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【中小企業の融資、資金調達】信用保証協会の実務ガイド ― 枠の使い方を知らないで借入していくと、後で詰みます

1. こんな場面に心当たりありませんか
中小企業にとって、信用保証協会は本来、かなり有利に使える制度です。無担保でまとまった金額を借りられ、100%保証に近い商品もあり、プロパー融資よりも通りやすい。私は銀行員として15年、法人融資を担当してきましたが、正直「もっと保証協会をうまく使えば、この会社は楽になるのに」と感じた場面が何度もありました。
ただ、その一方で見てきたのが、保証協会の枠を、よく考えずに使い切ってしまった会社です。
創業してから数年、順調に売上を伸ばしてきた会社が、必要になるたびに保証協会の枠を使い、気づけば無担保枠をほぼ使い切っていた。いざ次の資金が必要になったとき、担当者としてできる提案が、プロパー融資(銀行が自行のリスクだけで貸す融資)か、日本政策金融公庫(政府系の金融機関です)くらいしか残っていない、という場面に何度も立ち会いました。プロパーは格付けによってはハードルが上がりますし、政策公庫にも限度額があります。「もう少し早く、枠の使い方を相談してくれていれば」と、こちらが歯がゆく思うことも正直ありました。

保証協会には、無担保の枠がいくつかに分かれていて、それぞれ性質が違います。この構造と、枠を使い切った後にどうなるかを理解しないまま借り続けると、会社が成長しているにもかかわらず、資金調達の選択肢だけがどんどん狭くなっていく、という状況に陥ります。
このnoteは、大阪信用保証協会の実務を中心に、枠の構造、それぞれの商品の性質、そして枠を使い切りそうになったときの対処法まで、現場感覚でまとめたものです。

2. 先にお伝えしておきたいこと(向いていない人)
先に、このnoteが合わない人を書いておきます。

• 大阪府外の信用保証協会をメインで利用する予定の方(制度の枠組みは近いですが、都道府県ごとに運用の違いがあります)
• 上場企業やそれに準じる規模で、保証協会付き融資をそもそも利用しない会社の方
• すでに顧問税理士や金融機関担当者と、保証協会の枠の使い方を細かく相談できている方
こうした方には、このnoteの内容はあまり必要ないかもしれません。

逆に、「これから保証協会付き融資を検討している」「すでに何本か借りていて、枠がどれくらい残っているか把握したい」という中小企業の経営者・個人事業主の方には、実務的に使える内容になっていると思います。

3. 全体の流れを3ステップで見る
このnote全体の構成を、先に共有しておきます。

1. 基礎編:保証協会の枠がどう構成されているか、関連会社の扱い、借換のルールを知る
2. 一般枠・別枠編:実際によく使われる商品(CSファンド、ES保証、経営力強化保証など)の特徴と通りやすさを知る
3. 有担保枠・サポート枠編:枠を使い切りそうなときの選択肢(CSジョイント融資、経営サポート保証)を知る

ここまでは無料部分の1〜2で扱い、3の内容は有料部分でより踏み込んで書いていきます。


4. 基礎編:保証協会付き融資の全体構造
まず、保証協会付き融資が行内でどう扱われているかというところから説明します。

ステップ1:プロパー融資と保証協会付き融資の違いを理解する

1. プロパー融資は、銀行が自行の判断だけでリスクを取る融資であることを理解する
2. 保証協会付き融資は、信用保証協会が保証人的な役割を担い、返済不能時には協会が一部または全部を肩代わりする仕組みであることを理解する
3. 保証協会付き融資の場合、行内の稟議(りんぎ、社内決裁の書類です)は、実務上ほぼ通ることを前提として考える(ネックになるのは、この後説明する保証協会側の審査です)
行内稟議がほぼ通るというのは、銀行側のリスクが保証協会によって大きく軽減されているためです。だからこそ、審査の実質的な山場は「協会の審査を通せるかどうか」に移ります。

ステップ2:利用できる枠の構成を把握する
大阪信用保証協会には、無担保で使える複数の枠と、有担保の枠があります。
1. 一般枠(無担保):80百万円
2. 別枠(無担保):80百万円
3. 危機関連枠(無担保・コロナ時のみの特別枠):80百万円(現在はこの枠内での新規利用・借換ともに不可)
4. 有担保枠:200百万円

それぞれ独立した枠として扱われており、1つの企業がこの構成をフルに活用できる、というのが基本的な設計です。ただし、次の条件が絡んできます。

ステップ3:関連会社の扱いを確認する

1. 代表者や株主が同じ会社が複数ある場合、保証協会からは「関連会社」とみなされることを理解する
2. 関連会社とみなされると、それぞれの会社が個別に枠を持てるのではなく、グループ全体で同一の枠を共有する扱いになることを理解する
3. 複数の会社を経営している場合は、枠の残り具合をグループ単位で管理しておく

私が担当していた会社でも、代表者が別に経営していた会社の存在を後から知り、実は枠がグループで共有されていたと分かって、想定していた金額が調達できなかったケースがありました。関連会社の有無は、早い段階で伝えておいたほうが、後の資金計画のズレを防げます。

ステップ4:借換のルールを確認する

1. 借換(既存の借入を新しい借入でまとめ直すことです)は、同じ枠の似た商品同士でしか基本的にできないことを理解する
2. 一般枠の商品と別枠の商品を、1本にまとめるような借換はできないことを理解する
3. 資金計画を立てる際は、どの枠でどの借入をしているかを、あらかじめ整理しておく

「全部まとめて返済負担を軽くしたい」という相談を受けることがよくありましたが、枠をまたいだ一本化ができない以上、まとめられる範囲には制限があります。この制限を知らずに相談に来る経営者の方が多く、説明に時間がかかる場面でした。

5. 一般枠・別枠編:実際によく使われる商品の特徴
ここからは、実際によく使う商品ごとに、通りやすさや特徴を見ていきます。

CSファンド(提携保証・一般枠)
もっとも一般的に使われる商品です。
1. 保証協会側が決算書をスコアリング(機械的に格付けする審査手法です)し、融資可能額を機械的に算出する仕組みであることを理解する
2. 決算書が2期分必要なため、創業したての会社は利用できないことを理解する
3. 決算書の表面的な数字を中心に見る設計のため、比較的通りやすい商品であることを理解する
4. 借入可能額の目安として、月商のおおむね3倍程度までが利用できる水準になることを理解する

この商品のポイントは、80%保証である点です。保証協会がOKを出しても、代弁率(保証協会が保証を実行する割合の実績データのようなものです)などの商品設計上の理由で、銀行側がこの企業が倒産の懸念があり危ないと判断し、否決になることがあります。また、この商品はその決算期のスコアに依存しているため、期中にどれだけ業績が悪化していても、その決算期の間であれば利用できるという特徴もあります。逆に言えば、業績が悪化した直後の決算が出てしまうと、途端に使いにくくなる商品でもあります。


ES保証(創業融資・一般枠)
創業間もない会社向けの商品です。
1. 上限は20百万円であることを確認する
2. 審査の中心は事業計画の整合性(代表者の経歴、創業理由、必要金額に不自然さがないか)であることを理解する
3. 100%保証のため、銀行側の審査は実質的に形式的なものになりやすいことを理解する
4. 融資額に対して1割程度の自己資金が求められることを確認する
5. 自己資金は入金の経緯までトレース(出所を確認)されるため、直前に急に入金された資金は自己資金として認められないことがあると理解する
この商品で特に注意したいのが、建築業でよく見られる「人工出し」(にんくだし、実態としては労働者を派遣するような形態でありながら、請負契約の体裁を取っている商慣行です)です。保証協会側は、自社で仕事を請け負って完結させることを前提に審査しているため、人工出しの実態があると否決されやすくなる点には注意が必要です。


経営力強化保証・経営安定資金(別枠)
一般枠での評価が厳しい会社向けの商品です。
1. 市の認定(不況業種として認められることなど)や、事業計画の提出が必要であることを確認する
2. 決算書のスコアリングが悪く、CSファンドなど一般枠の商品で通らない場合でも、この商品は候補になりうることを理解する
3. 試算表や受注状況が分かる資料など、「目で見る」審査が行われるため、業況の改善が説明できれば通る可能性があることを理解する
4. 台風や地震などの災害時に使える専用の商品もあり、こちらは比較的通りやすい傾向があることを理解する
CSファンドが機械的なスコアリング中心なのに対して、こちらは人の目で状況を見て判断する要素が強い商品です。決算書の数字だけでは苦しい会社でも、直近の受注状況や改善の兆しをきちんと資料化できれば、可能性が残っています。

不動産業は資金使途を説明しにくい業種
業種によって、保証協会の審査での通りやすさに差があると感じています。
1. 不動産業は、運転資金の資金使途をうたいにくい業種であることを理解する
2. 保証協会側から見て、不動産業の運転資金は「何に使うお金か」の実態が見えにくいと判断されやすいことを理解する
3. 不動産業を営んでいる場合は、資金使途をできるだけ具体的に、物件や取引と紐づけて説明する準備をしておく
不動産業は、在庫としての物件購入資金なのか、仲介業としての運転資金なのか、その境目が外部から見えにくい業種です。この業種特性から、他業種と比べて保証協会の審査が厳しめになりやすいというのが、現場で感じていた実感です。

また保証協会融資の基本的な運転資金の借入期間の最長は7年という点についても頭に入れておく必要があります。


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