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「わたしはサクラソウ」

わたしはサクラソウ
静かな山にいる野草

今日はいつものおじさんがたくさんのこどもたちを連れてやってきた
元気よく歌っている地面のこえが聞こえた

おじさんがこどもたちにわたしたちの説明をしてくれた

わたしたちもみんなと同じで
「生きていること」
「男と女があること」
「花粉を飛ばしてあたらしい命をつくること」

「こえが聞こえていること」

こどもたちはその話を目を丸くして聴いていた

_ひとりの女の子以外は

その女の子は「みさ」という名だった
みさは「はると」という男の子ばかり見ているようだ
しばらく みさを見ていると みさと目が合った
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わたしはいちめんみどりのなかにある ちいさなひかりをみつけた
ちかづいてみると そのちいさなひかりは やさしいむらさきいろをしていた

もこもこのみどりのうえで ちょこんと さいていた

わたしはどうしても そのおはながほしくなった
わたしはそのはなを くきのところから「ぷちん」とちぎって
ハンカチにはさんだ



「みさちゃん かわがながれてるのみた?」  ふりかえると はるとがいた
「いっしょにみにいこうよ」  はるとは わたしのてを ひっぱってくれた

すぐそばには ほそいかわが ながれていた
いしをはしにすれば わたしたちでも むこうぎしにいけるような ちいさなおがわ

そっとながれるみずが きらきらしてしずかだった

いちばんにきょうしつにはいったときに
ゆれるカーテンからみえるひかりみたいだった


すこしはなれたところから
「沢は滑りやすいから、それ以上ちかづいちゃだめだよ」
とおじさんがいった
わたしたちは「はい」とこたえた




ハンカチのなかは暗かった でも、あたたかかった
外から「みさ」と「はると」のこえが聞こえた
「ここのつち、ほんとにすべる・・・」「このまえのどろあそび・・・」




いろんなおはなししてくれる
だけど わたしには はるとのこえがきこえているだけだった

だって
はるとにどうやって「すき」っていうか そればっかりだったんだもん



からだぜんぶがしんぞうになったみたい
のどのしたまでドキドキしてる



「もどろっか。」 と はるとがいった。
「うん」 と いいながら わたしのては はるとのてをひっぱっていた
あしからねっこが はえたみたいに うごかなかった


「どうしたの?」
「……なんでもない。」
はるとは ふしぎそうなかおをして だまってそこにいてくれた


ハンカチをひらいてゆった
「はるとがすき。いつもやさしいはるとのことが、だいすき。このかわいいおはな、はるとにあげる。」



4月の風がふたりをすりぬけた。



「みさちゃん、ありがとう。ぼくもみさちゃんのことすきだよ。」
「だけど、このおはなはもらえない。」
「おじさんがいってたじゃん。このおはな、つぎのおはなさかせるために がんばっていきてるんだって。」


わたしのどきどきのいろが かわった
はるとにやさしく おこられたきがした


「ごめん……ごめんなさい。」
なみだがでてきた


はるとは まわりをみてから そのサクラソウをとった
ちかくにはえてた ほかのサクラソウに てにもったおはなを くっつけていった

「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、……」

ふりかえったはるとは
「いっぱいけっこんしたから もうだいじょうぶかな」 といってわらった


みさとはるとは わたしを その近くの土にうめてくれた。
みんなの呼吸が伝わってきた。

つないだふたりのてからは つちのにおいがしていた







「わたしは サクラソウ だった」









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