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映画館という場所の話④|映画のチラシを持ち帰らなくなった理由

映画館へ行くと、今でもチラシスタンドをのぞきます。

でも、昔みたいに何枚も持ち帰ることはなくなりました。

気になる作品があれば一枚手に取る。

そんな程度です。

昔は違いました。

映画館へ行けば、チラシを何枚も持ち帰っていました。

家でも眺めて。

公開日を確認して。

「早く観たいな」と思いながら、その日を待っていました。


実は映画のチラシやポスターには、公開までに何種類かあります。

最初に置かれるのは、情報をあえて少なくしたティーザー。

公開が近づくと、場面写真やキャストが載った本チラシ、本ポスターへと変わっていきます。

同じ映画なのに、少しずつ表情が変わっていく。

その変化を見るのも好きでした。

パンフレットを買うのも楽しみのひとつ。

コレクターというほどではありません。

でも、「映画を観た記憶」を持ち帰るような感覚がありました。

今思えば、映画だけではなく、映画を取り巻く紙の文化も楽しんでいたんだと思います。


でも、いつからでしょう。

手に取らなくなっていました。

理由は簡単です。

気になる作品があれば、スマホを開けばいいからです。

予告編も。

公開日も。

上映館も。

全部、すぐに分かる。

本が電子書籍へ移っていったように、映画の情報も紙から画面へ移っていました。

でも、それだけではなかったんです。

気づけば私は、映画館で何時間も「待たなく」なっていました。

昔は上映まで時間がありました。

満席で次の回を待つこともあれば、少し早く着いてしまうこともある。

その時間にロビーを歩いて、ポスターを眺めたり、チラシを読んだり。

上映スケジュールが印刷された細長い紙を手に取って、「次はこれを観ようかな」と予定を立てたり。

今では上映スケジュール表見なくなった気がします。絶滅危惧種?滅んだ?


映画を観る前にも、映画館で過ごす時間がありました。

今は違います。

スマホで座席を予約して。

上映時間に合わせて向かう。

ポップコーンやドリンクもネットオーダー。

映画館によってはドリンクバーもあります。

並ぶ時間も短くなって、必要なものを受け取ったら、そのままスクリーンへ。

とても便利になりました。

だからこそ、ロビーで立ち止まる時間も減りました。

ポスターも、ゆっくり眺めなくなりました。

昔は紙のポスターが貼り替えられていました。

友人から聞いた話では、役目を終えたポスターは処分され、「転売しない」という約束で譲ってもらうこともあったそうです。

今ではデジタルサイネージが増え、画面はいつの間にか次の作品へ切り替わっています。

紙から画面へ。

待ち時間から最短ルートへ。

映画館は、少しずつ変わりました。

もちろん、今の映画館は好きです。

指定席だから安心ですし、並ぶ時間も少ない。

快適さは、昔よりずっと上がっています。

でも、その快適さと引き換えに、映画館で過ごす「余白の時間」は少しずつ減っていったのかもしれません。

チラシを眺める時間。

ポスターを見比べる時間。

上映スケジュールを開いて、次は何を観ようか考える時間。

映画を待つ時間。

そう考えると、映画は上映が始まる前から、もう始まっていたんだと思います。


私は今でも少し早めに映画館へ着きます。

でも、その時間はスマホを見たり、ポップコーンを食べたり、トイレへ行ったり。

気づけば、上映を待つ時間も「次の行動」をこなす時間になっていました。

昔のようにチラシを眺めたり、ポスターを見比べたりすることは、ほとんどなくなりました。

便利になったからこそ、余白の使い方も変わっていたんですね。

映画館は変わったのかもしれない。

でも、それ以上に、映画館で過ごす私の時間の使い方が変わったのかもしれません。


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