【第1話】ソラと一緒に旅する世界 |一歩を踏み出す勇気

山道は、思っていたより急だった。
草の匂いと土の感触が鼻をくすぐり、ぼくの小さな足を少しずつ汚していく。
それでも、不思議と怖くはなかった。
だって、隣には飼い主がいるから。
大きな靴が土を踏みしめる音が、ぼくには安心のリズムに聞こえる。

木々の間から差し込む光が、まるでぼくの毛並みに金色の飾りをくれる。
時折、風がふわりと耳をなでていった。
一歩進むごとに、ぼくの世界が少しずつ広がっていく。

途中で立ち止まると、目の前には大きな岩。
小さな体では簡単に越えられそうにない。
「もう戻ろうかな」なんて思った瞬間、飼い主の声が届いた。
「ソラ、大丈夫だよ。ゆっくりでいい。」
その声に背中を押されるように、ぼくは爪を立てて岩に挑んだ。

最初の一歩は重かった。
でも、足をかける場所を見つけ、次の一歩を踏み出したら、不思議なくらい軽くなった。
気づけば、岩の上から見下ろす景色に、胸がいっぱいになっていた。
下から見ていた時はただの障害物だったのに、登ってみれば、こんなに美しい世界が待っていたんだ。
草原の先に広がる青い空。
遠くに小さな村が見える。
鳥の声が重なって、まるで「よく来たね」と迎えてくれているみたいだった。

ぼくは思った。
一歩を踏み出すと、景色は変わる。
勇気って、大きなことをやり遂げる力じゃなくて、「最初の一歩」を試してみる気持ちなのかもしれない。
その一歩を出すか出さないかで、見える景色はこんなにも違うのだから。

飼い主が笑顔で近づいてくる。
「ソラ、やったね」
その手がぼくの頭をやさしく撫でた。
毛並みをすり抜ける指の温もりに、心の奥がじんわりとあたたまる。

ぼくは大きく伸びをして、また次の道へと視線を向けた。
冒険はまだ始まったばかり。
きっとこれからも、小さな勇気を重ねていくたびに、ぼくの世界はもっと広がっていくんだろう。


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