【国会質疑】環境と安全を守れ!データセンターと大深度(2026.6.15)

本報告書は、2024年6月15日の国会審議において、日本共産党の山添拓議員が行った質問および関係閣僚の答弁を基に、データセンター建設と大深度地下トンネル工事に伴う諸問題を整理したものである。

主な論点は以下の通りである:

  1. データセンター建設の急増と地域摩擦: 全国約500箇所のデータセンターのうち8割が東京・大阪圏に集中し、巨大な建物による景観への影響、膨大な電力消費、CO2排出、および配熱による周辺環境への悪影響が懸念されている。

  2. 規制の空白と情報開示の不足: 建築基準法上の明確な定義がなく「倉庫」や「事務所」として扱われている現状や、環境アセスメントの対象外であること、さらに事業者による情報開示が不十分であることが指摘されている。

  3. 火災安全性の懸念: リチウムイオン電池の設置に伴う消防法の規制緩和議論に対し、日本の都市構造に即した慎重な検討が求められている。

  4. 大深度地下工事の安全性神話の崩壊: 外環道やリニア中央新幹線の工事において、シールドマシンの故障や地表面の陥没・隆起が相次いでおり、地上に影響を与えないとする「大深度地下法」の前提そのものが問われている。

1. データセンター建設に伴う諸課題と現状

AI利用の拡大に伴い、国内各地でデータセンター(以下、DC)の建設が加速している。しかし、その規模の巨大さと運用に伴う環境負荷が、地域住民との深刻な摩擦を生んでいる。

地域における具体的事例と懸念事項

自治体名

プロジェクト概要・主な懸念点

東京都日野市

日野自動車工場跡地に三井不動産が計画。高さ最高72m。電力消費量、CO2排出量、配熱量に関する情報が着工前まで公表されないとして住民が反発。

千葉県白井市

閑静な住宅街に隣接して2箇所で計画。都市計画法違反などを理由に住民が提訴。巨大なDCが住宅地の真ん中に乱立する異常事態となっている。

東京都秋島市

GLPによる日本最大級の計画。年間電力使用量は市内全体の約6倍(高知県の年間消費量を上回る)。CO2排出量は市内全体の約4倍に達する試算。

環境負荷と規制の不備

  • 環境アセスメントの対象外: DCは現状、環境影響評価法(環境アセス)の対象となっていない。環境大臣は「著しい環境影響に関する知見が不十分」「許認可を行う法体系がない」として、現時点での対象追加を否定している。

  • 「新しい公害」の指摘: サーバー冷却のための大量の水使用、冷却ファンによる騒音、および周辺気温を上昇させる「配熱」問題が、新たな公害として浮上している。

  • 排出削減目標との矛盾: 秋島市の事例では、市が掲げるCO2削減目標に対し、DC一箇所でその数倍の排出が想定されており、気候変動対策と逆行する事態となっている。

安全性と規制緩和の議論

  • リチウムイオン電池の火災リスク: 停電対策として大量に設置されるリチウムイオン電池について、業界から消防法の規制緩和を求める要望が出ている。

  • 専門家の慎重論: 国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、日本の人口密度や消防体制を踏まえ、国際基準(UL規格)のみを理由にした安易な緩和に警鐘を鳴らしている。韓国でのDC火災事例(2023年9月)では、電池交換時の発火により膨大なデータが消失した。

2. 大深度地下トンネル工事における事故と法的課題

「地上に影響を与えない」という前提で進められてきた大深度地下工事において、その前提を揺るがす重大な事故が継続的に発生している。

東京外環道工事におけるトラブル

  • シールドマシンの破損: 2024年1月、大泉ジャンクション付近で掘削中のシールドマシンの動力伝達歯車(奥義歯車)に亀裂・破断が発生し、工事が停止。5ヶ月経過後も原因特定や対策の検討が終わっていない。

  • 調布市の陥没事故の余波: 2020年の陥没事故に伴う地盤補修のため、約30軒の買い取り・立ち退きが発生。補修完了は2026年12月頃を見込むが、多額の補修費用については「精査中」として公表を拒んでいる。

  • 事業評価の不透明さ: 事故対応費用が盛り込まれないまま、費用便益比(B/C)が事故前より改善(1.01→1.2)して継続が承認されており、評価の妥当性が疑問視されている。

リニア中央新幹線におけるトラブル

  • 地表面の隆起: 2023年10月、北品川工区のシールドマシン直上において、道路が最大13cm隆起する事故が発生。

  • 原因: 掘削土砂と共にチェンバー内に溜まった空気が、地表へ通じる経路から一気に漏出したことによるものと推定されている。

大深度地下利用法の再考

  • 法の前提に対する疑義: 山添議員は、相次ぐ事故を受け「地上に影響しないという前提は神話に過ぎない」と指摘し、大深度地下利用法の廃止を含む抜本的な見直しを求めた。

  • 政府の立場: 国土交通大臣は、これらの事故は「事業者の施工管理に起因するもの」であり、法制度自体の見直しを行う必要はないとの認識を示している。

3. 政府の対応方針と今後の展望

データセンターに関する政府見解

  • 経済産業省: 2024年5月に日本データセンター協会が策定したガイドラインに基づき、地域とのコミュニケーションを促すとしているが、新たな法的規制(DC業としての位置づけ)については「現時点では必要ない」との立場を崩していない。

  • 環境省: 冷却技術の開発支援や脱炭素電源の確保を優先し、環境アセスへの追加には消極的である。

結論と提言

審議を通じて、データセンター建設および大深度地下工事の両分野において、「推進ありき」の姿勢と地域住民の安全・環境保護との間に大きな乖離があることが浮き彫りとなった。

  • 情報開示の徹底: 特定目的会社(SPC)が建設主体となるケースが多く、対話体制さえ整っていない現状を改善するため、国としての情報開示ルールの確立が急務である。

  • 実態に即した規制: 建築基準法や環境影響評価法、消防法において、データセンターの実態(巨大な電力消費、火災リスク等)を反映した適切な位置づけが求められる。

  • インフラ工事の透明性: 事故による多額の公金支出や、地上の権利を制限する大深度地下工事のあり方について、改めて国民的な議論と法的な見直しが必要とされている。

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