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わたしを花束にする/そのわのなかで


たとえばこの一本の花は、ここに生きているわたし。


地面から切り離されたわたしは、葉をまとい、陽光を探し、水滴を拾い、風にふるえる。ときには、つめたい水をのむしかない。

ものを言えないわたしは、あるとき意に反して暗く乾いた部屋に閉じ込められてしまう。わたしは花びらの先から少しずつ生気をうしなっていく。ぱさり、ぱさり。希望が底を尽きる前、わたしは最後のちからを葉の先に集め、誰にも見られないよう葉をのばす。のばした先にはスプーン一杯ほどの池があった。だれかの遺してくれたその水は透明なのにわずかに苦く、あとには甘さが残るの。
ここまでたどり着けたなら、あなたはまだ大丈夫。水の底から、茎を通って声はいのちになる。「この水はいつまでも乾かない。のみたい、と、いつでも欲しなさい。あなたが思えばいのちになるから」。あなたが思えば。葉の先の水気が身体を奥まで揺らし、葉脈は細い川となってそこここの小石を潤していく。

わたしの希望はきっとゼロではない。




薄暗い部屋を見渡すと、わたしと同じように無口なままそこに立っている花が見えた。レースカーテン越しの弱い光を受け、床にわずかな影をつくっている。

「いたの?」
わたしは音声にならない言葉を伝える。空気を震わせるだけの言葉。瞬間、葉を揺らし影が揺れる。
「いつからいたの?」
どうしようもない心細さは否応なく言葉ににじみ出る。最後の「の?」が半分裏返り、薄い影を揺らす。
花々はやがて互いの存在を認知し、しずかに寄り添う。葉を重ね、こすれる音に夕焼けのような懐かしさを感じながら距離を縮めていく。



互いの正義なんてわからないまま、に、わたしたちは寄り添う。それでいいのだと思う。


わたしのまわりには、わたしをやさしく取り囲む花々がいるのだった。この暗く乾いた部屋のなかでも、わたしに養分を与えてくれる花々が。
束になって、わたしはわたしの世界に守られている。


最後にりぼんをかけてやる。


花束。
荒々しいけれど、これがわたしの世界なんだ。


難儀な場所に行かなければならず、わたしは心細かった。
そんなときは、あたたかいものをこころに携えていなければ。



あたたかいつながり企画で紹介していただきながら、ずいぶん時間が経ってしまいました。相変わらず遅々とした歩みだけれど、これがわたしのペースなのかもしれません。焦ることも多いけれど仕方がない。ただ、大切にしたいものはこれからも信じていたい。しなやかさは忘れないようにして。
ご紹介いただきありがとうございます。

助けられたことに感謝しながら、ここに置いておきたいと思います。すみっこだけれど、伝わりますように。

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