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【怪談ショートショート集 怪怪談談】 ♯08『増えるノック』


♯08『増えるノック』

文字数:約2,000字

 ある女の子が学校のトイレに入っていたところ、トンッ、と一度だけ個室のドアをノックされた。

 そのときトイレ内に居たのはその女の子ひとりだけで他の個室はすべていているはずだった。

 どうしてドアをたたかれたんだろう?

 女の子が不思議がっていると今度は、トンッ、トンッ、と二度ドアをノックされた。

 ドアを叩いてくる人物に使用中であることを伝えるため、女の子は個室の内側からノックを返した。

 するとまた外側から、トンッ、トンッ、トンッ、と三度ドアをノックされた。

 ノックされるたびに回数がひとつずつ増えている。

 すこし怖くなった女の子は、

「……入ってます」

 と、口頭で使用中であることを告げた。

 これでもう叩いてこないだろう。

 そう思ったのだが、

 トンッ、トンッ、トンッ、トンッ

 ノックは止まない。

「……まだ使用中です」

 トンッ、トンッ、トンッ、トンッ、トンッ

「やめて! もう叩かないで!」

 トンッ、トンッ、トンッ、トンッ、トンッ、トンッ

 女の子が怒鳴どなっても相手からの返事は無い。

 ただドアを何度も叩いてくるだけなのだ。

 こんな悪ふざけをしてくるのは誰だろう。

 捕まえてやる。

 と、怒った女の子は、次に叩いてくるタイミングでドアを開けてみることにした。

 便座べんざから静かに立ち上がり、こっそりドアの前に立って準備をする。

 そして、

 トンッ、トンッ、トンッ――

 ガチャッ!

 勢いよくドアを引き開けた女の子は、

「えっ?」

 と、驚いてしまった。

 叩かれている真っ最中に開けたにもかかわらず、個室の前には誰も立っていなかったのである。

 すぐに個室から頭を出してトイレ内を見回してみても、人影は見当たらなかった。

 他の個室のドアはすべて開かれており、どれも未使用の状態。もちろん、人影はない。

「じゃあ誰が叩いていたの……?」

 急に寒気を覚えた女の子は大急ぎでトイレから出た。

 放課後、帰宅した女の子は、今日学校のトイレで起こった怖い話を、夕食の準備をしていたお母さんに話して聞かせた。

 ドアを何度も叩かれて怒って開けてみたけれど誰も居なかった、と。

 話を聞き終えたお母さんが、野菜を包丁ほうちょうでトントン切りながら尋ねてきた。

「あなたは七回目のノックでドアを開けたのよね?」

 トンッ、トンッ、トンッ

 女の子は、そうだとうなずいた。

 七回叩かれている途中で開けたのだ、と。

「良かったわ。七回ノックされ切る前で」

 トンッ、トンッ、トントンッ

「……七回ノックされてたらどうなっていたの?」

「次は、八回ノックされてたわ」

 トントントントントンッ

「……えっ? 八回ノックされたらどうなっていたの?」

「次は、九回ノックされてたわ」

 トットットットットットッ

「……お母さん?」

「次は、十回ノックされてたわ」

「お母さん!?」

 トトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトッ


(了)


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