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masuno_shota
〔ショートショート〕左右研究
「あなたは鏡の中の自分と対話している、と」
医師の田中は、患者の佐知に確認する。
「いえ、ですから、鏡の中にいるのは私ではなく祐美なんです。私は佐知、あっちは祐美。」
「ああ、そうでしたね。あなたは左利き、彼女は右利き。あなたは消極的、彼女は積極的、でしたか」
「ええ」
「多重人格か……。ぜひ、あなたがたについて研究したいので、ご協力いただけますか」
「いいですよ。ただ、祐美は暴走するので、先生も気を付けてくださいね」
「分かりました」
1か月後。田中は佐知から祐美について聞くうちに、強く祐美に惹かれていた。大人しい佐知とは真逆の、小悪魔的な祐美。どうしてもひと目会いたくなり、今日は佐知に手鏡を持参してもらい、背後から覗くことに。
「祐美、いる?」
佐知が呼びかけると、鏡の中の顔が変わる。
「いるけど?」
「あ、は、初めまして」
緊張気味の田中を見て、祐美は艶やかに笑う。
「あらセンセ。私のこと、気に入ってくれてるそうね。嬉しいわ」
鏡の中から祐美に見つめられて、田中の胸が高鳴る。
「センセ、こっちでゆっくりお話ししない?」
鏡の中から、祐美の白い腕が伸びてきて、田中の頬に触れた。次の瞬間、彼の頭を抱え込み、小さな鏡の中に引き入れていく。
「ああ……」
うっとりするようなため息と共に、医師は鏡の中へ。佐知の手鏡の中、田中は祐美と腕を絡ませフラフラと遠ざかっていった。
「だから、暴走するって言ったのに」
佐知はクスッと笑うと、手鏡をバッグに入れて立ち去る。
それ以来、田中の姿を見た者はいない。
200字以上オーバーですが、こちらのお題で作りました。
たらはさん、お手数かけますがよろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございました。
