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知られざる戦後日本の前衛美術①~ 展覧会「九州派イン東京地方」≫「齊藤秀三郎の軌跡」@Mikke Gallery

突然ですが、「九州派」をご存知でしょうか?
 
『現代美術史』(中公新書、2019年)の著者である文化研究者・山本浩貴によると……

九州派とは、1957年に福岡市で結成され、約10年間活動した前衛美術集団です。

戦後の復興が第一だった時代にあって、東京から遠く離れた九州・福岡市で美術家を生業にすることは現実的でなかった、と容易に想像されます。当時は美術館はおろか、画廊すらなかったからです。

ちなみに、日本で美術館が誕生したのは1950年代初頭。1951年に神奈川県立美術館、1952年に東京国立近代美術館、ブリヂストン美術館(現アーティゾン美術館)が開設しました。そう、いずれも首都圏。もっと言えば、ほぼほぼ東京です。

現に、九州派のメンバーで美術教育を受けた人はほとんどおらず、生業を別に持ち、労働のかたわら作品を作っていたといいます。趣味活動と呼べるかもしれません。

しかし、逆にこうした厳しい状況だったからこそ、生活者、労働者として培った社会的意識を自由な発想で表現できた側面があるようです。
読売アンデパンダン展(公募展)への出品など、東京を意識しつつも、あくまで福岡を拠点に続いた彼ら彼女らの実践は、「芸術の変革と社会の変革」に結びついていた、と山本は述べています。
 
この九州派に参加したメンバーのうち、現在一人だけ存命者がいるといいます。齊藤秀三郎です。グループの最年長で、なんと御年103歳!しかも今なお現役の画家なんです!
 
その齊藤の個展「齊藤秀三郎の軌跡」@Mikke Gallery(東京・四ツ谷)に行ってきました。

本展は「九州派イン東京地方」展の第1期(前半)に当たり、後半は「九州派にまつわる資料と九州派作家の作品」と題する展示が予定されています。
美術史からこぼれ落ち、忘れられた作家・作品に光を当てる取り組み
で、とても意義ある企画だと思います。
キュレーションは山口洋三(キュレーター、元福岡市美術館学芸員)と山本浩貴(本展ではアシスタントとして参画したとか)。
私は、山本氏から情報をいただき、足を運びました。

Mikke Galleryは、昨年2024年8月にオープンした新しいギャラリーです。
白い壁に囲まれた、窓のある明るいスペースと、やや奥まった黒壁の部屋とからなる、メリハリの効いた展示空間を有しています。
私は、今回初めて訪れました。

入口方向へ向けて撮影
奥の部屋が少し見えています。左手には窓が。
黒壁の部屋に入ると雰囲気が一変!



こちらの2点は齊藤の最新作 です↓ 。
最近作られ、今回の展示が初公開とのこと。
 


ギャラリーの方にうかがうと、九州派を離れて何を描こうか模索していた時、当時彼の周囲で流行っていた抽象画ではなく、具象でいこうと齊藤は考えたそうです。

折しも、1950年代の日本では、欧米の動向を紹介する美術展が開催されるようになっていました。なかでも56年の「世界・今日の美術展」(@日本橋高島屋)は強い影響を及ぼしたといいます。「アンフォルメル旋風」がおこり、抽象絵画がこぞって描かれるようになったとされます。

そうしたなか、齋藤がモチーフに選んだのが「キャベツ」
その丸みのある形状や大きさが彼にとってちょうど良く、葉脈が血管のように見える点も魅力だったようです。確かに彼のキャベツは臓器を連想させ、なんというか……生々しい。

そして、キャベツと共に画面に描かれるのが、電子部品とか機械・機器のパーツ類。ワイヤーが目立ちますかね。これらは現代社会に不可欠な、いわばインフラをなすモノたちです。齊藤は、かつて中学校の理科の先生だったことがあり、もともとこうした機械的なモノへの関心は高かったそう。描写も精緻です。

彼はこれら部品類を現代文明の象徴とし、作品を通して文明批評を行っています。キャベツの奥深くへ巣くうように入り込んだり、締め付けるかのごとくキャベツに絡み付き、さらには破壊してしまったかに見える作品もありました。
 

作家本人が気に入っているという作品
映り込みがあるのはご容赦ください m(__)m
右の作品のアップが上の写真です。
キャベツの葉が箱を包んでいる?
痛々しさを覚えました。
機械に捕われてしまったかに見えます。
空にはキャベツの月?が浮かび……
バラバラになりながら機械と格闘しているみたい。


キャベツは最も身近な野菜・食材です。
作品を観ていて、個人的には、食に代表される日常性の象徴のように感じられました。加えて、キャベツは体内に取り込まれ、滋養となり、生につながっています。なので、自然ないし自然の一部としての人間をも表しているかに受け取れました

そうしたことから、日常生活、あるいは人間そのものをキャベツに見立て、現代文明に依存し、半ばがんじがらめになっているありようを描き出している。もしくは、人間の作り出した高次の資本主義が、自然、そして人間を圧迫している様を表現しているように私には思われました
 

メディウムは、最初はメゾチント(銅版画)だったけれど、腱鞘炎になったため、(腕への負担が減らせる)木版に変えたとか。後に彫刻刀を筆に代え、アクリル絵の具によるペインティングへ……それが最初に紹介した新作2点に結実したということです。
 

木版の作品は、メゾチント作品に比べ、白い地の部分が多く軽やかな印象。
胎児のようなものが……
ヘルメットを被った人間の顔に見えてきました。



その他の展示作品はこちら ↓ 。
画面を覆う空気にどこか明るさが感じられます。
 

作品名はチェックし損ねました(涙)
抽象表現主義の影響がうかがわれます。
左:《輝くハート【分析的)》1968年
右:《無題》1967〜70年
《百合》2011年
作家の旺盛なエネルギーや生命力を感じました。



最後に、私が気に入った作品を ↓ 。
ジャスパー・ジョーンズの作品の、少し透明感のある画風と似通っているところがあるかな、と思いました。ユーモラスな感じがして、そこも好きです。

《実験》1970年頃


レポートは以上です。

第2期の「九州派にまつわる資料と九州派作家の作品」も楽しみです。
そちらは、5人の作家の作品が観られそうです。ご興味があればぜひ!

私もまたレポートしたいと思っていますので、アップした際には、ご笑覧いただけましたら嬉しいです。

*「九州派イン東京地方」展*
第1期:「齊藤秀三郎の軌跡」 ~5月4日(日)
第2期:「九州派にまつわる資料と九州派作家の作品」5月5日(月祝)~15日(水)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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