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「平均50点」のクラスに、50点の子はいないかもしれない。——ユニセフ報告書と統計の罠


いきなりですが、ちょっと想像してみてください。
お子さんが学校からテストを持ち帰ってきました。
点数は50点。
先生は言います。
「今回のクラスの平均点は50点でしたよ」と。

それを聞いて、親である私たちはどう思うでしょうか?
「ああ、うちの子はちょうど真ん中か」
「良くも悪くもない、ごく『普通』の位置にいるんだな」
そう思って、ちょっと安心するかもしれません。


でも、もしそのクラスの内訳が、実はこんな状態だとしたらどうでしょう?
• 100点の子:10人
• 0点の子:10人
• 50点の子:たった2人(うちの子含む)
平均点は、計算上たしかに「50点」です。

でも、上のような点数の教室を見渡してみると、そこに広がっている景色は「みんなが真ん中くらい」という穏やかなものではありません。

「すごくできる子」と「全くできない子」にパックリ分かれた、強烈な断絶のある教室なんです。
この状況で「平均50点だから、このクラスは『普通』です」と評価することに、何の意味があるでしょうか?
そして危うくはないでしょうか。


平均という数字のマジックで、0点を取って苦しんでいる子たちのSOSが、完全に見えなくなってしまうかもしれません。

今回、ユニセフが発表した最新のレポート(レポートカード19)を見て、私が真っ先に感じた恐怖が、まさにこの「平均値の罠」でした。

「満足度」は上がったけれど…

先日、ユニセフが先進国の子どもの幸福度に関するレポートを発表しました。
日本は総合14位。(36カ国中)
前回の20位からもランクアップしています。

中でも注目すべきは、「生活満足度」のデータです。
コロナ禍を経て、世界中の国々で子どもの生活満足度が下がっている中、日本は唯一、2018年以降に満足度が「向上した」国だったそうです。

これだけ聞くと、「すごい!日本の子どもたちは幸せになったんだ!」と思いますよね。
まさに「平均点が上がった」状態です。
しかし、ここにはもう一つ、見過ごせないデータがあります。
そんな幸せになったはずの状況なのに、15〜19歳の自殺率が急増しているという事実です。

2018年から2022年にかけて、日本の若者の自殺率は約1.4倍に増え、高所得国平均の2倍近くに達しています。
「生活満足度(幸福度)」は上がった。
でも、「自殺率」も上がった。

一見矛盾するこの現象。
両極端な二つ。
先ほどの「テストの点数」の話と同じように感じたのです。
コロナ禍で家族との時間が増えて「満足度」が上がった層(100点側)と、居場所を失い追い詰められた層(0点側)の二極化が進んでしまった結果ではないか。

※ここから先は、このレポートの数字を見て私がSSW(スクールソーシャルワーカー)として現場で感じた、あくまで私なりの「考察」のため、それが事実とは言い切れないです。
でも、お話しさせてください。

割合が増えている=「生きるハードル」が上がっている?

この「二極化」の視点に立って、もう一つ冷静に見なければならないデータがあります。
それが「少子化」と「割合」の関係です。
そもそも、子どもたちが生きる社会の難易度が昔と変わっていないのであれば、子どもがどれだけ減ろうと、不登校や自殺の「割合(%)」は変わらないはずです。
例えば、体育の授業で跳び箱を飛ぶとします。
跳び箱の高さがずっと同じなら、生徒が40人から20人に減ったとしても、「飛べない子」が出る確率は変わらないはずですよね。
しかし、現実は違います。
ユニセフのデータが示しているのは、この「割合」が明らかに増えているという事実です。

子どもは減っている、生活満足度も上がっているのに、つまずいてしまう子の「割合」は増え続けている。

これは何を意味するのでしょうか?
それは、子どもたちの能力が年々落ちているということなのか?
それとも、社会が求める「普通」という名のハードルが、昔よりも高くなっているのではないか。

「これくらいできて当たり前」
「コミュ力が高くて当たり前」
「空気が読めて当たり前」

そんな見えないハードルが、いつの間にか大人の背丈ほどまで上げられてしまっているとしたら。
だから、昔ならひょいとまたいで生きていけたような子が、今はその高すぎる壁の前で立ち尽くし、自分を責めてしまっているのではないか。

データ上の「割合の増加」は、子どもたちの変化だけではなく、この社会の「不寛容さの進行」を表しているような気がするのです。

平均値に「よし」としないまなざしを

教員として、子どもと接してきた身としては、子どもたちの状況は、まさに「平均」では語れないことばかりのように感じます。
統計データ上の「平均的な15歳」なんて、実はどこにもいないのかもしれません。

そこにいるのは、環境に恵まれて充実している子か、あるいは今日一日を生きるのがやっとの子か。

「日本は全体的に良くなっている」
「平均は上がっている」

そんな言葉で安心してしまうと、私たちは分布の「端っこ」に追いやられている子どもたちの姿を見落としてしまうかもしれません。

「平均50点」という数字の裏に、0点で泣いている子はいないか。
「満足度が上がった」というニュースの陰で、声を上げられなくなっている子はいないか。
私たち大人がすべきなのは、真ん中の数字を見て頷くことではなく、その数字からこぼれ落ちた場所に光を当てることなのかなと思います。

実はこのレポートで、日本の子どもたちは「ある分野」で世界1位を獲得しています。
それは「身体的な健康」です。
世界で一番「死なない国」なのに、なぜ子どもたちは「死にたい」と思ってしまうのか。
次回は、この国が抱える「健康なのに苦しい」という巨大な矛盾について考えてみたいと思います。

【引用・参考資料】
公益財団法人 日本ユニセフ協会
ユニセフ・イノチェンティ研究所 レポートカード19
『予測できない世界における子どもたちのウェルビーイング』(2025年)
https://www.unicef.or.jp/report/rc19_jpnhighlights.html


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