【国会質疑】対話こそ抑止力!日比軍事協力への鋭い追及(2026.6.18)
本報告書は、2026年6月18日の国会における日本共産党・山添拓議員、茂木外務大臣、小泉防衛大臣、および政府当局者間の質疑に基づき、現在進行中の中東情勢および日本とフィリピンを中心とした軍事協力の現状を詳述するものである。
中東においては、米国・イラン間の停戦合意が進む一方で、イスラエルとレバノン間の緊張が継続しており、日本の外交的関与が問われている。一方、東南アジアでは、フィリピンとの「部隊間協力円滑化協定(RAA)」の発効を受け、自衛隊による初の実弾射撃訓練や「秘密軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の交渉開始など、防衛協力が急速に深化している。
政府側はこれらを「地域の抑止力強化」と位置づけるが、山添議員は、これが中国に対する軍事的威嚇や武力行使の一体化、さらにはフィリピン軍による人権侵害への懸念を無視した「軍事一遍」の政策であると批判している。本資料は、これらの議論を構造化し、安全保障上の主要な争点を明確にする。
1. 中東情勢:停戦への動きとイスラエルの動向
中東情勢に関して、米国とイランの間で画期的な合意が報じられる一方、局地的な戦闘が継続している。
主要な事実関係
米・イラン間の合意: 即時・恒久的停戦、ホルムズ海峡の解放、今後の交渉枠組みについて電子署名による覚書が発行された。
イスラエル・レバノン情勢: 覚書合意の裏で、イスラエルによるレバノン南部攻撃により4人が死亡。イラン側は2日間で84回の停戦違反があったと発表している。
日本政府の対応(茂木外務大臣の答弁)
日本政府は現在の状況を「重大な局面(クリティカル・フェイズ)」と認識し、以下の立場を表明している。
懸念の表明: 民間人の犠牲やインフラ破壊に対し、強い懸念を抱いている。
外交努力: イスラエル当局者との電話会談等を通じ、最大限の自制(アトモスフェリック・リストレイント)を強く要求。
原則の堅持: イスラエルおよびレバノン両国の主権と領土の一体性を尊重すべきとの立場を明確にしている。
2. 日比防衛協力の深化と「バリ・カタン 2026」
2026年4月から5月にかけて実施された他国間統合演習「バリ・カタン 2026」において、自衛隊はこれまでにない規模での参加を行った。
演習の概要と特徴
項目
内容
参加規模
自衛隊員 約1,400人
主要装備
88式地対艦誘導弾(SSM)
特筆すべき行動
フィリピン・パラワン島の海岸からSSM 2発を実弾発射(フィリピン国内で初)
連携相手
米国の地上配備型トマホーク、フィリピンのブラモス・ミサイル
政府の主張(小泉防衛大臣)
意義: 同盟国・同志国の対処力の飛躍と連携の進化を象徴するもの。
戦略的位置付け: フィリピンはシーレーンの要衝に位置する不可欠なパートナーであり、抑止力強化は地域の平和と安定に資する。
透明性: 訓練は特定の国を念頭に置いたものではなく、透明性を持って実施されている。
批判的視点(山添議員)
軍事的威嚇: 国外での攻撃型ミサイル発射は自衛の範囲を超え、中国に対する軍事的威嚇にあたる。
対話の欠如: 2023年11月以降、中国との対話が停滞している中での軍事強化は、緊張を激化させる危険がある。
3. 情報共有と防衛装備移転の拡大
日比間の法的枠組みは、物品の提供から機密情報の共有、装備品の輸出へと急速に拡大している。
秘密軍事情報包括保護協定(GSOMIA)
現状: 2026年5月28日の首脳会談で正式交渉開始に合意。
目的: 迅速かつ適切な機密情報の交換。
争点: 山添議員は、これが高度な運用面での連携(共通作戦の確立)や、指揮統制に関わる情報共有を通じて「武力行使の一体化」をもたらすと指摘。政府側は「それぞれの指揮権のもとで部隊を動かすものであり、一体化ではない」と回答。
防衛装備品の輸出検討
対象装備: 88式地対艦誘導弾。フィリピン国防大臣が導入の有力候補として関心を示している。
政府の姿勢: 新たにワーキンググループを設置し、積極的な議論を行う意向。
批判: 紛争を助長する懸念に対し「無頓着である」との批判がなされている。
4. 人権問題と地域安全保障の哲学的相違
軍事協力の強化が、相手国の国内情勢や地域全体の外交方針と整合しているかが議論となった。
フィリピン国内の人権懸念
ネグロス島事件(2026年4月19日): フィリピン軍の作戦により、新人民軍(NPA)メンバーとされる19人が死亡。
疑惑: 死亡者の中に民間人、ジャーナリスト、学生、未成年者、米国籍保持者が含まれていたとの報道があり、フィリピン人権委員会が調査を開始している。
論点: 日本政府は基本的な価値を共有する「戦略的パートナー」としているが、協力相手の軍の行動に対する「敏感さ」が問われている。
地域が求める安全保障のあり方
質疑では、アジア各国の首脳等の発言を引用し、力による安定とは異なるアプローチが示された。
ベトナム(トー・ラム国家主席): 威圧や武力による威嚇ではなく、対話と自制、法の支配に基づく外交を強調。
ASEAN(カオ・キムホン事務総長): 軍事力増強に多くの資源を費やすことは「健全ではない」。
東ティモール(ラモス・ホルタ大統領): 持続的な安全保障は「銃口や強迫、恐怖からは生まれない」。
5. 物品役務相互提供協定(ACSA)に関する反対論点
山添議員は、フィリピン、オランダ、ニュージーランドとのACSA承認に反対の立場を表明した。その主な理由は以下の通りである。
日米ガイドラインへの従属: 他国の軍事協力強化を明記した日米ガイドラインに従い、軍事体制を強めるものである。
存立危機事態への対応: 安保法制のもと、集団的自衛権の行使が可能となる事態において、相手国軍への後方支援(給油、整備等)を担保する。
武力行使の一体化: 戦闘準備中の戦闘機への支援も対象となり得、憲法第9条に抵触する。
軍事協力の加速: 各国との共同訓練を一層加速させ、地域の緊張を高める要因となる。
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