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#03 瓶の中に残ったもの、どうするの?

営業前のLa Sala。

ゆりちゃんは、シャンパーニュの瓶をじーっと見つめています。

「なつみさん」

「ん?」

「この前、瓶の中に糖と酵母を入れましたよね?」

「うん」

「それで、瓶の中でもう一度発酵するんですよね?」

「そうそう」

ゆりちゃんは、少し考えました。

「じゃあ……入れた糖と酵母って、最後どうなるんですか?」

「糖はね、発酵するときに酵母が使うんだよ」

「使う?」

「酵母が糖を使って、アルコールと二酸化炭素をつくるの」

「あ!」

ゆりちゃんが、シャンパーニュのグラスを指さします。

「それが、この前の泡!」

「そうそう」

「じゃあ……」

ゆりちゃんは、今度は瓶を見ました。

「酵母は?」

「酵母はね——」

「瓶の中に残るんだよ」


瓶の中に残る「澱(おり)」

二次発酵を終えた酵母は、やがて死滅して、澱(おり)となって瓶の中に残ります。

「やっぱり残るんですね」

「残るよ」

「じゃあ、それを取るんですか?」

「うん。でもね——」

なつみさんは、瓶を指さしました。

「すぐには取らないんだよ」

「え?」


澱と一緒に、しばらく待つ

シャンパーニュは、二次発酵が終わったあと、すぐに澱を取り除くわけではありません。

澱と一緒に、瓶の中で熟成させます。

「わざと残しておくんですか?」

「そう」

「なんでですか?」

「この時間も、シャンパーニュを造る大切な時間だから」

澱とともに熟成することで、シャンパーニュには熟成による香りや味わいが育っていきます。

「泡ができたら完成!じゃないんですね」

「そういうこと」

「シャンパーニュ……思ったより時間かかるんですね」

「ふふ。まだ終わってないよ」


じゃあ、澱はどうやって取り除くの?

熟成を終えたら、今度は瓶の中にある澱を取り除きます。

でも、瓶の中にある澱を、そのまま取り出すのは大変。

そこで——

瓶を少しずつ動かしながら傾けて、澱を瓶口に集めていきます。

これを、

ルミュアージュ(動瓶)

といいます。

そして、瓶口に集まった澱を取り除く工程が、

デゴルジュマン(澱抜き)

「名前、難しい……」

「覚えなくて大丈夫」

「いいんですか?」

「まずは、何をしているのか分かれば十分」


今日ひとつだけ覚えるなら

二次発酵のあとに残った澱は、すぐには取り除かない。
澱とともに熟成したあと、瓶口に集めて取り除く。

まずは、これだけ。

二次発酵が終わる
→ 澱が残る
→ 澱と一緒に熟成する
→ 澱を瓶口に集める
→ 澱を取り除く

「ルミュアージュ」も「デゴルジュマン」も、今すぐ覚えなくて大丈夫です。

一度で全部覚えなくて大丈夫。


ゆりちゃんは、図をもう一度見ました。

「なるほど……」

「なんとなく分かった?」

「はい。澱を瓶口に集めて、最後に取るんですよね」

「そうそう」

「…………あれ?」

「どうしたの?」

ゆりちゃんは、瓶を指さしました。

「澱を取り除いたら……」

「その分、中身が減りません?」

なつみさんは、少し笑いました。

「減るね」

「じゃあ、減った分はどうするんですか?」

「そこ、気になる?」

「気になります!」

「じゃあ——それは次のお話」


次回

#04 Brutって、どういう意味?

シャンパーニュ造りは、もう少し続きます。🍾

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