【病院を辞めようと思った日】 第二投稿
仕事を終え
車に乗り込む。
ドアを閉める。
ハンドルに手を置く。
急いでエンジンをかける気になれなかった。車内は、
しんと静かだった。
エンジンをかける。
いつもなら、音楽を流す。
患者さんのこと。
明日の予定。
やり残した仕事。
私は、
いつも少し先のことを考えていた。
気づけば、
頭の中は大渋滞。
だから帰り道は、音楽を聴きながら、
少しずつ交通整理をしていた。
でも、この日は違った。
音楽をつけようとは思わなかった。
次のことも、
考えていなかった。
頭の中に、
余白がある。
そんな感覚だった。
静かだった。
とても、
とても静かだった。
こんな感覚、
いつぶりだろう。
あぁ。
山に登っている時の、
頭のなかと同じだ。
あの頃の私は、
本気で、組織を変えようとしていた。
患者さんが、
安心して家に帰れるように。
スタッフが、
迷わず動けるように。
もっと良い仕組みを作りたい。
その思いだけを胸に、
振り返る暇もなく、
前ばかりを見ていた。
でも、
今なら分かる。
組織を変えることは、
一人の力ではできない。
一人でできることには、
限りがある。
その現実を受け入れたとき、
私は初めて、
自分自身にも目を向けられるようになった。
気づけば、
私が残したかったものは、
私自身ではなくなっていた。
私がいなくても、
その人らしい暮らしを、
支え続けられる土台。
それを残すこと。
それもまた、
私の役割だった。
他の人に託すことを、
自分に許した。
託せばいい。
そう思えたとき、
心の奥に、
少しだけ余白が生まれた。
これからは、
その余白に、自分の人生を描いていこうと思う。
【この日の私が、自分に許したこと】
・一人で抱え込まなくても、思いは残せる。
・役割は、やり遂げることだけではなく、託すことでもある。
・人生には、自分で選び直していいタイミングがある。
最後までお付き合いしていただき、ありがとうございました。
私のここから始まる新しい景色も、一緒に見てもらえたらうれしいです。🍔
