夏のはじまりミ長調
夏は暑い。当たり前だ。
そうじゃなくて、おれのクルマの話だ。
おれのクルマは夏、暑い。
当たり前だ。どのクルマも夏は概ね暑いものだ。そうじゃなくて、相対的な見地に立って他のクルマと比べた場合、より「暑い」と言わざるを得ないということを言いたいわけだ。
古びたエアコンの送風口からそよそよと流れ出てくる微風はいかなる冷温効果ももたらさない。ただ直射日光で熱された車内の空気をいたずらにかき回すのみだ。だからエアコンは点けない。代わりに窓を開ける。左右の窓を全開にする。するとどうだ、横方向に空気の流れが生まれ、結構涼しいではないか。少なくとも走っている限りにおいては快適である。走っている限りは、そう停まらない限りはその気持ち良さは保たれる。
ところが一旦停車した途端、その快適性は瞬時に霧消してしまう。暑い。汗が止めどなく流れる。室温は60度に達しているのではないか。これでは渋滞に巻き込まれようものならひとたまりもない。一刻も早く抜け出さなければならない。長時間の停滞のその先には死が待ち構えている。どんだけ間違えても、この時期、このクルマで箱崎JCTは通過できない。
付け加えるとおれのクルマは冬は寒い。

