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自然食品が好きな人は、本当は自然が嫌い

私は自然が好きだと思っていた。
少なくとも、そういう顔でいた。

でも、カタクチイワシの内臓が
指にまとわりついた瞬間、
私はかなり早い段階で自然が嫌になった。

ゴールデンウイーク。
子供と釣りに行った。
海釣り施設に13時間。
カタクチイワシ、カサゴ、アジ、ウミタナゴ。
釣れた瞬間は大興奮。

問題は家に帰ってから。
子供はさっさと寝たが、私は釣果と格闘した。
カタクチイワシは100匹。
カサゴ、アジ、ウミタナゴは
それぞれ別の対応が必要になる。
さばいて、焼いて、煮て、揚げた。
深夜まで作業をしていると、
スーパーの刺身や総菜が恋しくなる。
自然は、思ったより面倒くさい。
臭いし、手間がかかる。


自然食品は人気がある。
オーガニック。
無添加。
天然素材。
からだにやさしい。

でも、本当の自然食品とは何だろう。

釣った魚。
ジビエ。
虫食いのある野菜。
泥のついた根菜。

そういうものは、
あまり自然食品コーナーには
並んでいないのではないか?
それらこそ自然食品なのに。

都会の自然食品コーナーに並んでいる
自然は、きれいだ。

包装されている。
いびつな形をしていない。
虫はいない。
臭みもない。

私たちは自然が好きなのではない。
自然っぽく整えられたものが好きなのだ。


養殖サーモンは、かなり自然から遠い。
管理された環境で育てられ、
餌を与えられ、
脂がのるように作られている。

でも、多くの人は「不自然だ」と、
とまでは言わないだろう。
むしろ、美味しいと言う。

一方で、食品添加物の名前には身構える。

結局、怖いのは「不自然なもの」
ではないのだろう。
どちらかというと、「見慣れないもの」
ではなかろうか?

サーモンは見慣れているから怖くない。
添加物名は見慣れないから怖い。

「自然食品」という言葉は、
見慣れているものです、
添加物はないですよ、
というシグナルで、
不安を払しょくするために
使われているに過ぎないのかもしれない。


釣り場では、青イソメを使った。
釣具屋で買う、ミミズみたいな餌だ。

でも、すれている魚たちには
あまり効果的ではなかった。

釣り場でふらふらしていた
フナムシみつけて、
とっさに捕まえた。

それを餌にした仕掛けをつかったら、
いとも簡単にカサゴが釣れた。

魚は正直だった。
「買ってきた餌」より、
その辺にいた虫を選んだ。

本物の自然を見分けたのは、
人間ではなく魚だった。


人間は、もうそれができなくなっている。

フナムシは嫌だ。
魚のぬめぬめも嫌だ。
ジビエの固い肉も嫌だ。
虫食いの野菜も、少し不安になる。

それでいて、
自然なものを食べたいと言う。
かなりわがままだ。

私たちは自然が好きなのではない。
自然から、臭さや汚さや面倒くささを取り除いた
きれいな自然が好きなのだ。

もはや自然とは言えない自然。


ちなみにこの日、子供がクロダイも釣った。
隣で、クロダイ釣りの名人が釣っていた。
帰り道、子供が言った。
「今日は、大物が釣れた!」

釣れた、ね。

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