シネマ歌舞伎『京鹿子娘五人道成寺』 伝統と美の継承、猫を想う謹賀新年
謹賀新年
あけましておめでとうございます。
昨年始めたこのnoteを通じて、多くの方々との思いがけないご縁に恵まれ、視野を広げる貴重な機会をいただきました。本年も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
改めて垣間見る「女方」の世界
2026年1月3日放送『マツコの知らない世界 新春SP』に、人間国宝であり、歌舞伎界における最高峰の女方・坂東玉三郎さんが登場され、大きな反響を呼びました。
「女方とは女性の模倣ではない」
「女方」とは、現実の女性をなぞる存在ではなく、様式美を通じて「女性性の精神」を体現する表現。長い歴史の中で磨き上げられてきた「型」を通じ、女性性の本質や精神性を、役柄を通して、象徴的に表現する芸である。「非日常」である舞台空間において、様式美を極限まで突き詰めることで、観客に「本物以上の女性像」を提示する。そこに宿る、厳しくも崇高な美学に、深く心を打たれました。
衣裳や化粧道具の徹底したこだわりも、非常に印象的でした。数十キロにも及ぶ豪華な装束をまといながら、それを感じさせない所作を成立させるための鍛錬。目線・目づかいによって、どういう女性か、感情、色気までをも、繊細に表現する技巧。役に向き合う細部の積み重ねが、舞台上の圧倒的な説得力を生み出していることが改めて伝わってきました。
「女を装う」という行為に内在する孤独や覚悟を深く理解しているマツコ・デラックスさんの問いに対し、 玉三郎さんは、普段あまり語られることのない表現論の深層を、静かに言葉にされました。さらに、玉三郎さんがマツコさんへ問いを返す場面もあり、自分ではない「何者か」を演じることで大衆を惹きつける者同士が共鳴する、緊張感と温かさを併せ持った不思議な時間が流れていたように感じられました。
『京鹿子娘五人道成寺』 次世代へのバトン
昨年は毎月のように歌舞伎座へ足を運びました。年末に驚かされたのが、東劇の「シネマ歌舞伎」です。
鑑賞したのは、2016年に歌舞伎座で上演された『京鹿子娘五人道成寺』。

坂東玉三郎さんと、次世代の花形俳優たちによる華やかな舞踊が見どころ。物語の背景にあるのは「安珍・清姫伝説」があります。恋に狂い蛇と化した清姫の亡霊が、花子の姿となって鐘のある道成寺に現れるというドラマティックな筋書きは、女方の持つ「美」と「妖しさ」という二面性を際立たせています。
『京鹿子娘道成寺』は、本来ひとりで舞う「女方の登竜門」といえる舞踊劇ですが、本作では五人の俳優がそれぞれ花子として登場し舞をつなぎます。舞台上で、一瞬にして衣装は変わる「引き抜き」の場面。一斉にあざやかな振袖姿へと変身する瞬間は、まさに息を呑むような美しさ。扇、花笠、鞨鼓、手拭いなど、多彩な小道具がテンポよく登場し、観る者を飽きさせません。映像作品ならではの魅力として、俳優の繊細な表情や、衣裳の刺繍の一つひとつまで、スクリーン越しに堪能できるのも、シネマ歌舞伎ならではの醍醐味です。
強く心に残ったのは、玉三郎さんの「継承」への姿勢です。「座っている苦痛がなければ、一年中していたい」と語られるほど、映像編集を愛し、シネマ歌舞伎の編集にも積極的にかかわってこられたとのこと。ご自身がいつか舞台に立てなくなる日を冷静に見据え、技と心を若い世代に託していく。その覚悟と誠実さ、そして伝統を未来へつなぐ想いと重みが、スクリーン越しにもひしひし伝わってきました。
PR担当「かぶきにゃんたろう」
『京鹿子娘五人道成寺』を鑑賞したのは、松竹マルチプレックスシアターズが運営する老舗映画館「東劇」です。この東劇で歌舞伎PR大使を務めているのが、松竹とサンリオが共同開発したキャラクター「かぶきにゃんたろう」です。

「歌舞伎にゃんバサダー」としてSNSや公式サイトを通じ、歌舞伎やシネマ歌舞伎の魅力を発信しています。東劇に訪れると、どこかでその可愛らしい姿に出会えるかもしれません。

本年もよろしくお願い申し上げます
新年の始まりにあたり、芸の奥深さをみつめ、美意識に触れるひとときに恵まれましたこと、心より感謝申し上げます。本年も、「推し活」「ねこ活」「ねこバル」はじめ、ねこにまつわるエトセトラ…一つひとつ丁寧に記してまいりたいと存じます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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