『川端茅舎句集』
青空文庫の川端茅舎『川端茅舎句集』から五句鑑賞
夜店はや露の西国立志編
西国立志編とはサミュエル・スマイルズの自己啓発書『自助論』(1859)のこと。「天は自ら助くる者を助く」明治期に日本で百万部、かなり日本人に合ってたんだと思う。個人に責任があるみたいな感じ、継続して頑張れよと。夜店にもう露がついている、その近くには本が。秋の訪れと労働・商売の露のような日々の努力が輝く。
金剛の露ひとつぶや石の上
有名な句。ダイヤのように輝く露が一粒、石の上にある。雨垂れ石を穿つと言うが、そういうイメージもあるか。この金剛という言葉、仏教でもたびたびダイヤモンドのように固い智慧とか菩提心という文脈で眼にする。大きなものと対峙する金剛のように固い心。彼は露の茅舎とも呼ばれ、露の句と仏教や宗教関連の句が多い。彼のストイックな精神が表れている一句。
露の玉蟻たぢ/\となりにけり
石に立ち向かう露もあれば、露に立ち向かう蟻もいる。大きな露の玉に巻き込まれ蟻はたじたじになってしまった。子供の頃によくみた光景。金剛の露も蟻を苦しめるようではまだまだ悟りの道は遠そう。
鼠らもわが家の子よ小夜時雨
小夜のさは接頭語、意味はあんまりない。夜を強調している、小夜時雨は冬の夜にぱらぱらと降るにわか雨、通り雨のこと。ネズミたちも我が家の子と言い切る器に憧れる。まるで童話の世界みたいな精神の美しさがある。
寒月や穴の如くに黒き犬
寒い冬の空に浮かぶ月。その月光に照らされ、穴のように見える雪の中に丸まっている黒い犬。激しいコントラスト。その穴はどこに通じているのだろう。犬の精神、過去、黄泉、いろんな穴の底を想像させる。
大どぶにうつる閻魔の夜店の灯
大きなドブ川に閻魔祭りの夜店の明かりが映ってゆれている。おそらく閻魔賽日(1月16日と7月16日)のうち夜店は夏の季語なので七月の方。地獄の釜の蓋が開き鬼も亡者も休む日。閻魔という言葉が大ドブに映ると何故かゾクゾクする。それは裁きのときを待つ束の間の休息、猶予。
最初は画家を目指し岸田劉生に師事も病?と劉生死去で断念
その後、高浜虚子に師事「ホトトギス」に拠る
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