【カッパドキアの気球】ソラと一緒に旅する世界
朝焼けのカッパドキア。
空にはまだ星がひとつだけ残り、岩の谷の向こうで気球たちがゆっくりと膨らんでいく。

バーナーの音に驚いて、ぼくのしっぽが思わずふくらんだ。
「大丈夫よ、ソラ。」
飼い主が微笑んで、ぼくをそっと抱き上げる。
籠の中に入ると、
朝の風が顔に触れた。少し冷たい。
でも、やさしい。

火が吹かれるたび、気球はふわりと浮かび上がる。
地面が遠ざかる。谷の岩が豆粒みたいに小さくなっていく。
ぼくは思わず、
「みゃふ…」
と小さくつぶやいた。
胸の奥が、少しざわざわしていた。

そのとき
ひゅるる、と音がして、飼い主のスカーフが風にさらわれた。
淡いベージュの布が、朝の空へくるくると舞い上がる。
「……あっ」
飼い主の声。
ぼくは思わず籠の端に前足をかけて、スカーフを目で追った。

風に乗って、気球の間をすり抜けていく。
金色の光を受けて、まるで生き物みたいに踊っていた。
どうしても、落ちないでほしかった。
だってあれは、飼い主のぬくもりのにおいがするから。
風の向こうに見えなくなったスカーフ。
飼い主は小さく息をついたけれど、微笑んだ。
「風が、どこかで見つけてくれるよ」
ぼくはその言葉を聞きながら、
ふわりと吹き抜けた風の中に、
ほんのりスカーフの香りを感じた気がした。
ぽふ…。
胸の中の不安が、風に溶けていく音がした。

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