はなむけの魔法 #シロクマ文芸部
花びらをつかまえようとしたら、まさか反対につかまってしまった。
僕が驚いているとその花びらは真剣な顔でこう言ってきた。
「旅をしてみたい」
悩んだ末、僕は花びらに魔法をかけて
花びらを「空飛ぶ花びら」にした。
花びらが飛べるようになってからは
僕たちはふたりで色んなところへ出かけた。
花びらはいつも僕を背中に乗せてくれた。
一緒に色んな景色を見て一緒に色んな美味しいものを味わった。
けれどしばらく経つと花びらは
もっと外の世界を見てみたいと言った。
「今まで一緒に十分見てきたじゃないか」
「もっと知りたいんだ」
本当はとても寂しかったけれど
僕は花びらの夢を応援することにした。
魔法はひとりにつき一つしか与えられない。
だから僕はまず花びらにかけた魔法を解いた。
これでもう花びらは空を飛べない。
それから花びらに気付かれないよう僕はこっそりと
新たな魔法を花びらにかけた。
そして最後に体を拭いて押してリボンをつけた。
花びらの準備も整い、僕たちは図書館へ向かった。
そこで一緒に一冊の本を選んだ。
花びらは、栞として生きていくことを決めた。
これからは沢山の人の人生を傍で見てみたいんだと言った。
色んな本を渡り歩きながら様々な人生を見守るつもりらしい。
そう語る花びらは、なんだかとてもいい色をしていた。
「元気でな」
「うん。今までありがとう。またどこかで」
ちなみにあの時僕が君にかけた魔法はね
君が満足するまで君が決して枯れないことを約束する
僕から君へのはなむけの魔法だったんだ。
【おしまい】
***
今週のシロクマ文芸部でした🐨
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