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#14 被服汚損リスク管理概論 ー担々麺摂取時における白シャツ防衛の実践

対象: 飛ぶのが怖くて担々麺を避ける人
概要: 担々麺はほぼイタリアン
    管理すればリスクは怖くない

​1. 序論:研究の背景

​筆者は本来、ラーメンという料理体系に対して否定的な立場を取っている。

​特有の臭気および脂質の過剰摂取に対する生理的嫌悪に加え、昨今のラーメン愛好家の人口過多と、彼らが形成する過剰な熱狂に対する天邪鬼な反発心が、筆者をこの料理から遠ざける主たる要因である。

​しかし、本稿で取り上げる「担々麺」については、これを例外的に許容している。その根拠は、対象の保有する「色彩」にある。

​担々麺のソースが呈する鮮烈な赤。

これは構造上、ラーメンの属する中華料理体系ではなく「アラビアータ」もしくは「ボロネーゼ」等のイタリアンパスタに近縁分類されるべき特性である。

カプサイシンの赤をトマトのリコピンであると脳内で再定義することにより、筆者はこれを可食対象としてホワイトリストに登録している。

2. 問題の所在

​本事例において特筆すべきは、筆者の装備が「純白のシャツ」である点だ。これは汚損リスクに対する脆弱性が極めて高い状態であり、業務途中での着替えが困難な多忙な管理職として、許容し難い「事故(シミ)」を招く可能性を示唆している。

​本稿では、この極限状況下におけるリスクマネジメントの実践プロセスを報告する。

​3. リスク対応計画

​PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)に基づき、以下の4つの戦略を検討し、実行計画を策定した。

3.1 回避(Avoidance)の検討と棄却

「担々麺を注文せず、炒飯等の低リスク食品を選択する」という方針。しかし、主要なステークホルダー(筆者の胃袋)からの強い要求により、本案は棄却された。

3.2 転嫁(Transfer)の適用

「紙エプロン」という物理的防壁の実装である。成人が公共の場で前掛けを装着することに対する美的懸念は存在するが、資産の保護を最優先事項とし、第三者(紙)へのリスク移転を選択し適用した。

3.3 低減(Mitigation)の採用

ここで筆者は、独自技法「静音喫食」を採用した。

麺をリフトアップした後、まず重力を利用して付着した液体を静かに滴下させる。その後、麺の吸引(すする行為)を一切行わず、麺を折り畳むように口内へ収納する手法である。

​このプロセスにより、飛散リスクは理論値として0%に近似される。一方で、「麺をすする」というユーザー体験(UX)は著しく損なわれる結果となった。

「仕様(汚れなし)」は満たしたが、「品質(風味)」は低下する。

これはシステム開発における古典的なトレードオフである。

蛇足にはなるが、こういったトレードオフ現象を技術的に止揚(アウフヘーベン)し、ユーザーの満足度を最大化することこそが技術者の本懐であることは論を俟たない。

​3.4 受容(Acceptance)の断固拒否

「汚損が発生した場合、事後的にクリーニングを行う」という、リスクを保有する選択肢である。一般的にコスト対効果の観点から採用されることの多い戦略だが、本プロジェクトにおいては適用外とする。

白シャツにおける赤いシミは、その日の残り時間の業務遂行能力(主にメンタル面)を著しく低下させる「致命的な障害」であり、これを受容することはインフラ管理職の矜持に関わるためである。

​4. 結論と考察

​4.1 実証結果

喫食完了後の状況を確認した。

丼底には赤色の液体が残留しているが、対象領域(シャツ)への飛散は認められない。また、リスク転嫁先(紙エプロン)を慎重に排除し、撤去時の二次被害も防止した。

4.2 結論

胸元には、入店時と変わらぬ「完全な白(#FFFFFF)」が維持されている。

本事例により、以下の仮説が立証された。

定理:担々麺は、イタリアンである。

(パスタのマナーで食せば、服は汚れない)

​リスクは完全に制御された。

筆者はレジへと向かう。

高らかな凱旋のファンファーレの代わりに、決済完了音が虚空に響く。

「ぺいぺい♪」

​以上。


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