映画館という場所の話①|昔と今を比べてみた
映画館という時間の層
最近の映画館は、とても快適で。
アプリで座席を選び、電子決済でスムーズに入場して。
ポップコーンもオンラインで事前注文できて。
並ぶ必要がなくて。
満席かどうかも一目で分かって。
よく映画館に行く身としては、この効率化は本当にありがたい。
でも、ふと昔を思い出して。
昔は、行ってみないと分からない。
満席かどうかも、とりあえず映画館へ向かってみるしかなくて。
満席なら次の回を待っ。
三時間待ちも珍しくなくて。
スマホもない。
時間をつぶす手段も限られていて。
それでも、なんとかして観たくて。
チケットは窓口で現金払い。
スクリーンの大きさや見やすい位置を聞きながら選ぶ人もいて。
私も「絶対ここじゃないと嫌」という席があって、窓口でこだわって。
場内では、懐中電灯を持ったスタッフが席まで案内してくれていた。
上映中も今ほど厳格ではなくて。
座席移動もある。
立ち見もあって。
通路に座り込む人もいた。
連続で、そのまま次の回を観続けることもできて。
同時上映というものもあった。
紙のチケットを半券でもぎる音があって。
あの「ビリッ」という音は、映画が始まる前の小さな儀式のようで。
急いでいる時は「早く〜」って思ったこともあったけれど。
映写機はフィルム。
私はなんとなく後ろを向いて、映写室に人がいるかを確認するのが癖だった。
今はどうなっているんだろう、とふと思い返して。
最近、後ろを振り返っていないことに気づいて。
機械の音がしていて。
整ってはいなかったけれど、どこか活気があって。
今は違う。
完全指定席で、入替制で。
空席は可視化され、体験は最適化されていて。
音響は立体的になって、IMAXの大画面は圧倒的で。
スクリーンも明るい。
体験の質は、確実に上がっている。
昔は「映画館という空間」に入っていく感覚が強くて。
独特の匂いがあった。
あの匂いは、きっと昔を知っている人にしか分からない感覚だと思う。
共感する人居るかな。
今は「その上映回の体験」に参加する感覚が強い気がして。
どちらが良いとは言えなくて。
ただ、懐中電灯の光ともぎりの音、
満席かどうか分からず向かったあの高揚感が、
それらは、もう戻らない風景なのだと思って。
それでも私は、今の映画館も好きで。
並ばなくていいことも。
確実に観られることも。
快適に没入できることも。
映画館には、時間の層があって。
あの頃の空気も、今の静けさも、
どちらもちゃんと、映画館だったのだと思っている。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければコーヒー一杯応援お願いいたします。活力になります^^