MBTI研究の正しい距離感 研究法・態度・限界について
MBTIは便利なツールである。
だが、同時に扱いを誤ると、知性を劣化させる道具にもなる。
本稿では、MBTIを「信仰」でも「娯楽」でもなく、
研究対象として扱うための距離感と方法論について整理する。
これはMBTIの解説記事ではない。
MBTIをどう研究すべきか、という概論である。
1.MBTIは「心理学」ではなく「枠組み」である
まず大前提として確認しておく。
MBTIは、厳密な意味での科学的心理学ではない。
ユング心理学をベースにした性格類型モデルであり、
診断ツールとしても、研究モデルとしても限界を持つ。
だからこそ重要なのは、
MBTIを「真理」として扱わないこと
人間を固定化するラベルとして用いないこと
である。
MBTIは現実を写す鏡ではない。
せいぜい「歪んだレンズ」の一つに過ぎない。
この認識を欠いた瞬間、
MBTIは思考停止装置になる。
2.三段階で考える:Philosophy / Paradigm / Policy
MBTIを研究・運用する際には、
伊藤貫の言う「3つのP」で整理すると混乱が起きにくい。
Philosophy(目的)
なぜMBTIを使うのか。
自己分析と個性化
他者理解と対人認知
自己と他者の差異を理解するため
ここで重要なのは、
MBTIを“当てに行く”ことではなく、“考える材料にする”こと。
分析は目的ではない。
目的はあくまで「理解」である。
Paradigm(方法論)
どの偏見(フレーム)で見るのか。
MBTIはあくまで一つの方法論であり、
それ単体で完結させる必要はない。
MBTI(機能論・タイプ論)
行動観察
社会心理学
家族論・文化論
哲学的視座
使えるなら、使えばいい。
「MBTIなんだからMBTIだけで分析すべき」という態度は、
方法論に対する理解が欠けている。
方法論とは、
使い捨て可能な偏見である。
Policy(現場での扱い)
どう運用するのか。
ここで初めて「研究法」の話になる。
3.MBTI研究の基本姿勢は「サンプル至上主義」
MBTIを語る際に、最も重要なのはこれである。
現実のサンプルを見ろ。
一人の自己診断で語らない
解説書の文言を丸写ししない
ステレオタイプを当てはめない
心理学的な態度を取るなら、
最低限やるべきことは二つしかない。
① 現実から帰納して傾向を取り出す
人の言動、選択、反応、思考パターンを観察し、
そこから共通項を抽出する。
サンプルが増えれば、仮説は変わる。
変わることを前提にする。
② 心理機能から演繹して仮説を立て、検証する
Niならどう考えそうか。
Seが弱い場合、どういうズレが出やすいか。
だがそれは仮説に過ぎない。
現実が違えば、仮説を捨てる。
この往復運動がないMBTI解説は、
すべて「あなたの感想」である。
4.MBTIと「距離感」――信じすぎないために
MBTIを扱う上で、もう一つ重要なのが距離感だ。
分析とは、
分析した時点までの情報を整理したに過ぎない。
人は変わる。
状況で振る舞いは変わる。
常にズレ(差延)が発生する。
だから、
MBTIで自分を決めない
MBTIで他人を断罪しない
MBTIで未来を断言しない
MBTIは地図であって、現地ではない。
地図を眺め続けて、
現実を見失うようなら、
その研究は失敗している。
5.最後に:MBTIは知性を測る道具ではない
MBTIをどれだけ語れても、
それ自体は知性の証明にはならない。
サンプルを見ているか
仮説を更新できるか
現実を優先できるか
問われるのはそこだ。
MBTIを使っているつもりで、
実はMBTIに使われている人間は多い。
そうならないために必要なのは、
高度な理論ではなく、
正しい距離感と愚直な観察だけである。
以上をもって、
MBTI研究における概論とする。
