM遅めで、ギターリフがより主張されてるし、歌詞も結構違う 双方別ベクトルの良さがあるので、ぜひ比較してみて

 M12 ですメタル:ボーナストラック 曲名は「デスメタル」のもじり 所謂ネタ曲だけど絶対に見逃せない曲 「です、でした、でしょう」って言ってるだけなのになんでこんなにカッコ良いんだ?

人にはそれぞれ事情がある (1994)

オリジナル盤(デジパック仕様)

 4枚目のアルバム ブルーハーツの6th「STICK OUT」&7th「DUG OUT」から解散までの間にリリースされた作品 少数派かもしれないが個人的にはソロ作品の中で一番好きなアルバムです
 本作はこれまで発表された3枚のアルバムの音楽性(フォーク・ポップ・ロックンロール)を土台として、プログレッシブやジャズの要素も取り入れたバラエティ豊かな音楽性 ただし決して散漫にはならず、緩急のついた構成・曲順に仕上がっていると思う 曲前半はゆっくりした曲が多め、後半は比較的アップテンポの曲が多めという構成も良い
 有名な話だけど、アルバムタイトルは元々「月のウサギ、太陽のカラス」だったのに(Wikipedia情報)、リリース直前でタイトルが差し替えられたらしい 「人にはそれぞれ事情がある」の意図はわからないが、趣深いタイトルで個人的には好きな言葉だな
 残念なことに本作と前作「RAW LIFE」は2026年現在もアナログ化されていない(ヒロト&マーシーのフルアルバムは殆どレコード出てるのにも関わらず、、) 2017年にブルーハーツとマーシーソロアルバムのレコードが一斉発売された時も、この2枚だけは見事にスルーされた アナログの音像とデカいジャケットに最高に似合うと思うので、発売ずっと待ってます

■全曲感想
 M1 月のウサギ、太陽のカラス:マーシー作品初のインストゥルメンタル、艶やかなアコギと情熱的なサックスのユニゾンが見事な一曲 5分近くと少し長いけど、インスト曲ならではの劇的な展開を見せるし、次曲「空席」への繋ぎは息を飲むほど美しいので、決して飛ばしちゃいけない曲

 M2 空席:アルバムで一番好きだし、キャリアの中でも屈指の神曲だと思う 風のように軽やかなハーモニカと丁寧に歌うマーシーの声が感情の空席を埋めてくれる、秋の夜長に似合う傑作
 自分の人生の隣に現れるかもしれない誰かへの期待感と不安感を綴った歌詞は、天才的な比喩表現が全編通して冴え渡っているなと思うし、人それぞれ自由に解釈できる余白も仕込まれてる マーシーの書いた曲で一番好きな歌詞かも
 ライブverも素晴らしい 丁寧にハーモニカとギターを奏でる姿には惚れ惚れしてしまうし、感情的な歌声も涙を誘う、まさに名演

 M3 アイスキャンディー:ガチャガチャしたカラフルなサウンドが印象的なポップス 本曲は自転車に乗ったアイスキャンディ売りの男性がテーマ 10月の浜辺という季節外れな景色を舞台としたストーリー性のある歌詞はまるで光景が目に浮かぶよう 2番終わりの寂しげな転調も染みる

 M4 ロマンス:ソロ作品の中でも五指に入るくらい大好きな曲 広大な草原に佇んでいるようなサウンドワークが圧倒的 繊細でドラマチックな世界観が爆発した歌詞も凄い、特に「タンポポのソファー」「線香花火の赤信号」なんかはマーシーにしか書けない比喩表現だと思う 静かなAメロ〜Bメロから求心力あふれるサビに到達する展開も胸熱

 M5 二人の夏の日:恋人と市営プールに遊びに行った時の光景を綴った曲 儚げな歌詞と情念的なマーシーのボーカルの世界観が抜群、まるでモノクロ映画を観ているよう イントロや間奏において、飛行機の音や風に煽られた扉のSEも取り入れられていて、より不安感を助長させてくれる

 M6 カーニバル:幻想的かつ刹那的なサウンドが雰囲気抜群のナンバー 楽しげなタイトルながらも歌詞で歌われる「僕」と「君」は最後まで交じり合うことなくすれ違っていく不穏なストーリー サウンドワークも歌詞の世界観にバッチリハマってて、プロデューサーの佐久間正英さんが本当にいい仕事してるなと思う
 前作「RAW LIFE」のリマスター盤には本曲のライブverが収録 原曲とは打って変わってこちらは弾き語り主体の綺麗なバラードになってる(こっちが先らしい)、歌メロの良さが染み渡るのでアコースティックverも大好きです

 M7 ジャングルの掟:ここから後半戦、ターザンみたいな叫び声とジャングルビートが楽しいインスト曲 6曲目までと次曲以降はガラッと雰囲気変わるから、インタリュード的な役割も果たしてくれてる

 M8 カレーライスにゃかなわない:シングル曲 カレーライスを作る時のよろこびが込められた歌詞は、キラキラしたキーボードとベルの音作りも相まってとってもハッピーな気持ちにされてくれる 中でも「牛乳を鍋に〜」以降の歌詞は素晴らしいなと思う、大好きな食べ物への愛と、生きることの楽しさが詰め込まれてる名フレーズ
 原曲はブルーハーツ結成前にやってたバンドTHE BREAKERSの「スーパーマンを紹介するぜ」、歌メロは同じだけど歌詞が全然違ってて、こちらは好きな人への気持ちを歌った悲しいラブソング カッコよさと泣きの要素が同居した素敵な曲で、動画サイトにもアップされてるので是非聴いてください

 M9 MR.SPEED:スイングの効いたジャズ風味のロックンロール ハイロウズの曲にも歌われてそうな無敵感あふれる歌詞が良い 「オレオレオ!」のコール&レスポンスも楽しい、2分半と短いけど濃密な曲

 M10 世界を笑う男:前曲からの繋ぎがバリかっこいい、こちらもジャズ風味でダイナミックなサックスが印象的なナンバー 歌詞は古い洋画を観ているようなカリスマ性に溢れた漢らしい主人公がテーマ、マーシーの艷やかな声も色っぽい

 M11 ドーパミンBABY:エレキギターとブラスの絡みが絶妙な、アルバムのクライマックスを担うに相応しい名曲 徐々に加速していきサビで最高潮を迎える曲展開は何度聴いても胸を熱くさせるし、歌詞はよく読むと結構エロティックなんだけど、それを感じさせない比喩表現が見事 間奏&ラストのギュインギュイン鳴ってる長めのギターソロもカッコいい、ずっと聴いていたくなる

 M12 月のウサギ、太陽のカラス(reprise):インスト曲 1曲目はサックス主体の音作りだったけど本曲はハーモニカ主体でどこか寂しげな雰囲気 バラエティ豊かな本アルバムを綺麗に〆る

アルバム未収録曲

89〜94年の間にリリースされた6枚のシングルに収録されてるカップリング曲にも触れておきます ブルーハーツとは勿論の事、これまで言及した4枚のオリジナルアルバムとはまた別の魅力が発揮された曲ばかりなので、未聴の人は是非聴いてみてほしい

■全曲感想
 ・ ドクターペッパーの夢:シングル「アンダルシアに憧れて」のC/W曲 バイオリンとアコギで奏でる8分超えの美しいスローバラード 情景が目に浮かぶような詞が良い 歌メロが少々単調な気がするので昔はあんまり聴いてなかったんだんだけど、年を重ねるにつれて好きになってきたスルメ曲

 ・ 真夜中過ぎの中央線:シングル「オーロラの夜」のC/W曲 この曲大好き、切ないハーモニカとブルージーなバンドサウンドの絡みが絶妙な演奏が心に染みるし、真夜中のノスタルジックな光景を綴った歌詞も相性抜群 終電間際の人気の少ない車両に乗るときは、必ずこの曲を聴くようにしてる

 ・ バラ色の人生:シングル「夜空の星くず」のC/W曲 ギターリフでゴリ押していくヘビーなロックンロール 曲名はハッピーな感じながらも歌詞を見てみると人生の世知辛さを吐き捨てていて、どこか自虐も込められてる感じもする 2分ちょっとと短い曲ながらも見逃せない一曲

 ・ うな重:シングル「夜空の星くず」のC/W曲 キンクスの名曲「I Need You」のカバー、「アイニージュー」を「うな重」と歌う洒落の効いた和訳の歌詞が面白いし、そんなテーマなのに原曲の雰囲気を崩しすぎず、カッコいいロックンロールに仕立てたマーシーのセンスには恐れ入る

 ・ 踊り踊れば:シングル「GO!GO!ヘドロマン」のC/W曲 この後リリースされる3rdアルバム「RAW LIFE」はロックンロールの激情が全面に発揮された作風だったのに対し、本曲はうって変わってサンバ調のサウンドが耳に残る明るめなナンバー 歌詞もかなりハッピーで、元気を貰えるので結構好きな曲

 ・ I FOUGHT THE LAW:シングル「俺は政治家だ」のC/W曲、オールディーズの名曲のカバー クラッシュのカバーが世間では一番有名だと思うけど、この曲は原曲に近しいカントリー調の長閑な曲 和訳は「うな重」と比べて原曲に忠実ながらも、マーシーならではの鋭い言葉が随所に仕込まれてる

 ・ 空席(version2):シングル「カレーライスにゃかなわない」のC/W曲 原曲とはガラッと雰囲気が変わり、レゲエ調のゆるやかなサウンド これはこれで好きだけど、原曲の神々しい雰囲気のほうが断然好きだな なお、本曲が収録されてるシングルは何故かプレミアついてる 安値で見つけたら絶対ゲットしてほしい

余談:好きな曲ベスト10

  自分が特に好きな10曲を考えてみた 改めて考えると多少変動あると思うので、あくまで今の気分です
 もし自分がベストアルバムを1枚組で発表できるなら、この10曲をいい感じの曲順に並び替えてリリースします

 1.風のオートバイ:「夏のぬけがら」収録
 2.空席:「人にはそれぞれ事情がある」収録
 3.ホープ:「HAPPY SONGS」収録
 4.ロマンス:「人にはそれぞれ事情がある」収録
 5.カーニバル:「人にはそれぞれ事情がある」収録
 6.こんなもんじゃない:「RAW LIFE」収録
 7.サンフランシスコの夜はふけて:「HAPPY SONGS」収録
 8.クレヨン:「夏のぬけがら」収録
 9.情報時代の野蛮人:「RAW LIFE」収録
 10.真夜中過ぎの中央線:シングル「オーロラの夜」収録

 ブルーハーツの全曲レビューでも触れたけど、89年〜94年のマーシーの楽曲は特に光り輝いていたと思っていて、アコースティック・ロック・ポップス・ジャズなど多ジャンルを吸収しつつ、マーシーしか書けない歌詞とメロディで唯一無二の楽曲を連発していたと思う(勿論、ハイロウズ以降のマーシーも大好きです)
 例に漏れず、いずれの作品もサブスク解禁されていないけど、ブルーハーツの有名曲しか知らないリスナーは是非聴いてみてほしいな 人生観がガラッと変わるかも
 2025年に発売されたザ・クロマニヨンズの18thアルバム「JAMBO JAPAN」では、ましまろ以来9年ぶりにマーシーがメインボーカルを担当 もう自分のバンドで歌わないんだろうなって思ってたから、歌いたいという気持ちを取り戻してくれて本当に嬉しかった 気が向いたら5枚目のソロアルバムも出してほしい、気長に待ってます

おわりに

以上、真島昌利ソロの全曲(55曲)レビューでした
マーシーがクロマニヨンズ時代に活動してた「ましまろ」や、ヒロトが内田さんと組んでるブルースユニット「ブギ連」についてもいつか記事書いてみたいな

最後まで読んでくれてありがとうございました

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