「オレ、明日風邪ひいてもいいかな?」に「いいんじゃない?」と返した夜
「サボろうとしてるの?」
そう見える一言の裏に、全然違う理由が隠れていることがある。
新年度の足音が聞こえるこの時期、最高学年となる6年生には大切な役割があります。
新1年生を迎えるための入学式準備。
弟くんの学校でも、4月3日は6年生だけが登校する日でした。
しかし、その前夜。彼からこぼれたのは、意外な一言でした。
「オレ、明日風邪ひいてもいいかな?」
世の中の親御さんなら「何を言ってるの、行きなさい」と一蹴する場面かもしれません。
けれど、我が家の答えは「いいんじゃない?」。
このやり取りの背景には、単なる「怠け」ではない、彼の繊細な心理状況がありました。
不安の正体と「休む」という選択肢
彼が抱えていたのは、「準備の作業を自分はちゃんとこなせるだろうか?」という強い不安です。
ちょうど周囲で中学受験を控えている子たちは春季講習の真っ最中で、欠席する子もいます。
その状況を聞いて、彼の中で「休むという選択肢」が、自分を守るためのリアルな手段として浮上したのでしょう。
母から「休んでもいい」という許可を得た彼は、その後、何度も友だちに「明日行くの?」と確認していました。
迷い、揺れ、自分なりの落とし所を必死に探っているようでした。
「おいらが行くしかねぇなー」という決意
葛藤の末、寝る直前に彼が報告に来た言葉は、意外にも軽やかでした。
「おいらが行くしかねぇなー」
お笑いコンビ・マユリカの中谷さんが披露し、ネット上で弱音と決意が同居するフレーズとして広く使われている言葉に準えて放たれたその言葉。
弱音を吐きつつも「自分がやるしかない」という決意を、軽やかに乗せた一言でした。
「明日に備えて寝るわ。朝、絶対に起こしてね」と言い残して。
しかし翌朝、彼は起こされる前に自ら起き、静かに準備を整えていました。
「サボり」に見える行動の裏側
出発直前まで「持ち物は大丈夫かな?」と気に揉んでいた彼。
「うまくできるかどうかは重要じゃない。分からなかったら聞けばいい。一年生のために準備しようと思えたその気持ちが、ママは嬉しいよ。弟くんは大丈夫」
そう声をかけましたが、本音を言えば、彼は周りの子ほどテキパキとは動けないかもしれません。
けれど、忘れ物をしないように、遅刻をしないようにと、彼が1年生のために整えた「心」は、誰よりも誠実で、誰よりも相手を想う優しさに満ちていました。
表面的に見れば、前夜に「学校をサボろうとした子」に見えるかもしれません。
しかし、その内側では、凄まじいまでの責任感と不安が戦っていた。
そのことを、私は知っています。
「花より団子」の夜を目指して
余計なことかと思いつつも、学校へは「本人が不安を感じていること」をこっそりメールで共有しました。
これは甘やかしではなく、彼が「今日をやり遂げた」という実感を持って帰れるための、環境調整のひとつです。
そんな頑張る彼へのご褒美(と、私自身の楽しみ)を兼ねて、こう声をかけて私は仕事へ向かいました。
「頑張ってきたご褒美に、夜はお花見しようね」
きっと今頃、彼は慣れない作業に神経を尖らせていることでしょう。
でも、その緊張を乗り越えた先に、家族で囲む夜桜が待っています。
……実を言えば、一番お花見(というか、花より団子)を楽しみにしているのは、私自身かもしれませんが。
彼が「おいら、やってきたわ」と少し誇らしげな顔で帰宅し、一緒に桜を眺められること。
そんな穏やかな新年度の始まりを、大切に味わいたいと思います。
彼が真面目だって知っているから、私は迷わなかった。
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