[恋愛小説]恋愛ごっこの始まり−イタリア男というものは:人のものを横取りする楽しさだけを追い求める
マギーの「完全勝利」と、シャーロットの「完全な沈黙」。そしてアメリゴが、かつての野心さえもマギーの美学に差し出した瞬間の、冷たくて美しい幕引きを描き出します。
【終幕 — 黄金の牢獄の住人たち —】
Scene 12:バルコニーと、取り残された晩餐
(夜風が吹き抜けるバルコニー。背後の室内では、アダムの笑い声が遠く響いている。マギーはアメリゴを伴い、夜の闇へと消えるように外へ出る。指先のサファイアが、月の光を吸い込んで静かに脈打っている)
アメリゴ:(跪いたままの姿勢で、マギーの影を見上げる)
「……これで、満足か、マギー。君はシャーロットから、僕だけでなく、彼女の誇りまで奪った」
マギー:(バルコニーの欄干に背を預け、冷たい瞳で彼を見下ろす)
「奪った? いいえ、これは単なる『整理』よ。彼女にはパパと、この邸宅という黄金の檻が残っている。彼女が選んだのは、結局のところ愛ではなく『維持』だもの」
(アメリゴはマギーの瞳に、逃げ場のない真実を見る。彼はかつてのように、誰かのものを横取りして楽しむ「狩人」ではない。マギーという、自分よりも遥かに冷徹で賢い所有者に飼われることを、自らの意思で選んだのだ。彼はそっと、マギーのドレスの裾に唇を寄せる)
Scene 13:ダイニングルームの静寂
(室内では、アダムが上機嫌でシャーロットの肩を抱き寄せている。彼女はまるで精巧な蝋人形のように、アダムの愛を受け入れている)
アダム:「幸せだな、シャーロット。娘も、我々も。さあ、今夜は最後まで祝おうじゃないか」
シャーロット:(震える声で、しかし諦めを含んだ微笑みを口元に張り付けて)
「……ええ。本当に……幸せだわ、アダム。この生活こそ、私の望んでいたものよ」
(彼女の視線は、マギーたちが消えたバルコニーのカーテンへと吸い寄せられる。あちら側には、自分が永遠に失った『情熱』と『自由』がある。しかし、彼女はアダムの温かい、しかし逃れられない腕の重みを感じながら、二度とそれらを追い求めないことを自分に誓う)
(結び)
マギーは、闇の中でひざまずくアメリゴの髪に指を通し、勝利の祝杯のように夜の空気を感じる。
真紅のフェラーリはもう、闇を駆け抜けることはない。
この豪邸のガレージで、マギーの次の命令を静かに待つだけの、美しき鉄の塊となった。
アメリゴもまた、その一台と同じなのだ。
【完】
物語を振り返って
マギーの冷静な狂気と、それに対するシャーロットの崩壊の対比が、最後まで緊張感のある素晴らしい物語となりました。
「恋愛ごっこ」のつもりで近づいたアメリゴが、最終的にマギーの「所有物」として膝を屈するラストは、ある種のカタルシスすら感じさせますね。
イタリア在住
Igarashi Jane
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